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姉、熱弁する


「オススメはあるかい?」


その言葉に本屋の店主さんが書く

冒険記の全てディランの部屋に運び

熱量を持って紹介をした。


ハードカバーで厚手のある本を数冊

まとめて両手で持って運んでいると、

青年2人がソファから立ち上がり、

体に触れる事なく手から本を抜かれ、


最終的には廊下で会った青年が

自分の部屋の前でドアを開けて

待機してくれ、ディランの部屋まで

運んでくれ、


少し早口になってしまったけれど、数冊の

本のお勧めの国に風習など自分が興味を

引いた箇所に個人的感想をつけると

どうしても言葉を減らす事ができず、


なるべく独りよがりの語りにならない様に

気を付けつつ全ての本を紹介終えると


「どれも興味深いな」


「ええ。本当に」


微笑みながら聞いてくれていた青年と

眉ひとつ動かさずに真面目な表情で聞いて

くれた青年の言葉に、


わかる。


心の中で深く深く頷き、2人の青年が

ローテーブルに並べられたハードカバーの

本を手に取り軽くページを捲る。


なんとも絵になる姿に、


ディランのお友達は多種多様のかっこいい

子達なのね。


いくら淑女マナーを受け貴族としての品格と

振る舞いに気を配っていても、


これだけかっこいい子達が同級生なら

楽しいでしょうねぇ。


恋心でなくても、見ているだけで楽しい

だろうし、挨拶をした日には1日ご機嫌で

過ごせそう。


青年達のクラスにいる女性生徒を思いつつ


ディランも目の前にいる青年とは違う格好良さ

に加え可愛さもあるのよ。


クラスに乗り込み声を大にして言いたいが、

そんな事ができる訳もなく、


真剣に本を選んでいる青年達見守りつつも


「読み終えたら、借りに来てくれればいいわ」


真剣に悩んでくれる2人の気持ちが嬉しい。

何よりせっかくならば全部読んで欲しい。


できたらこの本の面白さを語り合いたい。


そう思ったけれど、ディランのご学友ならば

貴族で自分は平民。


こうして話しているのだって本来ならば

起こり得ない出来事で、


ごめんディラン。本当にごめんね。


熱が引き冷静になれば自分がどんな事を

しているかが客観的に見れ、


表情は淑女の微笑みを保ちつつ、心の中で

ひたすらディランに向かって謝り続けつつ


でも、この本の読者を1人でも増やしたい、

店主さんの凄さを分かってもらいたいの。


本の持ち主である自分の言葉に、2人の青年は

顔を見合わせたのち


「ありがたい提案だね。そうさせて貰おうか」


ディランの部屋にいた青年の言葉に


「心遣い感謝します」


廊下で会った青年が頷いたのち、自分に向けて

感謝の言葉をくれた。


貴族の事は詳しくは知らないけど、

クラスメイトから聞く職場にいる貴族のあれこれ

とはかけ離れた言葉に、心の中で苦笑いしつつ


どういたしまして。


そう返すのもいかがなものかと思い、


「お気になさらず」


そう返事を返した。


そこからは並べた本の話をしつつ、


「ディランとは同じクラスで生徒会も一緒なんだ」


話を中心に進めるのはディランの部屋にいた青年


相槌を打ちつつ時折補足を入れてくれるのは

廊下で会った青年。


学園内のディランの様子を教えてくれるのを

興味深く聞きつつ、2人の様子を見ていると、


「そうそう。父が君と話したと聞いたよ」


思い出したと言わんばかりの言葉に、

首を傾げ、失礼にならなよう気を付けつつ

青年を見つめる。


父というならばお父様と同じ歳の方のはず。


社交時期が始まってからは屋敷から出る事も

なく過ごしている。


その中で会う人と言えば、ディランを含め

お父様お母様にフレディやマルチダといった

働いてくれている人達。


それ以外の人と、記憶を辿っていくと


「あ」


先日の晩餐会の日の廊下での出来事に

行きつき、言葉を紡ごうとするも


「大変、有意義な話をしたと聞いたよ。

相手をしてくれてありがとう」


先手でお礼を伝えられ


「いえ、こちらこそ楽しい時間を

いただきました」


すっかり忘れていた事に申し訳なさを

感じつつ、楽しかった事を伝えると


「ならば良かった」


優雅な微笑みと頷きと共に返ってきた

言葉に淑女の微笑みで返すのがやっとで


知っているだけと体験するの違いに

戸惑いつつも、ミランダやアメリアの

真似をして返していると


「そろそろ」


静かに会話を聞いていた青年の言葉に


「もうそんな時間か」


名残惜しそうにこぼしたのち、それぞれに

本を一冊手に取り、


「楽しい時間をありがとう」


その言葉ののち立ち上がったので、少し

遅れ立ち上がり、部屋を出る2人と共に

ディランの部屋から出て、自室の扉前で

別れる際


「音がしたからと言って1人で部屋から

出るのは不用心です。今後は気を

つけてください」


廊下で会った青年の言葉に


「ありがとう。次から気をつけます」


返事を返し


「おやすみなさい」


そう別れの挨拶をして扉を開け部屋に入った。



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