姉、嬉しさが溢れる
晩餐から食後の紅茶の時間
を久しぶりにディランでの部屋で
過ごし、
もっと過ごしたかったが、
就寝の為に自室に戻ってきた。
「楽しかったぁ」
お風呂に入り、寝る為に身なりを
整えマルチダに髪の手入れをして
貰って貰っている中で溢れた言葉に
「ようございましたね」
マルチダが返事をくれた。
この1ヶ月の間、マルチダにも
心配をかけていたのだと知り
「元に戻ったという言い方は
間違っていると思うのだけど」
そう前置きをして
「前の様に顔を見ながら話ができて、
笑い合えて、隣同士で座れて
嬉しいな」
気づかぬフリをしていたが、
この1ヶ月、自分の心も辛かったの
だと自覚してしまい、
姉として、先に生まれた者として
情けないと心の隅で思いつつも
それ以上に嬉しく楽しい時間だった。
気分が高揚し眠気どころではないが
このままマルチダをいつまでも
つき合わせるわけにはいかないので
ドレッサーの椅子から立ち上がり、
ベットへと足を向け、布団へ潜り
こむ。
全くやってこない眠気はマルチダに
も伝わっているのだろうけど、
「おやすみなさい」
そう就寝の挨拶を口に出せば
「おやすみなさいませ」
メイドとして1礼し部屋から出て
行く背中を見送った。
1人になった部屋に火の魔術を発動
させ少しだけ部屋を明るくし、
ベットから降りて机に向かう。
明日の朝、読む工房の報告書と
自分宛に届いたミランダからの
手紙がレターボックスに置かれている
のを横目に、1番上にある引き出しを
開け、
目的の物を取るために手を奥に入れ
ると長方形に箱を見つけ、引き出しかた
取りだした。
数年前に親方さんにお願いをし作って
貰ったブレスレット。
いつか、何かのお祝いもしくは記念日
に渡そう。
そう思い早数年。
渡す機会を見つけられずにいたが、
「明日、渡そう」
忘れない様に机の上に置き、その
箱を見つめ続ける。
魔法石をつけたブレスレットは、
思い付きで作ったもので、
そういえばフレディにも渡してたはず。
魔法石に手入れが必要とは聞いた事は
ないけれど、
明日、見せて貰おう。
「そうだ。アメリアにもお世話に
なっているお礼に渡そう」
明日、ディランとフレディに加工できる
工房を聞こう。
思い付いた事に心が弾み楽しくなり
勢い良く椅子から立ち上がり、
その勢いのまま本棚に置かれている小箱
を手に取り、再び机に戻り椅子に腰を
下ろす。
勢い良く箱を開け、上下にひっくり返し
中に入っている魔法石のかけらを全て
机の上に出し切った後、
「アメリアに合う、魔法石はどれかな」
大きさや形ではなく透明度で選り分けてる。
大好きで大切な親友のアメリア。
自分のことの様に心配して話を聞いてくれ
心配りまでしてくれ、
嬉しかった。
言葉や態度で嬉しかった事に感謝している
事を伝えてはいたが、
改めてのお礼に贈り物で感謝を伝えたい。
半分からさらに選り分け、数個まで候補を
絞り、
「どの、魔術を入れようかな」
使用率の高い火の魔術に水の魔術も
良いけれど、風の魔術も捨てがたい。
マイナーとも言える土の魔術はどうかな?
いざという時に役立つし、
それより光の魔術の方が貴重かな?
そんな事を考つつ、候補に残った魔法石
以外を小箱の中に片付け、
流石に一睡もしないのは。
そう思い椅子から立ち上がりベットへ
向かい、そのまま布団の中へ入った。




