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姉、申し訳なく思う


動き出そうと体を動かしたその時、


「エスメさん!」


強い力が体の中を突き抜ける感覚の後、

耳元で聞こえた大きな声に意識を向けると、


「えっと」


マリーに抱きしめられており


「どうしたの?」


戸惑う中、現状がわからず尋ねると、


「急に足を止めて下を向いたかと思うと、

いきなり顔を上げ、何処かに向かって

走り出そうとしたのを覚えてないのか?」


眉を上げ、眉間に皺を寄せた警戒心を強めた

ルイの視線と表情に、ゆるりと首を振り


「覚えて無いわ。何か考えていたのは覚えている

けれど」


意識の無い状態の自分の動きに不安を感じつつ

思い出そうとしても一向に思い出せずにいると

力強く抱きしめてくれる腕は震えており、



「マリー。もう、大丈夫よ」


不安を取り除ける様にマリーに声をかけ、

背中をゆっくりと撫ぜれば、ゆっくりと離れ、


「本当に大丈夫ですか?」


潤んだ目で下から見上げられ、幼子の様に

見えるマリーに、


「本当に大丈夫。心配をかけてごめんなさいね」


手を伸ばし整えられている桜色の髪を撫ぜ、


「そろそろ講義の時間ね」


何か言いたげなルイとマリーに微笑み、

歩き出すと、2人も横に並ぶ様に歩き出した。


教室に戻り昼食と共に休憩を終えた

クラスメイトに軽く挨拶を交わしつつ自分の

席に戻り、講義の準備を進める中、


「エスメ」


小さな声で名前を呼ばれ顔を上げると

クラスメイトから自分を隠す様にルイが

立っており、


「何があったか分かるか?」


差し出されたノートに視線を向けつつ


返答をと思いノートとルイを見る様にして

近くに居るマリーやボーイックに

気付かれない様に注意しつつ視線を向けると

2人共クラスメイトと会話しており、


「分からないけれど、マリーに抱きしめて

貰った時、中にある何かが弾けた感覚が

あったわ」


差し出されたノートの礼を伝える様に

嬉しそうに微笑みつつ、感じたままを

伝えると


「光の魔術を発動させたと考えて良いな」


差し出したノートを開き指を刺しながらの

言葉に、表情を変えないように気をつけつつ


「マリーに申し訳ない事をしたわ」


ルイの返答に瞬きをする事で頷きを表現し

先程まで重く、聞こえる声は厚い布が

かかっている様にぼんやりと聞こえて

いたが、


今は体も軽く、聞こえてくる声はハッキリと

聞こえている。


多分、朝から悪かった顔色の良くなったの

だろう。


治癒に特化した光の魔術。


意図して発動させたのか、


それとも無意識の中で発動させてしまったのか。


どちらか分からないが、マリーのお陰で

体調が戻った事は確かで、


お礼を言いたいけれど、

マリーは否定しそうだし。


「不調の心当たりはあるのか?」


考えに沈んで行きかけたがルイの言葉に

ノートを見て考えるフリをし思い出す。


昨日の馬車に乗ってから寝ていたが、

あれはホッとしたのと暖かかったのが原因

だろうし。


他にと言われるとこの数日、自分しか

匂わなかった香水の濃厚な甘い匂い。


「匂いかしら?」


ノートから視線を外しルイと視線を

合わせ返答をすると、同意見だと

瞬きで返事を返してくれ、


だからといって匂いをつけているかも

しれない女性生徒が原因だと決めるの

は間違いで、


「防ぎ用が無いわ」


問題が書かれている箇所を指差し

解釈の誘導を行いつつ、返事を返すと


「そうだな」


ルイの短い返事の後、ノートが閉じられ

会話の終了の合図が入り、


「気をつける以外ないよな」


互いの行動方針が決まり、ルイが後ろに

ある自分の席に座るのをみくると、

教授が教室に時間となり、皆が慌て着席を

する姿を横目に眺め


午後からの講義をしっかり受けるように

気合いを入れた。



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