姉、目が覚める
「悪役から正義にまわって成敗
スッキリするよ」
娘の言葉に引っ掛かりつつも、
まだ小学生を卒業したばかりの
子供の言葉だと考え直し、
ピリ辛な麻婆豆腐をレンゲで掬い一口
食べ、娘の話に耳を傾け続ける。
少し背伸びをし大人に憧れを持つ年頃
自分の子供の頃とは比較もできない程に
世の中や文明機器の発達もあり
学生である子供がそんな事をするの!?
と驚く様な事件も時折聞こえてくる。
その都度、どうして罪になったのか。
を説明をするが、
数え切れない程の情報が手にある
スマホから止める事なく入ってくる。
規制するよりニュースを見て解説して
理解をしてもらう方が身近に感じて
くれるのではと思っているが、
娘はお洒落にも少し興味はあるが
ネットにある小説に夢中な様で、
安心しつつも、心配もあるが
本人が楽しそうに話しているので
良い事なのだと思いつつ、
このこの事だから
小説を書いて載せたい!
とそのうち言い出すだろう。
その時に一緒にサイトマナーの勉強を
すれば良い。
息子も読むことは読むが、話題の話
のみで、ゲームが1番楽しいらしく
幼い頃から出ているゲームを今も
プレイしている様で、何度も同じ題名の
ゲームの話を聞く。
こちらはまもなく10年程のお付き合いの
ゲームで内容も知っているので心配は
していない。
が、宝石の名前になった頃からモンスター
の名前が覚えられなくなってきて、
自分の為に攻略本を買い続けているのが
息子には寛容に受け入れられ、時折
攻略本を見ながら説明を受ける事もある。
親子関係は良好だと思うも誰かと比べた
事が無いので自己判断になるが、
食事終わると、各自食器を台所まで持って
行ってくれ、そこから子供達はリビングに
居続けるので、
兄妹関係も良い方なのだろう。
自分がひとりっ子だったから、この関係が
羨ましくて、
弟か妹がいたらうんと甘やかすのになぁ。
軽く言い合いしながらも互いに離れないので
微笑ましく聴きつつ、明日のお弁当の下拵え
をしていると、
「お母さん」
娘の声に少し振り向いてどうしたのかと
尋ねると
「私も小説を書いてみたいの」
思っていた事を言い出したので、
「構わないわよ。ただ、書くからには
その時代の事も調べて額と良いかもね」
考えていた返事を返せば
「そうね。中世のヨーロッパで悪役令嬢の話」
どうらや大まかな話の流れはできている様で、
歌う様に話す娘に、
「もっと人物像を深く考えた方が良いって」
息子の言葉が挟まれ、
「もう! 黙っててよ」
止められた事と自分の考えに意見を言われた
事に怒りを見せたが、
「お兄ちゃんの意見も一理あると思うわ。
もう少ししっかり作ると、書きやすくなると
思うわよ」
何が好き、何が嫌い、何が得意、何が苦手
どんな性格なのか、その人との関係性は?
「こう考えると身近に感じない?」
野菜を切りならが思いつくままに話すと、
「確かに。ありがとうお母さん」
嬉しそうに笑いスマホを片手にリビングの
ソファへと戻ってい行った。
悪役令嬢ねぇ。
ヒロインから見れば悪役に作られるが
心を揺さぶられるヒーローに物申したい。
が、ゲームの事に理を言うのは違うと
思うし、
見方を変えれば、悪役令嬢側から見れば
ヒロインは悪役に違いない。
誰も悪くない話というのは難しいし
生きている世に存在しない。
難しいわねぇ。
細切りにした人参と牛蒡をレンジに入れ
時間をセットしつつため息を落とす。
娘の書く話は悪役令嬢が活躍する話だった。
頑張りを認めてくれ、困っていれば互いに
支え合い、努力を認め、自分だけを愛してくれる
ヒーローが相手だった。
娘の理想の異性なのだろう。
娘の最初の読者になれる嬉しさと喜びを
噛み締めつつ、終了をしたせるレンジの音に
驚き身を震わせ瞼を開けると
「エスメ様? お目覚めですか?」
マルチダの顔に声が聞こえ、
「私、寝てた?」
背中に当たる馴染みのある柔らかな感触に
ベットで横になっているのだと理解しつつも
尋ねると、
「はい。帰りの馬車の中からお休みになっていたと
ディラン様より聞いております」
「そう」
重く感じつ体を起こそうと体を動かすも
「もう深夜です。そのままでいてください」
マルチダに止められ、自分がそんなに寝ていた
事に驚きつつ
「お食事はいかがいたしましょう?」
尋ねられた言葉にゆるりと首を振り
「ありがとう。朝食をいただくから大丈夫よ。
マルチダも遅くまで付いててくれてありがとう」
深夜まで部屋で待機してくれた事へお礼を
伝え
「もう大丈夫だろ思うから、マルチダも部屋で
休んで」
このまま朝まで部屋で待機しそうなマルチダに
休んで欲しいと伝えると、
「かしこまりました。朝の身支度に伺います」
一礼をし部屋から出るのを見届け、眠気で
上手く働かない中、
幸せな夢だったわ。
朧げに浮かぶ子供達の顔も声も思い出せない
が楽しくて幸せに溢れていた事だを忘れない
様にし、落ちてくる瞼と思考に身を委ねた。




