弟は心有らずになる
朝食時にお会いした姉様は顔色が悪く
それを隠すように化粧が施されていたが
もっと隠すことができが、あれはマルチからの
学園を休む説得をして欲しい。
と、言うサインだった。
だが、姉様の必死な姿に頷くこと以外ができす、
フレディからは困った様に微笑まれ、
マルチダからは表情は読み取れなかったが
姉様にとことん甘いと判断されたか、
それとも、自分の意図が読めないと判断されたか
どちらにしても、自分が重きを置くのは姉様で
マルチダではない。
良く支えてくれているのも知っているし、
姉様が信頼しているのも知っている。
だが、マルチダの立ち位置を知っている僕と
しては信用はしているが信頼は難しい。
王命とは言え支えてくれているのだから
感謝もしている。
姉様の願いを叶えて甘やかしたい僕では
できない、注意や静止ができるマルチダには
感謝をしている。
ぐるぐると回るマルチダへの申し訳なさを
誤魔化す様に心の中で言い訳をしつつ、
午前中の教授の講義を受け、昼食をいただき
つつ、
心を締めるのは姉様の体調の事で、
「ディランは心あらずだね」
少し離れた席に座るルーク殿下の言葉に
慌て顔を上げれば、同じテーブルに座る
全員から視線を向けられており、
「申し訳ありません」
慌て謝罪の言葉にすると、
ルカ様が顎に手を当て何か考え事を
したのち
「体調が芳しくないのですか?」
人名も誰かを指す言葉も無いが、
姉様の事を尋ねられているのだと分かり
「はい」
頷き返すと
「それは、心配だねぇ」
アーロ様の言葉に頷きだけで返事を返し
「この数日の匂いと関係があるのか?」
姉様の行動を王家の密偵である目からの
報告書で知っているザッカリーの言葉に
「原因はわかりません」
返事を返す。
姉様はこの数日、濃厚で甘い匂いについて
度々言葉にしている。
だが、護衛のルイも親友のマリー嬢も匂い
については首を振り否定をしている。
淑女教育で姉様に会うアメリア嬢も
「その様な匂いはありませんわ」
目からの書類に書かれた初日に否定しており
姉様のみ匂っている濃くて甘い匂いを
殿下や側近の方々、強いては両親達も
気に掛け警戒をしている。
何も起こらなければ良い。
起こっても姉様が巻き込まなければ良い。
そう思っている僕も中々酷い人間で
貴族としての考えに反していると理解はしている。
が、下位の男性生徒の行動を見ていると
そう思っても仕方ないのかも知れない。
下位貴族の男性生徒の半分以上が1人の女性生徒に
心を奪われており、婚約者を蔑ろにしている者も
いる。
諌め、注意した婚約者を遠ざけ、疎遠にしてまで
のめり込む女性生徒も去年話題の中心におり
平民から貴族世界へ入った女性。
度々ある話ではあるが、自分達の年代では初めての
出来事に皆が大きく関心を寄せたのは事実。
アメリア嬢も貴族社会や社交界で上手く馴染める
様にを直接では無いが、気遣いをしていたのを
見ている。
そして今、アメリア嬢はその女性生徒が原因で
婚約者と上手く関係が作れなくなった女性生徒の
話を聞いたり慰め時に対策を考えたりと、
昼食の時間を使い行っている。
それだけでは人数が対応できず、お茶会も定期的に
開き、気持ちを聞き寄り添っている。
その為、殿下と過ごす時間が少なくなっているが、
「僕はアメリアの優しさを好ましく思っているんだ」
申し訳なさそうにするアメリア嬢を励ます言葉では
あったが聞いていたこちらは惚気られたのだと瞬時に
判断だでき
それだか気心が知れ仲の良い事なのだと理解できた。
男女の関係については未体験な為、良く分からないが
両親や祖父母の様な関係になれれば良いと持っており
この中で婚約者のいない僕とザッカリーには
殿下とアメリア嬢の関係がどこかむず痒さもあり
つつも羨ましくあるが、
僕の婚約者は中々難しいだろう。
辺境である事
生活魔法道具に紙刺繍の工房が大きな収入源となり
管理者はそれぞれにいるが、いずれば纏める立場と
なる。
何より、姉様の存在を否定せず受け入れてくれる事
が何よりも需要である事。
居なければ、ルイが結婚し子ができた際に養子の
話をして受け入れてくれるのを願うしかないが、
僕の代で公爵から伯爵へと変わる。
ルイに爵位を譲っても良いかも知れない。
「ディラン」
考えに没頭していた様で、慌て名前を呼んだ
人物に顔を向けるとルーク殿下が微笑んでおり
「思う事も大切だけど、困っている様ならば
相談に乗るよ」
その言葉に優しく友を気遣ってくれお心と
共に、詳しく説明する様にと命も含まれており
「ありがとうございます。ですが言葉にするのも
憚れます」
離れているとは言えクラスメイトや下位の生徒も
いる場所で姉様の話をする事はできないので
場所移動をお願いすると
「では、生徒会室で聞こうか」
ルーク殿下の一言で側近の全員が頷き
食事を摂っていた席を立ち上がった。




