姉、浮かれる
いつもの時間に目覚め、布団から出て
サイドテーブルにあるガラスのピッチャー
から果実水をコップに注ぎ、まずは1口。
口内と喉を潤した後に勢い良く飲み、
体の中を潤しゆく。
酸味とハーブの爽やかさが全身に
行き渡るのを感じた後、ベットから出て
窓まで行き、厚でのカーテンを開け、
少し窓を開け部屋の空気を入れ変え、
今日は窓を開けたまま、机に向かい
椅子に座り、自分宛に届けられた
2つの工房の報告書を読む。
大きな変化が無い事は良い事。
ただ、横這いだと言われればそれまで。
昨日発案したブローチは、
紙刺繍工房で習得した技術と生活魔法道具を
作る工房で習得術を掛け合わせて
初めて商品になる。
「大丈夫。上手くいくわ」
久しぶりの発案にディランもフレディも
嬉しそうに取り組んでくれ、お母様も
満足そうにやって良いと頷いてくれた。
後は自分がミランダと親方さんに説明し
納得と理解をして貰う必要がある。
緊張もあるけれど、自分はディランや
フレディに話したように軽く話をし、
本契約や詳しい話は、ディランがまとめ
後日、お祖母様かお祖父様を通して
本契約までする。
緊張もあるけれど、
「楽しみだなぁ」
ミランダに会えるのは勿論、領へ帰る
のが楽しみで、
そんな気持ちで今日会えるミランダと
お祖母様とミラに宛てて手紙を書き上げ
乾かしていると、ノック音が聞こえ
「はーい」
入室の許可を込めた返事で返すと、
扉が開き、
「エスメ様、おはようございます」
お手本の様な礼と共に朝の挨拶を
貰い、
「おはよう、マルチダ」
同じ様に朝の挨拶を返し、
マルチダの選んだ生成色のワンピース
に着替え、ドレッサーに移動をし
髪を結って貰う。
サイドを編み込み混んでいるのは
頭皮から伝わる動きでわかるが
なんだかいつもより複雑に
編み込まれてる?
鏡を見ても後ろなので写らず、
後で見せてくれるからいっか。
真剣な表情のマルチダを鏡越し
に見つつ、終わるまで待つていると、
手鏡で見せてくれた後頭部は、
複雑に編み込まれており、驚きと
マルチダの器用さに感想が伝えられない
程に驚いていると、
耳に届いたノック音に慌て返事を返し
扉を見れば
「おはようございます、エスメ様」
フレディが姿を見せ挨拶と共に
一礼をくれたが、
「フレディ! 見てこの髪型。
すごいでしょ、可愛いでしょう」
驚きで止まっていた思考が動き出した
ので、感情のままに伝えると
「ええ。さすがマルチダさんですね」
頷きと共に返ってきた返事に、
「そうでしょ。マルチダは凄いのよ」
自分の事の様に嬉しくなりフレディの
言葉に深々と頷いた。
そう。マルチダは凄い。
手先の器用さに知識の豊富さ、
自分は見た事は無いが、いかなる
時にも冷静に判断し指示を出す。
らしく
屋敷に働く皆はマルチダを慕い、尊敬し
敬愛をしているのがよく分かる。
マルチダは私が学園を卒業をしたら
どうするのかしら?
自分の専属を解除され、お母様専属の
メイドにはなるかな?
ふっと思い浮かんだ事を尋ねようと
口を開きかけたが、
「エスメ様、ディラン様がお待ちですよ」
フレディの言葉に、尋ねている場合では
無いと気持ちを切り替え、
ディランと朝食を取る為に、足を動かした。




