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姉、寂しくて悲しい


互いに紅茶を飲み、ルイの為に

作られたローストビーフがたっぷり

挟まったサンドイッチを分けて貰い

無言のまま完食をし、


マルチダが気を利かせ淹れてくれた

はちみつとミルクがたっぷりの

ミルクティーを一口飲むと


甘さが口の中に広がり、知らずに

強張っていた体から力が抜けた。


改めてルイを視界に入れると、

何やら真剣な表情で考え込んでおり

声をかけるのも憚れたので、


気づかないフリをし、視線を離し

手元のカップに視線を落とす。


ディランの急変した態度に、

反抗期だと位置付けたけど戸惑いは

大いにある。


今まで気づかなかったがディランと

触れ合えてなだけで、心の中がモヤモヤ

したり、悲しなり辛なり苦しくて、

思わず手を伸ばして抱きしめようと

してしまう。


そんな事をすれば、さらにディランから

の印象が悪くなるのは分かっているので

我慢をするが、


「中々、辛いなぁ」


思わずこぼしてしまった言葉に、ルイ

が反応を示し、問いかける視線に

困った様に笑い


「ディランと話したり触れ合えないのが

思ったより辛くて」


返した言葉と声は自分が思っている

以上に弱っている音に


ルイに申し訳ない気がし、


「私もそろそろディラン離れをしなきゃ

駄目だったから、良い機会かもね」


思ってもいない、その場かぎりの

誤魔化しの言葉を伝えると


はくりとルイの唇が動いたが、一度

閉じた後、再び開き


「エスメが本当にそう思っているの

なら、実行すれば良いんじゃねぇの」


自分の強がりや誤魔化しなどルイは

お見通しの様で返事を返せなかった。


再び落ちた沈黙は居心地の悪さを

増幅させ、


「ルイ、強くなったのね」


何か話題をと、焦り、頭を回転させて

浮かんだ話題を口にすると、


1度だけ瞬いたルイの、勝ち気な笑みの


「まぁな。領に帰った後の事もあるし

何より、守りたい人がいるからな」


学園卒業後の事とミランダとの

将来も考えているルイに思わず

目を見開き


「ええ、ルイ凄い、かっこいい」


驚きと共に褒めると


「自分にできる事を考えただけだ」


少しの照れと恥ずかしさが混ざりつつも

返ってきたルイの言葉は、


微笑ましく、眩しくて、


訳があって領へ来たミランダの事を

考えている


ルイの優しさと思いやりが、

心の中にあったモヤモヤした言葉に

表せない感情が消え


「ルイは帰ったらおじさんと同じ

騎士団だねぇ」


未来を想像し半紙を続けると、

ルイの自分の気持ちを汲んでくれた

のか話を続けてくれる。


「まぁ、下っ端からだけどな」


「そうなの?」


返ってきた言葉は想像もしていない

言葉で、


「いきなり上に立って、誰が信頼して

くれるんだよ」


親父や子供の頃から俺を知ってる

大人達ならいざ知らず、


知らない奴から見たらまだまだ

餓鬼で王都で遊んでいた子供だ。


「実力を認めて貰って上に立ちたい」


真剣な表情で将来の計画を話す

ルイに勉強だってクラスで上位

で剣の腕前だって良いだろうに


ルイらしい。


出会った頃から変わらな真っ直ぐな

性格と言葉作りに


自分も卒業後の事を考えなければ。


そう思っていると


壁側に控えていたマルチダが近く

まで来て


「エスメ様、歓談の最中に失礼致します」


理の言葉に、大丈夫だと伝えると


「食堂に晩餐の準備を始めてもよろしい

でしょうか?」


マルチダの言葉に驚きつつも


「ええ、お願い」


ディランからの招待が無いのだと

分かり、晴れていた心が一気に

曇り悲しく思いつつも、


淑女として感情を表に出すわけ

にはいかず


「ルイもご一緒にいかが?」


この部屋に居る理由を作る為に

誘うと、一瞬間が開いたのち


「お誘いありがとうございます。

ご迷惑でなければ是非」


形式での返事に深掘りされる

関係ではないと表面上に出す。


この屋敷で働いている人達は

ルイとの関係もルイが誰が好きで

愛しているかも知っているから


その様な手間のかかる事は

しなくても良いが、


いつ、どこで、誰が話し

誰が聞いているか分からない。


平民である自分達だけど、

貴族であるディランやアメリアに

マリーの迷惑にならない様に


練習も必要だと、

淑女教育と生徒会主催のお茶会で

学んだ身としては


手間だと言っていられない。


最愛の弟や親友を守る為


自室のドアが少し開けて

聞かれても良い会話をしているのも

その為、


苦痛だなんて思わない。



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