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父親は頭を抱え込んだ



数分前までは、音が奏でられ

華やかに踊り、楽しげな笑い声や

食事やワインを楽しむ話し声が

あったが、そんな雰囲気はどこにも

無く、


一応にワインとグラスは置かれているが

誰1人手につけておらず、


「話を聞こうか」


重圧を感じる低い声と言葉に1人様のソファ

に座り、控える様にすぐ近くに立っている

人物に顔を向けると、


「自分の考えと意思で自分の所へ来る様に

仕組みました」


悪そびれは無い。


余裕を表す微笑みと飄々とした態度と言葉に

無意識に腹に手を当てた。


「ほう」


そんな自分など関係ないと言わんばかりに

楽しそうに微笑みながらの一言に、

痛みが走ったが、


「読み通り、こちらへ来てくれました。

予想外だったのはルカと廊下で鉢合わせた

事ですね」


声の主のすぐ後ろで控えている人物に

顔を向けると、小さく頷き


「自分も、会う、とは思いませんでした」


真っ直ぐに背を正し、乱れもない服装に

真剣な表情での返答に、


どう答えれば良いのか分からず、

反応ができずにいると


「隣に部屋で待機し、わざと物音を立て

部屋に来る様に仕向け、楽しく会話を

して、本まで借りる約束を取り付ける。

か」


手元にある紙に書かれた文字を目で追い

読み上げられる言葉に腹がズキりと痛みが

走った。


が、それどころではなく、


「来てくれるとは思っていたのですが、

自信はありませんでしたよ。本は

会話の1つとして話しました。

もとより他国を自分の足で歩き目で見て

住んでいる人物に話を聞き書き上げた本

は、大変興味深くありましたので」


大変ありがたい申し出でした。


幼子の様に笑った姿に集まった大人達は

重い息を吐き出す。


まさか御自ら会う事を目的として、

ディランの部屋に控え、居ないはずの

部屋から音がすれば、弟を溺愛している

エスメが様子を見に行くのは容易に

予想はできる。


まんまと殿下の策にハマりエスメは

部屋に向かった。


それは良いとは言えないが、

なんとか言い訳をつけ他国を納得させる

事もできる。


が、問題は


『 魔術があるから大丈夫 』


この言葉だ。


魔術を使っての攻撃及び捕縛は法律にて

禁止されている。


それは、貴族であっても平民であっても

等しく。


この言葉をエスメから引き出した殿下と

ルカ様に思うことはある。


だが、エスメ本人が告げた言葉。


責任は本人しかない。


威とも取れる言葉を、王家の目からの

報告書で知らされた時は、意識た飛び

そうになった。


勿論、親として我が子は威や脅迫の為に

魔術を使うとは微塵も思ってはいない。


エスメは誰かを喜ばし笑ってくれ楽しんで

くれる事が大好きな子。


それは自分も妻も分かっている。


王をはじめこの部屋にいる全員が理解して

くださっている。


ただ、他国にはどう受け取られるか?


威ととるか、


脅迫ととるか、


攻撃的だと受け取るか。


自国が有利になる捉え方をしてくるだろう。


それに対してどう対処するか。


考えれば考える程に良くない方向へ考えが

進み、胃のあたりがキリキリしだし

痛みに耐えていると


「レディの背に守られる。当人は不服の

様でしたが、働く者が来客をその身を呈して

守るのは褒められる行為ではありませんか」


流石、ルーズヴェルト家の者ですね。


いたく感動しました。と、舞台役者の様に

大袈裟に身振りをしながらの言葉に


声も出ない程に驚いていると、


「そうですな。立派であり褒められる行動

だな」


騎士団長の言葉に続き


「ええ。本当にそう思います」


魔術師長が賛同を示し、


「守る。と、相手を傷つけないように

遠回しに伝えた言葉に優しさを感じますね」


外交長の言葉に、先程までの胃痛が軽くなり

伺う様に隣に座る宰相様を伺うと、

視線が合ったのち、


「息子も不本意ですがそれは自分の力不足

と受け取って取らせてもらおう」


重々しい息と共にこぼされた言葉に

安堵の息を体の中に落とし、胃の辺りを

ゆっくりと摩っていると


「守る意思表示ならば、問題は無い」


王の一言に全身の力が抜けそうになるも

だらしのない姿を見せる訳にはいかず、

背筋を伸ばし、ルカ様を盗み見るが

表情は先程と変わっておらず、


真剣な表情のまま殿下のそばで

控えている。


紳士として守られるという行動は

納得はいかないかもしれないが、


どうか


どうか


娘の為に飲み込んで欲しい。


祈り、願っていると


「精進いたします」


ルカ様の言葉に


「ええ。そうしなさい」


父親である宰相様の言葉と


「僕も付き合うよ」


殿下の言葉にルカ様は頷いてくれた。



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