姉、幸せに浸る
学園から屋敷に戻り自室で着替えを済ませ、
ディランの部屋で紅茶を香りを楽しむも、
鼻の奥に残った甘い匂いが残っており、
紅茶の匂いを消してしまうのは流石に
どうかと思うわ。
重い息を体の中に落とし、気持ちを切り替え
る為に一口飲みカップをソーサに戻すと
「姉様、いかがなさいました?」
自分を気遣うディランの言葉に、
「今日、香水をつけている生徒が居てね。
その匂いがまだ鼻の奥に残っているみたいで」
困った様に眉を下げ、返事を返すと
ディランの眉間に皺がより
「それは、以前お聞きした隣の席の男子生徒
からですか?」
先程よりも固くなった声での質問に
「本人に尋ねていないから分からないけれど
多分、そうかと」
今日はボーイックと話す機会が無く、
香水のことを尋ねる事ができなかったので
あくまでも、曖昧に多分と言うをつけて
返答をすると
「そうですか」
少し重めの息と共にこぼした言葉に、
「まぁ、香水って鼻が慣れるとどれだけ匂いを
つけたのか判断しにくくなるし、大丈夫よ」
気にしないで。
その気持ちを込めて伝えると、
「あまり酷いようなら、注意をされても
良いかと思います」
ディランの中では何かが納得出来なかった
様で眉間の皺が先程より深くなったが、
「そうね、香りで集中力が乱される程の濃さ
なら、注意をするわね」
次の機会があれば注意する事を伝えると、
頷いてくれて、座っていたソファから立ち
上がり隣へと移動して来たかと思うと、
隙間もない程に横に座り、肩に顔を埋める
様にし
深呼吸をしているのか息つがいを感じ
「ディラン?」
不思議に思い尋ねると
「匂いはしませんね」
どうやら、香水の移り香を確かめに来た様で
「ええ、マリーもルイもアメリアもそう
言われたわ」
自分の中だけの記憶の様だと言葉を返せば
「そうですか。しかしその様な強い印象の香水が
流行するのですね」
困った様に眉を下げディランに
「香水は苦手?」
答えなんて先程の表情を見れば分かっているが
つい聞いてしまうと
「はい。匂いが強いはどうも気分が悪くなるようで」
返って来た言葉は初めて知るディランの情報で、
「そうだったのね」
内心驚きつつも表に出さない様に頷くと
「姉様は香水をつけませんし、アメリア嬢は
つけてもふんわりと匂う程度なので、僕自身も
最近、強い匂いが苦手なのだと知りました」
どうやら知らない間で何かがあった様で、
尋ねようかどうするべきかと迷うも
「ご心配ありがとうございます。
なるべくお相手を傷つけな様な対処方を
教えていただけたので大丈夫ですよ」
下げていた眉が元に戻り、眉間にあった皺も
無くなったディランに安堵の息をこぼし
「なら良かったわ。素敵なご友人がディランには
いるのね」
「はい。憧れ、尊敬しております」
嬉しそうに小さく微笑んだディランの表情に
言葉以上の尊敬と憧れがあるのだと知り
「良かったわね」
手を伸ばし自分の頭より上にあるディランの
頭を撫ぜると
「はい」
小さかった時と同じ嬉しそうな表情と共に
頷きが返り
大きくなっても可愛いわねぇ。
幸せな気持ちに浸りながらディランの頭を
撫ぜ続けた。




