姉、反省をする
魔法が使えれば、
異世界から聖女がやってくる。
本当に小説の様な世界よね。
ディランとの会話を思い出しながら
マルチダが準備してくれた硝子を
握り込み、
魔力を込める。
ディランとフレディの観察する視線を
自分の左手に感じつつ、
どの量の魔力を入れれが良いのかしら?
入れているはずなのに、入っていない。
「なんだろう?留めて置けない?
入れたらそのまま出ていく感じがする」
手の中で感じるままを言葉に伝えると
「魔法石とは違う感覚という事ですか?」
ディランの質問に、
「うん。なんだろう水みたいな感じ」
感じるままを変えると、
「なるほど。魔法石の代用にガラスが
使えたらと思ったのですが、やめた
方が良いですね」
フレディが何かを書きながらの言葉に
「そうね。硝子に魔術が貯めれたら、
手軽だし安価で販売できるはずだけど」
貯まらない、留めておけない。
「無理ですね」
自分の言葉をディランが引き継いつぎ
結論まで出してくれ、
「ならば色が変わったのは、魔力で反応を
したのでは無い。と、いう事ですかね」
続けて告げたフレディの考えに、
テーブルの上に小山になっている硝子に
視線を向けつつ
「結論は早いけれど、多分、そうだと思う」
多分、というのは作った4本の硝子の薔薇
にまだ魔力を入れていないので、曖昧ない
答えとなってしまっている。
硝子の結果であって魔術で作った薔薇では
無い。
ただ、多分同じ結果になる。はず。
と信じ新しい硝子の破片を手に取り、
手を切らない様に気を付けつつ、握り込み
土の魔力を流し入れていく。
土の魔力も硝子を通った後、自分に帰って
くる感覚に、
「駄目かぁ」
少し重めの息と共に溢すと、
「姉様、休憩をしましょう」
ディランの言葉に頷くと、あっという間に
フレディとマルチダによってテーブルの
上が片付けられ、
「晩餐のご準備に入ります」
フレディの言葉に
「ああ。頼む」
ディランが頷返す姿を眺めていると
「姉様?」
こちらの体調を気遣う様な声を表情に
微笑み
「お腹空いたなぁ。て、思って」
考えていた事と違う言葉を返事にすると
じっと見つめられた後、
「そうですね」
気遣う言葉と返事を貰い、
自分もディランの気持ちに気付かない
フリをして微笑み返した。
この1ヶ月。
短いようで長かったようで、反抗期の
前に戻った様なディランに嬉しく思いつつ
も戸惑いの方が大きくて、
昔も今も若いくて愛おしい存在なのに
ディランの言葉や行動に自分が傷つかない
様に心構えをしてしまう。
姉として失格なのは分かっている。
けれどどうしても素っ気なく、時に
苛立ちをぶつけられた時の経験が
思い出されてしまう。
コレじゃぁ駄目ね。
心の中で頷き、決意を新たにし
「お待たせいたしました」
フレディの言葉にディランと共に
お礼を伝えた後、ソファから立ち上がり
テーブルに向かおうとしたが、
「姉様」
名を呼ばれ、視線を向けると
エスコートをするのだと左手を差し
出されていたので、
「ありがとう」
お礼を良い、手を乗せ数歩だけだが
エスコートを受け、ディランが引いて
くれた椅子に座った。
久しぶりのふれあいに涙が溢れそうに
なったけれど数度瞬きを繰り返し
正面に座ったディランに
「美味しそうね」
話しかけると
「ええ、本当に」
微笑みと共に返事が返り、
ディランと共にナイフとフォークを手に
取り食事を始めた。




