姉、提案をする
魔力の色
ディランからの言葉に正直に
返事を返した。
が、思い出すと見えていたはずの
色がいつからか見えなくなっていた。
食後の紅茶の後はディランとルイは
裏庭で剣の練習を騎士団長とする
というので、そのまま着いて行き
少し離れば場所でフレディと共に
騎士団長に向かって行っては流され
かわされ、打ち込まれ膝をつく。
ディランだけではなくルイにも
同様の動きを眺めつつ
幼い時の記憶を引っ張り出し
思い出してゆく。
王都の屋敷に居た時も、領へ行く
道中も見えていた。
道中の賊に襲われた時も騎士団長の
土魔法の茶色にフレディの水魔法の
水色は見えていた。
領に到着してからも見えて、いた?
どうだっただろう?
痛みもあったがディランとフレディ
そして道中の責任者でもある騎士団長
に心配をかけさせたくなくて、気を
つけていた記憶が鮮明にあり、
色の事への記憶が残っていない。
領には沢山の楽しい事や面白い事が
ありそちらに意識をしていたから
気に留めずに過ごし、
見方を忘れてしまった。
のかもしれない。
そう、答えに辿り着き意識を集中させ
魔力を見ようとするも、
「見えないなぁ」
ディランもルイも見えていたはずの
騎士団長の魔力の色も見えず、
朧げな記憶にある茶色を思い出し
騎士団長を見つめる。
が、何分だっても魔力の色は見えず
勘違いだったのかしら?
首を傾げつつもディランとルイから
視線を外さずにいると、
ふっと思い付き
「フレディ」
隣に居る人物の名前を呼ぶと
「駄目だ」
返ってきた言葉に慌て顔を向けると
「魔術を発動させて見せてくれ。と、
言いたいのだろうが、断る」
今まさに自分が思い付き提案と
お願いをしようとした言葉と返事に
言葉を紡げないでいると、
「今、魔術を発動させればディラン様の
剣の稽古は中断させ、真っ先にこちらへ
駆けつけてくる。それに、身の危険も
ないこの場所で魔術の発動はできない」
主であるディランへの考えを変えない
理由と強い声での言葉に頷く以外の返事
はできず、
「わかったわ」
納得はできなけれど、ディランやルイに
騎士団長の練習を止める訳にはいかず
部屋で魔法石に魔力を入れるのを
鏡に写しながら試してみよう。
別の案が浮かんだので試す事を決め
土を体につけながら騎士団長へ
向かって行くディランとルイの
姿を眺めることにした。
ディランとルイの少し悔しそうな表情の
まま剣の練習は終わり、汗と土を流す
というので自室に戻る前にマルチダ
と合流し部屋に入るとそのまま本棚に
ある箱を手に取りドレッサーの椅子
に腰掛る。
マルチダの視線に気づきつつも、
手早く箱を開け目についた透明の
魔法石を手に取り、
水の魔力を入れ込む。
無事に入った様で、水色の輝きへ
変化した魔法石を見つめたのち、
新しい石を手に持ち、
顔を鏡に向け、自分の手元を確認し
土の魔力を溜めてゆく。
しっかりと手元を見るも土の魔力を
示す茶色は見えず、
もう少し強めてみよう。
こめる魔力を強めると、耐えきれ
なかった様で魔法石が手の中で
割れてしまった。
粉々になってしまった魔法石を
どうするべきかと考えていると、
「エスメ様、こちらへ」
差し出された紙に上に手を広げ
砕け粉々になった魔法石を紙へ
落とすと、
「手洗い用の水をとってまいります」
そのまま動かないでください。
その言葉と共に入浴室へと歩き出した
マルチダに、申し訳なく思いつつ
あ、お礼を言い忘れたわ。
戻ってきたら言おう。
突然の事で感謝を示す言葉を伝え
なかった事に気づき、
おしぼりと水の入った桶を持って
きたマルチダに
「ありがとう」
感謝を伝えると、
「勿体無いお言葉」
普段と変わらない声と表情のまま
だったがいつもの事なので気にする事は
無く、綺麗になったのでもう一度
魔法石を手に取り魔力を溜めてった




