弟は安堵する
ルーク殿下を始め側近の方々と
淑女教育を終えたアメリア嬢と共に
馬車へ向かう。
授業が終わり数時間立っているので
生徒殆ど校内に居らず、静かな廊下を
歩いていると、どこからか女性の楽しげに
話す声と共に男性の笑い声も耳に届き
視線を向けると、
庭園に設置されている丸いテーブルに
1人の女子生徒と複数人男子生徒が談笑
しており、
男子生徒の話を女子生徒が喜怒哀楽と
表情を変え話を頷きつつ聞いている姿に
元気な時の姉様の様だな。
僕の話を真剣に聞き、様々な感情を乗せた
表情をし自分の考え伝えてくれる姉様との
会話は楽しくて心安らぐ時間である。
そういえばこの数日、姉様とゆっくり
できていないな。
ぼんやりと頭の片隅で考えていると、
「あら。話題の生徒ですわ」
アメリア嬢の言葉に瞬間、話題とは?
と思ったが、
「ああ、彼女が」
ルカ様の言葉に、話題と表現された噂話を
思い出し、そっと視線を向けると、
濃いピンク色の髪に少し日焼けはあるものの
生い立ちを考えれば納得もできた。
が、
「貴族籍に入ったと聞いたが」
ザッカリーの言葉に、視線を戻し正面を向くと
「まだまだ、勉強中だとご本人が申して
おりましたわ」
アメリア嬢の言葉に
「もう侯爵家に養子に入り1年以上のはずだが」
アーロ様の言葉は本来ならばもう少し続くが
言葉を切ったと言うことは
淑女教育はどうなっているんだ?
もしくは、
いつまで平民でいるつもりか?
だろう。
平民から貴族へとなるマリー嬢の成長を
アメリア嬢と姉様を通して聞いているので
その言葉は理解でき納得もできた。
「いけませんわ。人の成長の速さはそれぞれ
ですのよ」
アメリア嬢の言葉に、確かにと考え直し
自分の紳士としての器の足りなさに気づき
恥ずかしくなり、アメリア嬢に気づかせて
くれた事に感謝と謝罪をと顔を向けるも
「リアの言う通りだね。己を反省するよ」
ルーク殿下の言葉に皆が頷き同意すると
「あら、それはようございましたわ」
淑女の微笑みと共に自分が皆様の役に立て
何よりですとの言葉に、
次期王妃として教育を受け、幼い頃から
貴族社会やお茶会などで経験を積んだ
アメリア嬢の対応に
幼き淑女達が憧れ、社交界で薔薇だと
評価されている理由を実感し、
姉様は良き友がいる事に嬉しく思い
ながら歩いていると校舎から出て、
自分達の馬車と従者の姿が見えた。
フレディだけ?
馬車と共に視界に入れたフレディの横に
いるはずのルイが居らず、心の中で首を
傾げると
「アイツ、今日は居ないな」
ザッカリーの言葉に
「どうしたんだろう?」
感情そのままに言葉に出すと
「ご一緒した時は、お元気そうに見えた
のですが?」
アメリア嬢の言葉に、体調を崩したのかと
考え付きかけ出したい気持ちを抑え
「教えていただきありがとうございます。
後程、確認をします」
アメリア嬢へ心遣いの言葉に感謝を伝え
なんとか平常心を装うが、
「ディラン、今日はありがとう。
来週もよろしく頼むよ」
ルーク殿下の言葉に自分の感情を悟られて
いると知り、
失態だった。
あの女生徒のことを言う資格はないな。
反省をしつつ
「はい。お力になれる様に整えてまいります」
ルーク殿下のお心遣いに感謝と敬意を表し
「ディラン様もしっかり休んでくださいね」
アメリア嬢の優しさに
「お心遣いありがとうございます」
ルーク殿下同様に感謝と敬意し表し胸に
手を当て家臣の礼をしたのち、顔を上げると
ルカ様を始め皆に、馬車へ向かう様に
視線で促され、
「失礼いたします」
その場を離れることを告げた後、馬車へと
向かい
フレディ
口の動きだけで名前を呼ぶと、
「お帰りなさいませ。何やら話合う事があると
中でお待ちです」
従者の礼と後、顔を上げたと共に告げられた
言葉に、頷き返すと
「お顔色は戻っており、お元気になられた
ご様子」
普段より早口であったが自分の欲しい情報が
的確に伝えられ、馬車の扉が開きステップを
上がり馬車の中へ入れば、
「ディラン。お帰りなさい」
いつもの姉様の声と笑顔で出迎えられ
「よう」
いつものルイの声と態度の声掛けに、
体の力が抜けるのを感じつつ、態度に出ない
様に慎重に椅子に座ると、その横にフレディ
が腰を下ろすと
「ディラン。今日は我儘を聞いてくれて
本当にありがとう」
僕と視線を合わせた後、笑っていた表情を
真剣な表情に変え、告げられた言葉に
「お元気なられたのならば、何よりです」
いつもの元気な姉様になったようで安心し
たが生徒会室の対話の中で尋ねなければ
ならない話もあり、心から喜べないでいると
姉様の自分の心を悟られたのか
「本当にごめんなさい」
眉を下げ、こぼされた言葉に心が痛みつつも
「できれば今回限りにしてくださいね」
次期当主として注意をすると
「はい」
素直に頷いてくれ安堵する気持ちと、
次回も同じ事をするのだろうと予想する
気持ちをありつつ、
「反省をしているのなら良いのです」
この話は終わりだと切り出すと、
「少し、話したい事がある」
ルイの言葉に表情を引き締め頷いた。
体調を崩しており新規が遅れてしまい申し訳ございませんでした。
回復に向かっており、今まで通りに新規ができると思います。
また、お時間の良い時にお付き合いいただけると嬉しいです。




