姉、対話をする
「忘れられていたらどうしようかと
思ったよ」
挨拶のみしてディランとの約束もある
ので早々に立ち去ろうとしたが、
「君に聞きたい事があるんだ。
部屋を借りたい」
その言葉でマルチダが素早く開いている
部屋に案内し、ならば紅茶にティーフード
をとキッチンに戻ろうとしたが、やんわり
と断られたので、互いにソファに座りる。
扉は少し開けられており、密室ではないし
壁側にはマルチダが待機してくれている。
2人きりではないものの不安がありつつも
上座の正面に座っている人物の言葉に
淑女の微笑みのみで返事をすると、
「今日の晩餐で出た食事は本当に
美味しくて、実を言うと楽しみにして
いたんだ」
自分の反応を理解しつつも話を進めて
ていく人物に
「ありがとうございます」
返事を返しつつ失礼にならない様に
気を付けつつ観察をする。
お父様より頭ひとつ分身長が高くて
細身に見えるけれどしっかりと筋肉が
ついている様で、礼服を隙もなく
着こなしている。
穏やかで優しい表情と雰囲気。
幼い頃は分からなかったが、お父様の
親友ならば高位貴族。
どう接して良いのか迷いつつも、
ミランダとアメリアから習った作法と
言葉使いで対応をしているが、
正解が分からない以上不安はあるが
今自分ができる事を行うしかなく、
「今日のじゃが芋料理も美味しかった。
レシピをいただけるそうなので、
早々にクック長に作らせるよ」
目元の皺を深くし微笑む姿に嘘では
ない事が分かり、
「口に合ったようで何よりです」
話が進むに連れ目の前の人物は自分の
存在と今日の事を知っているのだと知り
「皆が料理を褒める度にライアンが
嬉しそうに笑っていてな」
晩餐会中に出た会話の一部だと分かる
言葉に嬉しく思いつつも、微笑んで
いると、
「なんでも粉砕した魔法石を再利用
しようと考えていると聞いたが、
本当かね?」
突然の言葉に内心驚いたものの、
「はい。まだ思案中ですが何か
できないかと考えております」
晩餐中にお父様が話題に出したの
だろうと現状を正直に伝えると、
「そうか。進行したら是非とも
教えてくれ」
「かしこまりました」
了承の返事をすると、頷きが
返ってきた。
その後は晩餐に出た料理の話が
中心になりつつも生活魔法道具を
どのようにして思いついたのか、
どうやって設計したのかなど、
自室の戻り入浴を終えベットに
入って思い出した時に聞かれた
事を思い出し、
「気づかなかったわ」
質問の流れた自然すぎて、
何も考えずに全てを話してしまい
どうしようと不安になるも
「言葉にして出したものは返ってこない
んだもの悩んでも仕方ないわ。
何かあっても良いようにディランと
お母様とお父様に明日知らせよう」
会話した内容を知っていれば、対処の
仕方も変わってくる。
眠りに誘われている頭の中でそう
考えて自然と落ちてくる瞼に身を任せ
眠りについた。




