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姉、散歩に行く


昼食の時に声をかける予定だった

ボーイックはどこかへ行ったまま

食堂にはこず、


「散歩に行ってくるわね」


気持ちを切り替え、甘い匂いを少しでも

減らす為に外へ行くと伝えると、


ルイがトレーを片手に立ち上がり


「ご一緒させてください」


マリーも言葉と同時にトレーを両手で持ち

席から立ち、


3人でトレーになった食器を返しつつ、

クックさん達にお礼を伝え、そのまま

食堂を後にし庭へと歩く。


この時間はまぜか3人とも無言で、

庭に出た瞬間、息を吐いたのち大きく吸い

込み


「今日も寒いわねぇ」


肺に入った空気の冷たさに身を震わせると

風の魔術を使い3人の周りを囲み

火の魔術と掛け合わせ暖かな空気を作り

歩き出す。


冬の庭は花々が咲いている事はないけれど、

なんだか開放感があり、また教室とは違う

視界と匂いやクラスメイトの声が聞こえない

静けさが、ざわめいていた心を落ち着かせて

くれる。


会話をする事はなくゆっくりと歩き、時折

歯や落ち葉が風に揺らされる音に耳を傾け

止る事なく歩くと、日々の間から人の影

らしきものが見え、好奇心に導かれ視線を

向けると、


「アイツ」


小さなルイの声で人影が誰だか分かり、

よく見ると、ボーイックに隠れて入るものの

女子生徒の制服の裾が見え、


どうしよう。


道を変えるべきなのだろうけど、一本道。


幸い散歩道の上ではなく、隠れるように

木々の間に居るので、気付かないふりを

すれば良い。


ルイとマリーに移動を促そうと口を開き

かけると、ボーイックが腰を曲げ顔を

下に向けると同時に細い指が頬に触れ

優しげに撫ぜる動きに


思わず声をあげそうになる慌て両手で

口を抑え、気持ちを落ち着かせようと

深呼吸をすると、


甘く濃密な匂いが口から鼻にお届き

思わず咽せそうになり、背中を丸めると


「エスメ、大丈夫か」


ルイが声を顰め心配し訪ねてくれたも

のの咳き込みを無理やり抑えている為に

声を出すことができず、頷きで返すと


「歩けますか?」


マリーがゆっくりと背中を摩ってくれ

気遣う言葉に、無理やり頷き足を動かした。


どこまでも追ってくる甘い匂いに

逃げるように無理やり足を動かし、

程良く離れた場所でようやく咳き込む

事ができ、咳と咳の合間に呼吸をして

整えるが、一層咳が激しくなる。


何度も咳き込み、喉が痛みを訴えて

くる頃ようやく咳がおさまり、乱れた

呼吸を整え


「急にごめんなさいね」


喋る事に喉に痛みが走るが、それよりも

伝えなければならない事を優先し、謝罪

をすると


「大丈夫です。気にしておりませんわ」


マリーがゆっくりと背中を労るように

撫ぜてくれ、


「喉、痛めたか。大丈夫か?」


ルイの言葉に


「ありがとう。大丈夫よ」


普段とは違う声だったが気にせずルイに

お礼を返すと、眉間に皺がより


「本当に大丈夫よ。少し匂いがキツくて

咳き込んでしまっただけだし」


慌て、咳き込んでしまった原因を伝えると

ルイとマリーは顔を見合わせた後、


「匂いですか?」


「何も匂わなかったぜ」


不思議そうに首を傾げるマリーと

さらに眉間に深い皺になり


「風の方向かしら?」


自分だけ感じた匂いに首を傾げつつ

呼吸も整ってきたの、


「そろそろ戻りましょうか」


教室へと促すと、ルイの大きな息を

落とす音とマリーの心配げに自分の様子を

伺う視線を笑顔で誤魔化し


教室へと歩き出した。


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