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弟に友達ができる

2023/04/12誤字修正をおこないました。教えてくださった方ありがとうございます。


晴れ間の中に白い雲が風に流されるのを眺め

今日これからの予定を思い出す。


王城から帰ってきた父から聞かされた


「殿下がお前に会いに当屋敷へいらっしゃる」


予想もしなかった言葉に驚き言葉を失っていれば、


「私が行っている茶会だ。準備する様に」


真剣な表情と告げられだ言葉に、


ついに姉を見にくるのか。


納得でき、


「解りました。場所は庭で開催したいと思います」


この頃の姉は箒に跨り空ばかり飛んでいる。

庭に居れば自ずと姉の姿が見えるだろう。


数週間かけ計画をたて従者と執事とも話し合いをし今日と言う日を迎えた。


屋敷の使用人達も慣れたもので木陰が出来ている場所にテーブルとイスを準備し、ティーフーズも運ばれている。


着々と出来上がる会場に心の準備も整いだすと身体中に緊張が走る様になってきた。


本来なら王宮にて王妃主催のお茶会にて挨拶をするのが通例であるがそれをせず会うのは姉関係だからだろう。


姉という存在がどれほど特例なのかを実感し溜息を落とす。


「ディラン様、まもなくご到着されます」


従者であるフレディの言葉に頷き玄関へと向いながら、


「姉様は何をしているか知ってる?」


1歩後ろに並び共に歩いているフレディに問えば


「今は庭師と共にバラの世話をしていると聞いております」


2人して自然と庭へ視線が向けられた。


この日の事を晩餐で聞き、姉は今以上に綺麗にしないとねと大張り切りで毎日、庭に出て庭師とバラの世話に勤しんでおり今は最終確認の為に庭師を引っ張り回しているのだろうと想像すると、自然と笑いが込み上げてきた。


自分の為に姉が嬉しそうに楽しそうにしている姿は見ている自分も嬉しかった。


姉が笑いながら突拍子の無い事を起こすのも、

その根本には誰かの為、誰かの役に立つ為だ。


それが分かっているから両親は何も言わない。

困りながらも心配そうに見守っている。


父も王城や当屋敷で行われる茶会で姉の事を守っている。

次期跡取りとして自分も姉を守らなければ。


到着した玄関先で深呼吸をすれば、2頭立て馬車が到着し殿下の従者が扉を開ければ太陽の光に照らされ輝く金色の髪に見蕩れかけるも胸に手を当て慌て礼を取った。


「この度はお茶会への招待ありがとう。嬉しく思うよ」


同年代とは思えない気品と人を従える事に慣れている雰囲気に生唾を飲み慄くも、心の中で自分を叱咤し、


「お忙しい中、当屋敷へ来ていただけ大変嬉しく思います」


通例の挨拶をし終わり顔を上げ、


「今日はバラが見頃ですのでガーデンに会場を作りました」


移動を促し、差し障りの無い天気の話をしながらテーブルへと向かい、それぞれの従者に椅子を引かれ着席する。


「聞いた通り素敵なバラ園だね」


微笑みながらの言葉に


「お褒めいただき光栄に思います。庭師達も誇りに思うでしょう」


褒められたことが嬉しく返事を返せば、殿下の従者が白い箱を手に持ちフレディへ手渡す姿に


「手土産に当家のシェフが作ったレモンケーキを持ってきたんだ。」


姉の存在を匂わせ、会わせてくれるのだろうと言う圧に笑い返し


「お気遣いいただきありがとうございます。家族皆が好きなので嬉しいです。

後程、散歩に誘わせてください素敵なバラが1輪咲いているのです」


裏の意味を読み取り姉の居場所を匂わせれば、正解だと微笑まれ


「それは楽しみだ」


殿下の言葉が合図だったかのように紅茶がテーブルに置かれ、2人してカップを持ち上げひと口飲み

互いに紅茶の香りと味を楽しみカップをソーサーに戻す。


「そう言えば空を飛ぶ話を父から聞いたけど、君は知ってるかい?」


首を傾げ問われた予想通りの質問に


「ええ。箒に跨り空を飛ぶ話ですね」


予めて用意していた答えを返せば、


「想像は難しいけど気持ち良さそうなのは分かるよ」


先ほどと変わらぬ笑みでの言葉に


「そうですね、乗馬とよく似た感覚ですね」


体験談を話せば、


「なるほど。その例えはとても分かりやすいね」


理解できたと頷くその姿に心の中で安堵の息を吐いた。


初手の返答は上手くできた。問題は次だ。


「だが、なぜ箒なのか君は分かるかい?」


そう。なぜ箒なのか。こればかりは


「そこに箒があったから。ではと思っております」


姉の言葉そのままを伝える。

報告書にもこの言葉を書き、父も陛下や側近の前で同じ言葉で返したと聞いた。


こればかりは姉の感性の問題なのだ。

いくら弟と言え、分からない物は分からないのである。


「なんだか壮大な様なそうでも無いような」


どうにか理解をしようと努力していただき胸が苦しいが、これが姉なのだと枠などに入れずにありのままを受け入れていただけたらと祈るしかない。


殿下と同時にカップを持ち上げ紅茶を1口。

魔法具で冷めることの無い紅茶にホッと息を落として事で緊張し体が強ばっていたに気付き己の失態に眉を顰めたくなるも殿下の小さく笑う声に視線を向ければ、


「そういえば、僕と君とは今日初めての面通しだったね。

僕とした事が予想以上に緊張していたようだ」


思い返せば確かに互い初対面なのに自己紹介をしていない。


「改めて、僕はルークだ。同じ歳だしこれから仲良くして欲しい」


微笑みながらの挨拶に、


「ディランと申します。よろしくお願いします」


なぜ家名は名乗らないのは理解はできなかったが、上に従い名前だけを言えば

意味深な笑みで返された。


この対応も間違っていないはずだ。

どこか自信が持てず戸惑うも、


「うん。いつまでも温かい紅茶が飲めるのは嬉しい事だよね」


告げられた言葉は姉への賞賛であり


「はい。発案と製作をした者には感謝しかありません」


認めてもらえた嬉しさに頷き返す。


「あの、髪を乾かす為の魔法具を大きくして暖房器具は想像できたけど

 氷魔法石にと風魔法石を合わせ冷風を出して部屋を涼める発想は無かったよ」


柔らかな表情から真面目な表情へと変え語る話に頷く。

この国の住人は魔法が使える。日々の生活では火は火石で起こし水は井戸や川汲んだりする。

稀に魔力を持たず生まれた者達への配慮と自然と共に生活している事を実感する為だが、

生活内においての魔法も魔法を閉じ込めた石も欠かせない物だ。

1人1つの魔法が使えるのが常識であり、稀に2つ使える者もいたりする。

後は魔力の量の違いで、多いと魔法省や騎士団へと就職を進める。


それが世間一般の常識だ。


それを軽く超え、全ての魔法を使いこなし、同時に複数の魔法を発動する姉が異常なのだ。


だからこの茶会なのだが、殿下は姉の事を悪く思っていない様に感じる。


可もなく不可もなく。

国を発展させ諸外国との交渉を優位にしてくれるなら毒をも取り込む。

それが陛下の考えだと父から教えられたが殿下も同じ考えなのだろう。


少しでも姉の印象が良くなるように頑張らねば。


紅茶を飲みきり、メイドから新しく注がれた紅茶は香り良く釣られるようにひと口飲んだ。


この後、殿下を庭へ誘い姉の姿を見せる。

できれば、いつもの笑顔でバラの世話を行っていて欲しい。

姉の性格はもう直しようがないが、笑っていれば可愛いのだ。

そこを最大限に生かすしかない。


今まで以上に緊張し震える手を握り締め、無意識に落としていた視線を上げると

紅茶を楽しんでいるのか視線を下ろしカップを見ている殿下を視界に入れたその瞬間、


「ディラン!」


名前と共に両肩に重みを感じる慌て振り向けば、楽しそうに笑っている姉がおり、


「なんで、ねえ、いや、どうしてここに!?」


突然の事に驚き言葉が上手く作れすにいれば、無邪気に笑い


「ディランが居たから来ちゃった。今日はお友達が来てくれる日でしょ?だから挨拶しなきゃと思って」


どこか悪戯が成功したかの雰囲気にまさかと思いながら、一旦姉を帰そうと手を伸ばすも


「貴方がディランの友達?初めまして姉のエスメです」


よろしくね。挨拶をしながら殿下に近づく姉に慌て引き留める為に手首を掴むも


「ディランは優しくてしっかり者なんだけど、時折口煩くなるのは誰かを思っての事だから怒らないであげてね」


愛おしそうに微笑み告げられる自分の事に思わず動きを止めてしまうと、掴んでいた手首がするりと離れ殿下の前まで進み、下を見ている殿下に手を伸ばし頭を撫ぜ、


「今日は忙しい中、ディランに会いに来てくれてありがとう。突然お邪魔してしまってごめんなさい。

ゆっくりしてしていってね」


優しく柔らかな声で言い終わると頭から手を離し、振り向き


「これ、さっき作ったの良かったら渡してあげて」


どこから出したのか、ガラスでできたバラが2本手渡され


「お邪魔してごめんね」


言い終わると、背中をむけ屋敷の方へ向かっていった。


嵐の様な出来事に呆然としていれば、


「そこの君、紅茶のおかわりをいただけるかな」


殿下の何も無かったかのように振る舞いに気持ちを立て直し姉から渡されたバラを自分の従者に手渡した。


もっと穏便にしたかったが目的は終わった。


この後、王家から苦情の手紙が来るかもしれない。いや、個人への罰かもしれない。


冷や汗が背中に伝うもなんとか表面を取り繕う中、


「風に髪を遊ばれてしまったね」


困った様に笑い、殿下の従者がお髪を直し何事もなかった様に先程立っていた場所まで戻っていた。


殿下の言葉にうまく返す言葉が見つからずにいれば、


「気にしないで」


それは、姉の事なのか、髪が乱れた姿のこと何か判断できず口籠ってしまう。


「ディランとは友達だと思っている。また会いたい誘ってくれ」


急に砕けた言葉に慌て、頷き返すことが精一杯だった。


そこからは殿下が日々のたわいの無い話を振り僕が答えるという時間になり仲を深める時間となった。


「今日は楽しかったありがとう。今度は私が招待するよ」


馬車を背後に告げられた言葉に


「ありがとうございます。楽しみしております」


返事をすれば殿下は笑い、帰って行かれた。

馬車を見送り、自分の部屋へ足早に入れば全身に疲れで体を重くなりソファーに身を沈める。


自分の失態に不甲斐なさを感じるも、何より姉の言葉を思い出し身体中にむず痒さが駆け抜けた。


まさか殿下にあんなことを言うだなんて思いもしなかった。

そして、姉が居なくなってから殿下の視線が微笑ましいと言わんばかりだった。


思い出すだけで、のたうちまわりたくなる衝動をぐっと堪え、無理矢理体を起こす。


姉から手渡されたバラを殿下に届ける手配をする。

姉の名前を出さず殿下の元へ届ける為、理由は手土産にいただいケーキのお礼でいいだろう。


従者にレターセットを準備するようお願いし、自分は姉の元へバラの礼と苦情を入れる為に向かった。


第7話

ディランの気苦労が倍になるお話です。

そろそろ魔法の話も書きたいと思っています。


ブックマークや評価ありがとうございます。

とても嬉しいです。


連日、熱中症警戒アラートが続いておりますので皆様お気をつけください。

台風も発生しているとかお盆のお天気が心配ですね。


ネタバレを含みますが短編に本編終盤の弟ディランの心境と日々を書いております。

よろしけれお読みください。

https://ncode.syosetu.com/n4082hc/

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