弟は思考に囚われる
物心がついてきた頃から
自分が姉様を守るのだと。
心の中心にあった。
貴族のマナーに教育。
国境の境目を領地をして収める為の
知識を武力
姉様の行動の監視
各所への報告書の提出。
全ては姉様が平穏に暮らす為。
領に居るまでは問題なく過ごせてきた。
これからも姉様が思い付いた事で
振り回されながらも、笑ってくれる姉様
を見守る日々だ続くのだと思っていた。
こんな事になるとは。
生徒会で出した結論に何も思わない訳は
ない。
不安と先が分からない恐怖
姉様が手の届かない場所へ行ってしまう
のではないか。
会えなくなってしまうのでは無いか。
冷静になろうと、努力してみるも
一時的に落ち着くだけで、気を抜くと
不安と恐怖が心を支配し出し、想像も
したくない出来事が頭をよぎり出す。
予習をしているとはいえ、高位貴族ばかりの
クラスに所属している以上は、自分の成績を
落とす訳にはいかず、
はんば意地で教授の話を聞き取りノートに
書き写して全ての講義の時間を終わらせ
再び生徒会室へ集まり、
「少し休憩を取ろう」
ルーク殿下の言葉に動かしていた手を止め
紅茶を淹れるために席をたった。
それぞれの好みの淹れ方で紅茶を準備し
ているとルカ様が近くに立っており
「手伝おう」
その言葉と同時に火の魔法石が埋め込まれた
ポットを撫ぜ魔術を発動させた。
「ありがとうございます」
お礼を伝え、茶葉の準備とそれぞれが
使用するカップとソーサの準備を整え
お湯が沸いたポットからカップに注がれる
のをぼんやりと見ていると、
「ディラン」
名前を呼ばれ、失礼があったのかと
慌て顔を上げれば、
「君が思い悩むのも分かるし理解をしている
つもりだ。だが、何も分からない内から
不安に思う必要は無い」
小さいながらもはっきりと告げられた言葉に
返事ができずにいると
「皆、ディラン程では無いが心配し心を
痛めて、少しでも対策し平穏に解決が
できる様に働きかける心つもりでいる」
ぎこちない手付きで頭を撫ぜてくださり、
驚きで動けずにいると、ルカ様が手早く
紅茶を淹れ、ルーク殿下の元へ紅茶を
届けにいく背中をぼんやり見ていると、
「ディラン、貰ってくぞ」
ザッカリーの声に我に返り、
「すみません。すぐにお持ちします」
トレーに手を伸ばしたもののザッカリーの
手が早く、何も持つことができず後をついて
いく。
ただそれも邪魔になるようで、
「ディラン、ザッカリー様にお任せしましょう」
アーロ様のお言葉と、
「殿下がアメリア嬢からいただいたティーフード
を分けてくださるそうだ」
レジー様の言葉で先程まで座っていた席に
座る様に促され、申し訳なく思いつつ腰を
下すと、
「いつも美味しい紅茶を淹れてくれて
ありがとう」
ルーク殿下の言葉に
「身に余るお言葉、ありがとうございます」
立ち上がろうとするもルーク殿下に手で制され
座ったままお礼を返すと、
「仕事も終えたし、リアが来るまでゆっくり
過ごそうか」
ルーク殿下のお言葉で簡易的なティータイムが
始まった




