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姉、修行開始


毎日が繰り返される中、1つ1つ小さい事でもできる様になれる事が嬉しくて毎日心弾む日々を過ごしている。


昔という前世では嫌で嫌で仕方なかった家事も世界が変われば楽しい作業になってしまう。


勿論。洗濯機の存在がありがたく思う日々でもある。


火魔法石で洗濯水をぬるま湯に変え前日着ていた服や使用したシーツを洗い、物干しに干してから一気に火と風の魔法石を同時発動させ乾かし皺を伸ばしていく。


初めて知った事はランドリーメイドの採用条件は火魔法か風魔法が使えるのが条件だった事。


雪に閉ざされる時もあり近辺の領では当たり前の条件らしく給料面も王都に居るランドリーメイドより良いし領民で火魔法か風魔法の子供が生まれると領主からお声がかかる事もあるのだとか。


蒸気と熱風で蒸し暑い部屋は何気に人が集まり、そこからたわいのない話が始まる。


楽しそうな街で起こった話、どこの誰かが何かをした話、時には夫婦や恋人同士のアレコレの話を小耳に挟み、


「お嬢様に変な話は吹き込まないの」


初日に年嵩のランドリーメンドの注意が入ったものの、


「街の事や皆の事が知れてとても嬉しいので気にせず話を告げけてください」


淑女の笑みではなく年相応の笑みで伝えると、戸惑いながらも話をし始めればあっという間に話に花が咲き笑顔が溢れた。


初日から1週間程は年嵩のランドリーメンドの指導を受け、解らない事は自分で判断せず直ぐに教えを乞いた。


新人の基本中の基本。


勝手に判断し間違っていたら修正するのは先輩の教育者。


先輩だって新人教育しているからと言って仕事を減らさせる事は無く、


自分の仕事に新人教育が加わるので数倍の仕事量になる。


間違って数倍の仕事時間と悪印象になるよりも、直ぐに質問や確認をした方が短時間に終わるし好印象になりやしい。


まぁ、人それぞれで聴きにくい先輩もいるし、1度しか聞いてないのに何度聞いてくるのなんて怒る先輩も居て、


独り立ちした時の人間関係構築に大変役に立ったなぁ。


ぼんやりと思い出しながら洗濯をしたり話の混じってみたりしランドリーメイド達を中心に仲良くなり、洗濯を終わらせるとディランの私室へを足早に向かう。


時折、掃除をしているメイドに挨拶を交わしながら、扉をノックし


「おはようフレディ」


扉を上げてくれたフレディに挨拶をし部屋に入れてもう為に扉を開けて貰えるのを待つもしばらく経っても扉が開かず首を傾げると、


「どうしたの?ディランの体調が悪いの?」


どこか困った雰囲気を出しているフレディの顔をじっと見つめていると、ゆっくりと視線が外されチラリと部屋の中に視線を向ける、更に困った顔をした後


「大変お待たせいたしました」


言葉の後フレディの手により扉が開き部屋の中に入る事ができた。


「ディラン、おはよう」


朝一番に会うので挨拶をする為に部屋のいるディランの姿を探すと、


「ディラン?」


ディランとフレディしか居ない部屋に部屋の真ん中に女の子が立っており不思議に思うも顔立ちがディランに似ており、


「親戚の方かしら?」


ポツリと言葉を溢してしまい慌て淑女の笑みで誤魔化し


「初めまして、私はこの部屋の主人であるディランの姉のエスメです」


できるだけゆっくりと柔らかい声を出すように心掛け告げた自己紹介に女の子は眉間に皺を寄せてしましい

内心慌てるも微笑みだけは崩さない様に顔に力を入れ返事を待った。


呼吸を二桁程するぐらい間を開けあまり待つ事も失礼になるのでどうするべきか考え出した頃、


「姉様」


大きな、体の底から全ての息を吐き出すぐらい大きなため息の後に聞こえた呼び名に、思わず返事を返しかけるも、見知らぬ美少女からの呼び掛けに淑女の皮が剥がれ驚きすぎて思考が停止する。


「おはようございます。姉様」


毎日聴いている声と言葉が目の前の美少女から聞こえ急激に動き出した思考が定まらず視線を数度上下に往復させていれば、


「僕です。ディランです」


とても不機嫌が表に出た声だったがそれよりも告げられた言葉に衝撃を受け足速に近寄り


「本当にディランなの?」


早口で告げ勢い良く頬を両手で包み込み顔を上げさまじまじとディランの顔を見ると、肌には白粉が塗られ目尻にはアイラインが引かれ唇には色が塗ってある。


誰がどの角度から見ても美少女。


間違いなく美少女。


じっくり余す事との無く見つめていれば


「姉様。ランドリー仕事後のハンドクリームを塗っていませんね」


目尻を上げ告げられるもただただ美少女が拗ね怒っている様に見える為、可愛らしく


「そうだったかしら?」


そんな事よりと適当に流そうとすると頬を触っていた手を掴まれ、


「フレディ、ハンドクリームを持ってきて」


力技で剥がされ手を掴まれたままソファへ座らされ、


「姉様。ランドリーは洗剤や水温が原因で手荒れをするので必ずハンドクリームは塗ってくださいとお願いしたはずです」


お忘れとは言わせませんよ。


いつものお叱りより強めの言葉に返す言葉が見つからず視線だけで抗議をするも、


「指が切れると痛いのだとランドリーメイド達に教えて貰ったばかりですよね?切れると洗濯水が染みて痛いのはお嫌ですよね?」


自分の事ではないのに真剣諭され頷くとフレディから手渡された物から人差し指で掬い取り、両手で擦り合わせ温め柔らかくし


「姉様。手を出してください」


言われるまま左手を差し出すと指の関節から隙間まで丁寧に塗ってくれ、


「もう片手も出してください」


同じく言われるまま右手を出し塗って貰い


「ありがとう」


少し自分の行動に反省し申し訳なくなりながら謝りではなく礼を言葉にすると、


「これぐらいは構いません。塗るのを忘れてしまわないよう明日から毎日、僕が塗ります」


よろしいですね。


にっこりと笑いながらもどこか圧を感じる笑みに頷くことしかできなかった。



第69話


独り立ち修行開始になりました。全自動洗濯機てありがたいですね。


ヒートテック始めました。無印さん暖かいです。


ブックマークに評価をいただき誠にありがとうございます。


ネタバレを含みますが短編に本編終盤の弟ディランの心境と日々を書いております。

よろしければお読みください。

https://ncode.syosetu.com/n4082hc/

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