姉、未来を考える
一人暮らしを部屋を探す事。
貴族籍の無い自分には当たり前で
領にいる時からその準備として、
早朝からキッチンやランドリーに
無理を言って手伝いをさせて貰った。
自分だけではなくディランもその
つもりでいてくれる。
そう思っていたけど、
そうよね。
学園の勉強に生徒会。
それに工房や領の運営などの勉強も
している。と、なると
覚えている。
そう思っていた私の怠慢だったわ。
改めて、一人暮らしの考えをディラン
に伝えつつ、自分の中でも考えを纏め
ていく。
住む場所は領。
1人で、マルチダも連れて行かない。
今後の事も考えて、アパートメントで
検討している。
「収入源を作らないと。とは
思っているのだけど」
朝食から始まった話題は、食後の
お茶の時間で終わらず、通学の馬車の
中でも続いており、
「今のままではいけませんか?」
ディランの言葉に、少し考えてみる。
自分の思い付きで告げた生活魔法道具に
紙刺繍の工房。
ありがたい事に起動にのり、働き手を
増やし生活標準や領の財政を増やして
いると聞いているが、
どうも、実感は無く
自分がやっているのは毎日届く
報告書に目を通し、
時に尋ねられたデザインを考えたり、
提案をしたり。
ただそれだけ。
と言うより、
「給金出てたんだ」
知らなかった事を知り驚きつつ
ディランの顔を見ると、しっかり頷かれ
「姉様の口座へ振り込まれお母様が管理
されております」
「そうなのね」
驚きで戸惑いまで感じていると、
ディランは不思議そうに
「工房を立ち上げる際にそのような
伝えたと思います。が」
ほんの少し首を傾げながらの言葉に
「そうだったけ?
すっかり忘れていたわ」
多分、聞き逃していたもしくは
読んでいなかった。
のだと思い誤魔化すように笑うと
「いえ、実際に金額を見ないと
実感も湧かないかと思います」
ディランの優しい心使いに、
嬉しく思い微笑みかえしつつ
「でも、お金があっても住むなら
アパートメントがいいわ」
変わらない考えを口に出すと、
「土地を買いアパートメントを立て
てしまうのも一つの手かと」
今まで黙って聞いていたフレディの
言葉に驚いていると
「そうだな。その考えも1つだな」
そうこぼし考え込んでしまった
ディランに
「待って、そこまでしなくても」
慌て引き止めるが
「エスメ様お1人で住むのは
分かりました、ですが、その後
ディラン様も私は勿論、アメリア嬢も
ルイもミラも遊びにくるでしょう」
フレディの言葉に、考えていなかった
事を告げられ返事を返せずにいると
「そうなるとアパートメントでは
不安があります」
「確かに、大人数集まるのは迷惑ね
ディランの言葉に頷き返すと、
ルイとの待ち合わせ場所に着いた様で
ゆっくりと停車した馬車に、
フレディか扉を開け、先に下り
次にディランが下りると、
「よう」
ルイの声が聞こえ、
「おはよう」
それに応えるようにディランが
挨拶をする。
同性同士の気心知れた挨拶に
微笑ましさを感じつつ、扉から出よう
とすると、フレディが手を差し伸べ
てくれ、
「ありがとう」
お礼を伝えると、微笑み返された。
何やら互いに身を近づけ、内緒話を
しているディランとルイをを眺めつつ
「週末に領に行くけれど、ミラに伝言は
あるかしら?」
未だミラからフレディの元へ手紙が
届いている事は、ミラ本人からの手紙で
知っているし、時にミランダからも
手紙で教えられっていたので、
尋ねると、
「特にありません」
従者の顔をして返事を返してきたので
「そう。手紙ありがとう。
嬉しい」
と、伝えておくわ。
自分の感情を隠したフレディに呆れつつ
無難な返事を作り伝えると
「ええ。その返事でお願いします」
それ以上余計な事は言うなよ。
そんな意味が込められた、妙に圧がある
微笑みと言葉に、
「はーい」
適当に返事を返すと、
「姉様」
ルイと話が終わったようで、ディランの
呼びかけに笑顔で、
「行ってくるわね」
ディランとフレディに伝えると
「行ってらっしゃいませ」
ディランの見送りの言葉に、無言で
従者として礼をし見送るフレディに
手を振り
「ルイ、おはよう」
「おはよう」
互いに朝の挨拶を交わし、
教室へ向かい歩き出した。




