姉、不甲斐なさを感じる
理由は分からないが、
とても不機嫌なディランにどう
声をかけようか悩みつつ、
そっとフレディに視線を向けると
ゆるりと首を振られた。
なるほど。フレディですらディランの
機嫌の悪い原因が分からないのね。
お茶会の時を思い出すも、クラスメイト
の動きや全体の雰囲気が気になり、
ディランを見ていた記憶が無く、
思い当たる原因も分からず、
不機嫌を隠さず、瞼を閉じている
ディランに
どうするべき、かしら。
光の魔術をかけた方がいいかしら?
1人思い悩んでいると、
「ディラン」
横に座っているルイが呼びかけると
めんどくさいと態度で表しながらも
瞼を開けたが、
明らかにルイに向ける視線は
怒りを含んでおり、
口を挟むべきか、ルイに任せるべきか
様子を見ようとフレディと視線を合わせ
小さく頷き合う。
「何があったんだよ?」
感情と疑問をそのままに告げた言葉に
ディランは無言で返す。
「茶会の前に会った時は、機嫌が悪く
無かった。その後に何があった?」
さらに尋ねるルイに対して、大きな
ため息を溢すディランに、
私が知らないだけで、実はディランと
ルイは立場など関係なく言い合える仲
なのかもしれない。
男の子同士の特別な関係
フレディとディランとの関係がある様に
ルイとディランの関係もあるのならば
今はルイに任せよう。
見守り何かあれば口を挟む気でいたけれど
それを止め、見守るだけにする事を決めた。
「茶会で何か問題があったのか?」
原因を探ろうと言葉を変え尋ねるルイに
ディランは無言で返し続け、
そろそろ。
横目でルイの様子を伺うと、目尻は
吊り上がり、口はへの字になっており
「いい加減にしろよ。何も言わないんじゃ
分からないだろう!?」
怒りの感情がそのままに勢い良くでた
言葉に、少し見下した様な視線をした
ディランの姿に内心驚きつつ
まだまだ、見ていないディランの表情が
あるのね。
何処か関心しつつルイとディランの
やり取りは、ルイの怒りを煽った様で、
「お前、いい加減にしろよ」
その言葉に、鼻で笑ったディランに
「屋敷に着いたら勝負しろよ」
その傲慢な態度へし折ってやるよ。
自分でお願いをした事をとは言え、
この様な形で叶うとは不本意でも
あるが、
体を動かせば何とかなるかも。
そう思いつつ、騎士団長には
お願いしてディランとルイを見守って
もらえるようにお願いしよう。
一応の対策を考え険悪の雰囲気の
中、馬車は屋敷の門を潜り、
玄関口に到着した。
ルイが扉を開け、先に外へ出る背中を
見送り、次にフレディが降り、
「エスメ様」
外からフレディに呼ばれ、差し出された
手を借り馬車を降り、
「お帰りなさいませ」
マルチダの出迎えと挨拶を貰い
「出迎えありがとう。ただいま」
お礼と挨拶を返し、振り返り馬車から
降りてくるディランを見ると
息を飲む程の怒りを不機嫌が出ており
流石に屋敷で働く皆にこの姿を見られる
のは次期当主としていかがなものかと
思い、光の魔術を発動させ
ディランの体に触れようとするが、
1歩足らず、フレディを連れルイと
裏庭に歩いてしまった。
どうしよう。
焦り、ディランとルイの背中を見送る
事になってしまい、
「エスメ様?」
ミランダの呼びかけに、
「裏庭に行くので、お茶の準備を
お願い」
淑女らしからぬ早口で告げ、後を
追いかける為に駆け出した。
到着した時には、ディランは上着を
脱いでおり、ルイと共に剣を手に
広場の真ん中へ歩いていた。
「フレディ」
息を切らし、ディランのジャケットを
持っているフレディに声をかけると
首を振られる。
先を潰してるとはいえ怪我をするもの。
ディランもルイも鍛錬を重ねてはいるが
感情のまま振り上げて良い物ではない。
自分からお願いをしたが、
それはルイが冷静で判断力がある時で
「フレディ。騎士団長を」
もしもに備えお願いすると、頷き
小走りにその場を去った。
一応ながら敬意を払う礼をする
ディランとルイの姿を見つつ
大きな怪我はありませんように。
そう祈りながら、2人の剣のやり取りを
見守った。




