姉、実験をする
硝子の薔薇
突然、フレディから出た言葉に
中々思い出せず、首を捻って
しまったが、
ディランが補足をする様に話し
くれた言葉でようやく思い出す
事ができた。
けれど、
多分だけど何かを誤魔化す様に
作った薔薇だと思うけど、
黒に変色することなんてある?
フレディが言うには、
透明な硝子の薔薇が、気がついたら
黒に変色していた。
との事。
ゆっくりと変色したのか、
急激に変色したのか、
それも分からないと言う。
ただ、気がついたら変色をしていた
らしく、
「姉様、気を付けてくださいね」
庭で4本の薔薇を作って再びディランの
部屋に戻り、
その薔薇にそれぞれの魔術を入れて
変色をするかの実験をするのだけど、
久しぶりのディランの素直な心と
言葉に目の奥が熱くなるのを感じつつ、
「ありがとう。気をつけるね」
頷きと共にお礼を返し、
まずは一本手に持ち、
よく使う火の魔術を発動させ
硝子の薔薇に向かって入れてみる。
指先から薔薇の茎へと流し、
薔薇全体へ行きわたらせる様に
想像し流しこむ。
どれだけ流し込めばいいんだろう?
硝子の耐久を考え少量つづ入れているが
いくら入れても透明のままで、
どうするか伺うようにフレディに
視線を向けると、
「変化がありませんね?」
返事が返り、
「姉様、どれ程入れたか分かりますか?」
ディランの問いかけに、
「そうね、感覚でしか答えられない
けれど一応、花弁から茎の先まで
入れてみたけど」
色が変わらないので本人しか分からない
のが難しい。
更に薔薇に火の魔術を入れ続けると、
限界を迎えたたのか、ヒビが入る音と
同時に砕けてしまった。
「姉様」
「エスメ様、動かないでください」
ディランの悲鳴のような呼びかけに
大丈夫だと頷き返し、
フレディの冷静な指示に頷き
硝子の破片が落ちない様に集め
「フレディ、それ貸して」
白いハンカチに集められた硝子の
欠片を受け取り、再び薔薇の形に
作り直す。
「透明だよね」
火の魔術を混ぜた硝子の薔薇は
最初に作った薔薇と同じの色をしていた。
他の薔薇にも水の魔術、風の魔術、
土の魔術を入れてみたが、
「どれも同盟のままだったわね」
作った全てに魔術を入れ終えたが
変化は無く
「魔法石とは違うのですね」
ディランの言葉に、
「確かに、魔法石だと火の魔術は赤
水の魔術は青、土の魔術は琥珀色
風の魔術は緑色。それぞれ色が出るのに
硝子だと出ないわね」
頷きつつ返事を返し、まじまじと硝子の
薔薇を見つめる。
「色が分かるのは、魔術では無い。
という事でしょうか?」
フレディの言葉にディラン顔を見合わせ
「環境だとそれぞれ違うから、その場所に
住んでいる人にお願いするしか無いわね」
「そうですね。僕の部屋と姉様の部屋に
置いて観察をしましょう」
自分の提案にディランが頷いてくれ
「私からもお願いしてみます」
フレディも同意してくれたので、
一旦、硝子の薔薇の話題を終え、
一息つくのにフレディが紅茶を淹れて
くれたので、1口飲み
「そういえば」
と違う話題をするとディランは目尻を
緩めながら話に耳を傾けてくれた。




