姉、心を誤魔化す
晩餐の招待をしてからは
毎日食堂で取るようになった。
黙々と食べる日もあれば、
私がクラスであった出来事に
話題になった話をする日もあり
今日も講義で習った事に講義中に
聴いたちょっとした小話。
休憩中に聴いたクラスメイトの
職場であった昔話に、
放課後の淑女教育の内容。
ディランは興味の無い態度では
あるものの耳を傾けて聴いてく
れるので、
「でね、アメリアが言うには
貴族社会に下心と野心が無い者は
いませんわ。気を付けなさいな」
アメリアの口調と真似を少しして
淑女教育の話をしていると、
「何を当たり前な事を言っている
のです?」
溢された息と共に告げられた言葉に
「うん。まぁ、そうなんだけど。
マリーには遠い世界のようで中々
実感が掴めていない様だったの」
ちょっと心配。
これから貴族社会の中で生活を
していかなければならないマリー
に、本人が意図せずやってくる
下心に傷付き、
野心に巻き込まれる。
よくよく考えれば貴族社会だけ
ではなく平民の社会でもある事で
「純真だから光の魔術が使える
とでも言いたいのですか?」
上からの物言いをするディランに
ゆるりと首を振り、
「そうではないわ。
ただ、言葉の意味は理解をしている
けれど体験と実感をしていないと
理解は難しいわね。と、言う話よ」
思春期だからと言ってしまえば
ディランの態度も
仕方なし。
と受け入れられるのだろうけれど、
あまり屋敷で働いている人達に
見せれる者ではないかもしれないが、
晩餐をとっている部屋の扉は全開に
開けており、誰もが廊下を歩けば
食事の進み、に部屋の雰囲気、
ディランとの会話や態度が
見える。
目を瞑る程、ディランの食事態度が
悪いこともなければ、耳を塞ぎたくなる
程の言葉使いをする訳でもない。
誰もが通る、反抗期
らしく、屋敷で働く男性は納得したり
思い出したくない記憶なのかどこか遠い
場所へ視線を向けたりし、
女性達は家族がいる主婦達からは暖かく
見守られ、年齢が若いメイド達は時折
顔を顰めたりするものの
全員がディランの現状を理解し見守る
対応をしているので
お母様の指示かなぁ。
頭の中でぼんやりと考えつつ、
「このマカロン、美味しいわね」
綺麗なラズベリー色のマカロンを
一口食べ感想をディランに伝えると
じろりと視線を送られただけだが
聞こえないふりをされた訳でもなく、
どんなことでも反応があるのが
嬉しくて
「ディラン」
正面座るディランの名前を敢えて声に
出し、視線と意識を向けて貰い
「大好きよ」
自分の気持ちをこれでもかと混ぜ
伝えると、眉間に深い皺を入れ、
睨む様に目尻を上げたが
言葉での反応は無く。
前なら、知っています。とか
言ってくれたのに。
少し寂しく思いつつも、
拒否の言葉が無い事に安堵し
「今日も、かっこいいわね」
ほんの少し茶化しを入れ伝えると
これが悪かったようで、ディランは
無言で席を立ち、フレディを連れ
食堂から出て行ってしまった。
予約投稿設定の日にちを間違えておりました。
大変申し訳ございませんでした。




