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母は動き出す


王妃さまから言葉で許しを貰えた。


が、それは国の代表としての言葉で

心の奥底、


1人の母親としてはどう思っているか

分からない。


平民から高位貴族が水を浴びせられた。


貴族としては許し難い出来事なはず。


どう、謝罪をすれば良いのか。


微笑みながら話に盛り上がるご婦人達の

話を聞きながら、探りを入れる。


「跡取りで勉強も大事ではあるけれど、

少しでも淑女にも興味を持って欲しいと

思っていたの」


魔術省の長であるご婦人の言葉に、


「うちの息子もよ。跡取りとしては

良い子なのだけど、これから結婚する

となると、あの事一緒になる子が

気の毒で」


宰相さまのご婦人の言葉に

騎士団長と王妃さまが困った様に

眉を下げ微笑み返す。


この2人の反応を見ていると、

嘘ではないと判断して良さそう。


そう思うと、


「ディランもそうですわ。

水を浴びてからは、前の生真面目な

性格が戻ってきております」


同調をする為に息子の話を出すと、


「あの後、姉弟の仲が戻ったと

聞いておりますわ」


「反抗期と受け止めているとは、

聞いておりましたが、辛い日々を

過ごしていたのは変わりありません

もの」


「姉離れ、弟離れする機会と言えば

良いのかもしれませんが」


宰相様、魔術師長様、

最後は騎士団長のご婦人と続き

告げられた言葉に、


「お心配りありがとうございます。

私達もどうすればと思っていた所

でしたので、良いきっかけに

なったと思っております」


感謝の言葉と、屋敷にいる全員が

心を痛ませていた出来事が落ち着いた

事への報告をする。


少なからず、各個人的な感情は

わたくしが考えている様な事はなさそう。


心の中で安堵の息をこぼし、

紅茶を一口飲むと、香りと共にすっきり

とした味が口の中に広がり、


味も分からない程に緊張していたのね。


そして方々に悟られていた。

と、いう事ね。


自分もまだまだね。


重いため息を体の中にこぼし、

楽しげに話している内容を耳に入れつつ


エスメの件はこれで大丈夫。


そう思うと、じんわりと体が暖かく感じ

ようやく一息つけた気がした。


「ところで、皆様方のご子息は、

どなたに夢中になっていたの?」


そんな中で聞こえた言葉に、


そういえばと記憶を掘り起こす。


フレディからの報告は


どなたか解りませんが、

気になる女性生徒が

できた。と、だけ。


家名など聞いた事が無い。


それは、どこも一緒の様で、


「どういう事かしら?」


不穏さを滲ませた言葉に、


全員で顔を見合わせ、


「良く似た話を数年前に聞いた事が

ありますわ」


騎士団長のご婦人の言葉に、

皆の表情が固くなる。


もしかして。


まさか。


この場にいるのは国の重人。


そのご子息も将来は国の中心となって

動かす事が決められている。


婚約者だって慎重に調べられ候補者が

選ばれている。


嫌な予感と冷たい汗が背中をつたう。


どこの国のハニートラップ。


もしくは


光の魔術を持つものが現れたのならば、

必ず


闇の魔術を持つものが居る。


最重要項目であり、極秘とされる魔術を

持つ者の仕業なら、


対抗できるのは、エスメ。


王族入りが決まっているマリー嬢のみ。


上がってきた体温が下がっていくのを感じ、


「早急に調べさせますわ」


魔術師長のご婦人の言葉に、


「それとなく、聞いてみます」


わたくしも返事を返すと、皆が真剣な

表情で頷いてくれた。


どの国の間者ならば、証拠さえ掴めば

国益にする事ができる。


が、闇の魔術ならば、国益を損なう

事も考えなければならない。


早急に片付けなければ。


帰り次第、夫に会い今日の話を

しなくては。


それによってはエスメも呼び出して

再度、詳しく聞き直しをして、

同時に調べ直しの指示も出さなければ。


帰宅後の予定を頭の中で立てつつ、

先程の雰囲気など無かった様に


全員で微笑み、穏やかな雰囲気を

作り他愛のない話をし、


それぞれに役目を確認し、

解散となった。




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