姉、本音が溢れ出る
「それで、ディランはどういう女性が好みなの?」
思い出した時に度々、聞き続けていたが明確な答え
を貰えて無い記憶があり出てしまった言葉といえば
返事を待ちつつディランを見つめると
数度瞬きをしたゆっくりと視線を横に逸らし
1分程待った後
「好みですか」
外されていた視線戻り、目が合い少し困った様に
眉を下げ微笑んだのち
「考えた事は無いですね」
小さな声で溢された言葉に、
困らせてしまったわ。
慌て
「そうなのね」
頷き
「私の、ディランと結婚する人の理想は、ディランの
優しいくて頼りになってかっこ良くて可愛い所を
認めてくれ、お母様やお祖母様の様にお父様や
お祖父様を支え時に叱咤できる人がいいなぁ」
簡潔に纏められ無いまま言葉として出てしまい
「家の事は勿論だけど、領に住む皆を慈しみ
自分の家族だと思ってくれる人が理想ね」
流れ出ている言葉を止める事ができず、
自分自身が混乱しつつ
「浪費家や心を持て遊ぶ様な人は御遠慮いただき
たいな」
言わ無い様にと心の奥に閉じ込めていた言葉まで
で初めてしまい
「えっとね、批判をした訳では無いのだけど、その、
ディランには笑っていて欲しいなって思ってて
あ、勿論、ディランが好きになった人なら
良いんだけど私の勝手我儘な感情と考えだし、
気にし無いで」
愛想笑いをし誤魔化しつつも、自分が悪く思われ
無い様に嫌われ無い様に出た言葉に、思わず自分
を攻めたくなり、視線をディランが外すと、
普段より真剣な表情をしたフレディと
いつもと変わら無いマルチダの表情が視界に入り、
やらかしたのね、私。
やらかしてしまったのね!
頭を抱えたくなったものの言ってしまった手前
そんな事はできず、そっとディランへ視線を戻すと
「ありがとうございます」
普段より柔らかく嬉しそうなお礼の言葉に
不思議に思っていると
「僕の事を考えてくださり、ありがとうございます」
顔に出ていたのか、理由をつけて改めてお礼を伝えて
くれたが、自分の我儘を押し付けているだけなので
お礼の貰う訳にはいかないと
「私の我儘をディランに押し付けようとしているのよ」
伝えると
「姉様にとって我儘かもしれませんが、それは僕の
事を思っての言葉でした」
それが嬉しいのです。
自分の気持ちと考えが伝わる様にとゆっくりと丁寧に
伝えられた言葉に
「ディランが良い子すぎてつらい」
両手で顔を覆い抑えられなかった感情が漏れ溢れ
「お姉ちゃん、ディランが優しすぎて悪い人に
騙されないか心配だわ」
世界中の誰よりも優しいくれ可愛いので
大きく逞しくなった今でも攫われないか騙されないか
心配が尽きない現状に嘆くも
情緒が乱れている自分に優しく微笑んでくれたまま
「大丈夫ですよ」
安心できるようにの気遣いの言葉でも
「全く安心できないのはなぜかしら」
大きくなったはずなのに、幼子の時と変わらない
可愛さと優しさと心遣いに心配はどんどん膨れ上がり
「フレディ」
自分よりディランのそばに居れる時間が多いはずの
フレディを呼べば
「はい、承りました」
言いたい事は分かっていますと返事を貰ったので
「本当にお願いね」
叫ぶ様に力強くお願いをし
「エスメ様、ディラン様、まもなく晩餐のお時間です」
マルチダの冷静な声かけに、熱が入った感情が
冷やされ
「うん。準備お願いします」
冷静に返事を返し、準備の為に部屋に入ってきた
メイドさん達の働く姿を視界に入れながら、
ディランと共に邪魔にならない様にとソファに
座ったまま待った。




