姉、心配しすぎる
アメリア主催のお茶会当日。
自分な招待を受けていないが、
メリーのお茶会への勉強とアメリアの準備など
の頑張りを身近で見てきた身としては
上手くいって欲しいと願いと祈りがあり
「姉様。大丈夫です」
学園からの帰りに話すマリーとアメリアの
お茶会の話を嫌な顔一つせず聞いてくれ、
言葉にはしないものの、少しでも不安を
感じて知ると、安心できる言葉や解決策などを
一緒に考えてくれたディランの言葉に、
「そうだよね。マリーもアメリアも
頑張ってたもんね」
緊張し強張る体と心にディランの声と言葉を
染み込ませ、気付かない内握り込んでいた指を
解く。
自分が行くのならば、軽く緊張はあるかもが
大切な親友が主催し、招待客としてただ呼ばれる
ならば、笑顔で行ってらっしゃいと笑顔で見送れる。
けれど、学園内の女性の中では最高位で次期王妃
のアメリアが招待し、
希少で稀なる光の魔術を持つがゆえに、幼い頃より
教会で過ごし、平民で生きてきたマリーを
社交界へのお披露目としてのお茶会へ主席する。
貴族と平民の生活や考え方の違いに歴然とした
差がある。
立場を重んじる貴族社会に特殊な事情で入ら
なけれならなくなったマリーの立場は、
いくら王家と最高位貴族の後ろ盾があれど、
良く思わない者は多いだろう。
何か言われてもマリーはアメリアから習った
淑女の微笑みで自分の感情を隠し通し、お茶会が
終わっても自分やルイには言わない。
溜め込んだり、我慢したししてマリーが苦しい
思いをするのでは無いか。
ディランの言葉や声を思い出しても、ぐるぐると
周り浮かび続ける思考の中にいると、
暖かなものに手が包み込まれ、視線を向けると
見慣れたディランの出て
「姉様のご心配も良く分かります。ですが、
アメリア嬢もマリー嬢も今日に向け準備を整えて
きました」
ゆっくりと、少し低く優しく柔らかい声に
顔を上げディランを見上げると、
「マリー嬢に何かあってもアメリア嬢が必ず助けを
出してくれます」
微笑み、力強く伝えてくれた言葉と同時に手を
少し強く握り込んでくれ
「そうね。アメリアもマリーにそう伝えていたわ」
「ええ。僕が知っているアメリア嬢は困っている方が
いると、手を差し伸べられる優しさと強さを持ち合わ
せている素敵な方です」
「そうね。マリーにも私にもルイにも優しく接して
くれるわ」
「アメリア嬢は、貴族の淑女があこがれで
ご夫人方が見習って欲しいと口を揃え言う方です。
心配せず、マリー嬢を預けてください」
「何だってけ? 次期社交界の華と評されていると
聞いた事があるわ」
今の社交界の華は王妃様とアメリアのお母様と
二輪の大輪が咲き誇り、
アメリアは綻びだした大輪の華だと評されていると
どこかで聞いた事がある。
「はい。ご自身もそうでアレと自分に厳しくして
いるお方です」
アメリアを疑っている事は一つも無い。
忙しい放課後の時間をマリーがこれから貴族社会
での生活をしてゆく為に必要なことを一つ一つ丁寧に
教えてくれている。
間違っても、答えられなくても、優しく丁寧に時に
助言や経験を交え教えてる姿を壁に控えながら見てきた。
だけど、未知なる場所へマリーが行き、予想のつかない
体験をするのだと思うと、
心配で仕方がない。
勿論、お茶会に参加できない自分が心配した所で
なんと力にも助けにもなれないのは分かっている。
でも。
それでも、
マリーもアメリアも今日の為にと準備をしてきた。
成功を信じていない訳ではない。
ただ、前の人生でもあった子供の受験、一人暮らし、
就職に社会人としての体験や生活。
結婚に親となる子供たち。
その心配と同じ。
悲しい事、嫌な事、辛い事はなるべく
体験して欲しくない。
楽しくて笑顔で、幸せが一つでも多くなって欲しい。
親心であり
その心子知らず。
それで良い。
「ありがとう。ディラン」
もう大丈夫だと伝え、
「マリーもアメリアも準備を整えてきたんから
大丈夫ね」
笑顔で伝えると、安堵した微笑みを返してくれた。




