姉、心中穏やかでは無い
学園から帰宅してすぐなので
ディランもルイも制服のまま
剣を持ち手合わせを始めた。
平民クラスのルイの制服は生成り
色の木綿のシャツに黒のスラックス。
対するディランは、真っ白の綿の
シャツに黒のスラックス。
互いに本気でぶつかり倒されるので
互いのシャツには土が付き、
背中などは汗もあるからか、全面が
土で汚れていると言っても良いほどで
洗濯をしていた者として、悲鳴を
上げたくなるし、一言言いたくも
なるが、
お願いした皆ので口を閉じ、
深呼吸で心を落ち着かせ、
「私が洗濯します」
小さな声でこぼせば、
「2人にさせれば良いのでは?」
横から聞こえて来たフレディの声に
驚き慌て顔を上げると、
「エスメが気にすことはないさ。
2人で最後までさせれば良い」
年長の兄の表情と言葉に、
「良いのかなぁ。ルイに願いしたのは
私なのに」
洗濯ぐらい私がするよ。
の意味を込め返事を返すがフレディの
視線を自分から離れたので、追いかけると
ディランがルイにからの一撃を貰い、
背中から勢いよく倒れていく姿に
思わず息を呑む。
が、ディランは痛みに顔を顰めたが
すぐさま立ち上がり、剣を構えルイに
振り下ろす。
ルイもディランの動きを読んでいた
様で、正面から受け止めるのではなく
横に移動と共に払い、距離を取ると
すぐ様ディランに向かい剣を振り落とす。
ルイから避けられた事で勢いを無理やり
殺し体制を整えるが間に合わず、無理やり
体を捻りルイの剣を受け止めたものの
体重移動が上手くいかず、再び地面に
倒れ込んだ。
見ている自分はいつ怪我をしても
おかしくない動きをする2人に
命が縮まる思いをし、時に息を呑み
心臓が痛く感じる程に身を強張らせ
るが、
フレディも対面にいる騎士団長も
自分とは正反対の様で、
涼しげな表情のフレディに対し
腕を組み見守る体制の騎士団長
の表情に
何かあれば2人に任せれば良い。
そう思える程の安心感と
終わった後、怒られ叱られる事が
安易に想像でき、
助けには入るからね。
地面に座らせられ騎士団長と
ディランの部屋のソファに座り
フレディすがらも意図も容易く
想像ができたので、
振り向き後ろで控えてくれている
ミランダに視線を合わせると
近づいて来てくれたので
「夕食をお肉多めにお願いできるか
クック長に尋ねてくれる?」
小声でお願いをすると
「かしこまりました」
頷きと共に了承の言葉を貰え、
キッチンへ歩き出したミランダの
背中を見送った。
騎士団長がここに来てくれたと言う
事は、屋敷の中に居るお母様には
現状報告は行われており、
もしかするとお母様からの注意も
あるかもしれない。
屋敷の敷地内だし、互いに気心の
しれた親友同士。
若気の至りで許してくれる範囲
だと思いたい。
少し遠くに視線を向けながら、
日の沈みかけている空に願い
視線をディランとルイに戻せば、
どうやらディランの体力が切れ
かかっているのか、肩で息をし
すぐに立ち上がる事ができない
様で、
心配げにディランを様子を伺うも
本人は辞める気配は無く、
左右に剣先を揺らしながらも
大きく振りかぶった。
一方、息一つ乱していない類は
余裕でディランの一撃を交わし
反撃をするのではなく、闇雲に
振りあげられるディランの剣を
受け止め、時に諌める様に
薙ぎ払う。
次第に足取りも覚束なくなってきた
ディランは剣すら重いのか、
振り上げる事をせず、横へと振る
動きになり、
誰が見てもディランの限界が来て
入りのは明らかで
そろそろ止めた方が。
フレディに視線で伺いを立てるも
目を細めるだけで動き出してくれず、
騎士団長に視線を投げるも、
気づいてはくれたが動きは無く、
自分が動くしかない。
考えに至り足を動かす為に上げたが
「エスメ。まだだ」
フレディの言葉に動きを止め、
何故だと視線を向ければ
「本人が終わりに納得をしていないなら
止めた所で遺恨が残る」
こう言うのは本人が答えを出すまで
待つのが良いんだ。
その言葉に納得し再び見守る体制に
戻したが、
肩を大きく上下に動かし苦しそうに
息をし、立っている事もやっとな
ディラン
息一つ見出す事無く立っているルイ
勝敗は誰た見ても明らかではあるが、
ディランの気持ちの整理はできて
いないようで、
ふらつきならルイに向かって行き
避けられ止まる事ができず、地面に
倒れる。
再び起き上がり、ルイに向かうが
避けられ、また転ける。
その繰り返しを胸が痛くなる程に
見守り、涙で視界がぼやけ出し
助けに向かいたくなるが、フレディの
言葉を思い出し手を握り我慢する。
ついにディランは立ち上がる事が
できなくなり、
地面に転がったまま乱れた息を
整え様とお腹を上下に動かす姿に
騎士団長が動いてくれたのを見て
安堵の息を溢す。
ルイが手を伸ばすも、いらないと
ばかりに自分で起き上がったディランは
騎士団長の姿に気が付き、
どこか拗ねた様な表情をしつつ、
話を聞く体制に体を動かしたのを見て
再び安堵の息をこぼした後、
嫌々ながらも体制を整えたディランの
姿に微笑ましく小さく笑ってしまった。




