表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

678/752

親友の心配と不安


「楽しい時間だったね」


馬の歩く音に馬車が揺れ軋む音

車輪が回る音、


窓と見ればいつもなら歩く人々に

子供達や大人達の話声が聞こえてくるが

窓に視線を移しても、暗闇を照らす街灯

の光が見えるだけで、営みの声は無く、

街が寝静まっている。


正面に座り先程の事を思い出しての

言葉に、


「ええ。本当に」


同じ気持ちだと頷と共に返事を返すと


「料理も美味しく、楽しい経験もできた

上に、ぜひ読みたいと思っていた本を

読める事になるなんて思っても

いなかったよ」


愛おしそうに指先で本の題名をなぞり

少年の様に嬉しそうに笑う姿に

幼き頃に見た姿と重なり


「ええ。最近食べ慣れてた料理も

違う味で、とても美味しく見た目も綺麗。

素敵なもてなしをいただきましたわ」


お互い心から楽しめたのだと、言葉に

すると、


「変わりがないようで安心したよ」


ポッリとこぼされた言葉に思い当たる

人物を浮かべ


「綺麗になったと思ったのですが、

そう見えませんでした?」


初めて出会った時から数年。


子供から大人へと成長をした人物の

感想に、少しのからかいを入れ尋ねると


「綺麗になり淑女の品格も出てきていた」


困った様に眉を下げつつも、言葉には

愛おしいのだと言う感情が混じっており


「ええ、そうでしょう。領で習い習得を

しているとはいえ、聞くだけに止まらず

におりますもの」


自分の事ではないことは重々承知して

いるが胸を張り誇らしげに返事を返すと


「先生も良いからね」


不意に返ってきた褒め言葉に、はつりと

瞬きをした後、じんわりと頬に熱くなり

嬉しさと恥ずかしさが心を満たしてゆくも


「ええ、とても教え甲斐のある生徒ですわ」


たとえ婚約者で幼き事から互いを

知っているとは言え、感情をそのまま

見せるのは恥ずかしく、褒めてくれた

事へお礼を言えないまま、返事を返して

しまい、心の中で後悔と反省をしていると


「本当に優しくて、本の事も快く提案

してくれ、熱心に本の事を話してくれた」


瞼を閉じ、忘れない様にと言葉にした

音を聞き返事をせずにいると、


「少し、気になる会話はあったが、

守る対象がいた為の発言で、実行は

無かった」


柔らかく優しい声から一変し固い声で

紡がれた言葉に、


「詳しくは分かりませんが、気遣いで

あり、守ると前提とした言葉だと

受け取りました」


のちに目から見た報告書が自分の所へ

やってくる。


そこを見ないと詳しくは分からないが、

直に聞いた殿下とルーク様の聞き取りが

行われ、大人達が話し合い判断を下す。


親友の立場の危うさを改めて実感し

閉じた扇子で口を隠し、重い息を吐き出す。


毎日会っている自分が知らない所で

判断され対応される。


最悪の場合、学園が始まっても会えない

その存在すら、無い事にされるかもしれない


浮かんが事を振り払う様に瞼を閉じ


己の幼さと立場、無力さに体の奥底に

重い息を落とす。


高位貴族、殿下の婚約者、様々な立場で

いるが、大人達の前では無力で


自分の願いすら叶えら無い。


思い出すは楽しそうに笑い、淑女に様に

微笑み、慈愛を込め微笑み抱きしめてくれた


誰より大好きで敬愛し、


立場ではなく自分を見て見てくれる。


どうか。


どうか。


願うしかできない無力の自分が惨めで

震える体に腹の奥から力を入れていると


「大丈夫だよ」


気づかぬ内に横に座り、労る様に

抱きしめてくれ、


「僕、ルカだって同じ気持ちだ。

聞き取りは目の報告もあるから

誤魔化しは効かない」


耳元で告げられた言葉に小さく頷くと


「時期国王として教育されてきたんだ。

僕を信じて」


その言葉に頷き返し、


良い方と自分はこれから生きて行くのだと


嬉しさと心強さに震えていた体は止まり

寄り添うようにそっと背中に手を回した



予約投稿の日にちを間違えておりました。

申し訳ありませんでした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ