姉、自分に首を傾げる
午後からの講義。
集中し教授の話を聞き取り黒板と共に
ノートに書き写していかなければならないのに
隣からの濃くて甘い匂いに意識がとられかけ
幾度となく深呼吸をし集中力を保とうとするも
匂いを吸えば吸う程に、意識が匂いに向け
られてしまい講義に集中するどころか、
匂いの事しか考えられなくなってくる。
「エスメ?」
名前を呼ばれた声に気付き慌て上の空だった
意識を取り戻し声のした方向へ振り向くと
心配そうなルイとマリーが立っており
「ご気分が悪いのですか?」
眉を下げ心配そうにかけてくれた声と共に
さらりと額を撫ぜられると
ぼんやりしていた意識と霞がかかっていた
視界が急に晴れ、数度瞬きをし改めて視界を
確認すると先ほどの霞も何も考えられなかった
意識も消え去っており
「ありがとう。大丈夫よ」
いつも通りに微笑み返事を返すと、
「そうですか?何かありましたら遠慮なく
言ってくださいね」
下がった眉はそのままだったけれど、
自分の意見を尊重してくれたマリーに対して
何か言いたげでではあるも口を一文字にした
ままのルイに、
改めて、なんでも無いのだと。
そう微笑みで返答し、淑女教育の為に教室を
出てアメリアの待つ部屋へと移動をする。
いつものようにたくさんの男性生徒に囲まれた
中心に女性生徒がおり、自分に視線を向けている
のに気付きつつも
気づかないふり
心の中で言い聞かせるように何度も呟き
なんでも無い様に振る舞い通り過ぎ、目的の
教室の扉の前に立ち、ルイが3回ノックをし
扉ごしに聞こえてきた声に
心の中で安堵の息を溢しつつ、
扉を開けてくれたルイを横目にマリーの後に
続き教室に入った。
すぐさま始まった淑女教育を見守りながら
午後の講義の事を頭の片隅で思い出す。
ぼんやりしたのは匂いがきっかけだと思う。
ただ、自分の集中力が保てず匂いのせいに
している可能性もある。
疲れているのかも、今日は早く寝よう。
心身の疲れを回復させるには睡眠も大切。
30分でも早くベットに入ろう。
そう決めると、ゆらめいていた心が落ち着き
真剣な表情のマリーとアメリアを見守りつつ
自分の知識も更新と蓄え、
その後は楽しいお茶会の時間。
いつもの様に他愛のない話で笑い合い、
美味しいスコーンに酸味の効いた苺のジャムに
たっぷりのクロテットクリーム。
香りの高く華やかな紅茶は渋みもなくほんのり
とした甘さがスコーンとクリームの味を引引き立て
何個でも食べれそう。
つい、手を伸ばしてしまいそうになるのを
淑女らしくないと抑えたものの
「気に入ってただけたのでしたら、
届けさせますわ」
アメリアの言葉にうっかり頷いてしまうと、
嬉しそうにはにかんでくれ、
「寮に届けることができないので、ルイはこちらを
お持ち帰りなさいな」
4個残っているスコーンをアメリアはルイに
持って帰るように伝えれば、
「お心遣い、ありがとうございます」
椅子から立ち上がり、腰を折り騎士の礼で感謝を
使えると、アメリアは満足そうに微笑み、
「マリーさんの教会にもお届けいたしますわ」
教会に居る子供達の分も届けてくれるとの事で
恐縮しつつマリーは座ったまま、少し頭を下げ
「お心遣い、ありがとうございます」
礼を伝えると、マリーの行動に目を細め
満足そうに微笑み、
「残さず食べていただきたですわ」
そのアメリアの言葉に沢山スコーンが届く事が
伝えられマリーが驚き大きく目を開けてしまった
のを
「マリーさん」
咎める様に名前を呼んだアメリアに
「すみません」
慌て自分の行動に謝罪した頃に時間となり
淑女教育は終わり、3人で教室を出た後、
校舎を出て門へ向かうマリーと別れた。




