姉、贈り物をする
昨夜ぶりのデイランの部屋に
入り、部屋の真ん中で出迎えて
くれたディランに、
「おはよう、ディラン」
昨夜の晩餐の前の様に抱き付いた
と一緒に朝の挨拶をすると、
「おはようございます。姉様」
昨夜同様にしっかりと抱き止めて
くれ、朝の挨拶も返してくれた
ディランと少し離れ、
つま先立ちをし、目一杯腕を上げ
遠くなった頭を撫ぜ
「今日もディランが可愛くて、
格好良くて幸せだわぁ」
じんわりと心に染み渡った感情を
言葉に出すと、
「姉様はお元気そうでなによりです」
少し困った様な、どこか恥ずかい
そうな声に
「ありがとう。元気よ」
おかしくなり笑いながらお礼を伝え
名残惜しくはあるがディランの頭から
手を離し下ろしている途中にディラン
に手を取られ、
数歩先のテーブルまでエスコートを
してくれた。
焼きたての白パン
川魚のムニエル
青豆のスープ
いつもの朝食に手を伸ばしつつ
「そうだわ、ディランがおすすめの
宝石屋さんを教えて欲しいの」
聞きたかった事を尋ねると、
ディランは少し首を傾げ
「宝石店ですか?」
質問で返ってきたので
「ええ。アメリアにお礼をしたくて」
自分で魔力を込めた魔法石を、
アクセサリーへ加工してくれる
店を教えて欲しいと言葉を続けると
「ありますが、姉様の魔法石を
よく知る親方に依頼するのが良いか
と思います」
さらりと返してくれた言葉に、
「やっぱり親方さん1番かぁ」
数度無理にお願いし、自分の好みの
デザインも理解してくれているが、
何より、あの大きくて太い指から
生まれる繊細でシンプルなデザインが
大好きで、
「近く領にいく事にするわ」
「かしこまりました」
自分の言葉に頷いてくれたディランは
フレディに視線を送ったのを見たので
お祖父様、お祖母様への連絡は大丈夫
だけど、私からも手紙で知らせておこう。
頭の片隅に忘れないように置き、
朝食を食べ終え、食後のお茶の時間に
入る為にソファへ移動を椅子から立った
瞬間
「あ! ディランに渡したい物があるの」
自分の机の上に置いた物を思い出し
エスコートをする為に伸ばしかけていた
ディランの手は取らず、自室へと駆け
すっかり忘れてたわ。
慌て机の上に置いていた長方形の箱を
手に取り、扉を開けたままにしてくれ
ていたディランの部屋に駆け込み、
「ディランにプレゼントよ」
勢い良く差し出すと、勢いに飲まれた
ディランは意味が分からないと表情に
出しつつも、そのまま受け取ってくれ
「開けてみて」
冷静になる前にと急かす様に声をかければ
言葉に従う様にディランは箱を開け
「アクセサリー」
無意識にこぼしたディランの言葉に頷き
「腕でも足首でもどこか好きな箇所に
つけて」
笑顔で頷き、戸惑うディランを視界に
入れつつ箱から取り出し、
「どこにつける?」
尋ねると、
「そうですね。右手首にお願いします」
差し出された右腕に付けると、
最初からつけていたかの様にディランの
腕に馴染み、
さすが、親方さん。
作った時は自分より小さかったが、
今は自分より大きく腕もそれなりに
太くなったが、小さすぎず、大きすぎず
の絶妙なサイズに
1人、心の中で頷いていると、
「姉様」
ディランの右腕から顔を上げると、
頬を少し赤くしはにかんだ表情と
共に
「ありがとうございます。
大切に使います」
嬉しさが隠しきれない声のお礼に
自分まで嬉しくなり、
「どういたしまして」
微笑み返すと、ディランの腕に
巻かれた6つの魔法石がそれぞれ
光輝いた様に見えた。




