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姉、解放される


「おはようございます」


優しい声の挨拶に、布団の暖かさの誘惑に誘われ眠気に釣られる様に瞼を閉じかけるも、


「本日は腕の健診のご予定が入っておりますので、固定器具を外して腕を拭かさせていただきますね」


カーテンを開ける音と共に聞こえた言葉に目を開け


「そうでした。すっかり忘れてました」


左手のみで体を起こし乱れた髪を手櫛で治していると、ワゴンと共に来てくれてメイドに顔を拭いて貰い、着替える途中に右腕を拭いて貰い、装いが整うとドレッサーに移動し髪を結ってもらう。


診察がある日は半袖のワンピースにカーデーガンを羽織る。


これならディランと一緒に診察を受けても大丈夫だとメイド達からの提案を貰い続けている。


朝食後に隣の部屋の扉をノックし周室の許可と共に


「おはようディラン」


「姉様、おはようございます」


互いに挨拶を交わしソファに腰掛け今日の予定を擦り合わせる。


「すっかり忘れていたのだけどこの後、診察があるの」


真面目な顔でディランに告げると


「そうではないかと思っておりました」


同じ様に真剣な表情で頷きながら返事を返してくれるので


「今回もここで診察を受けても良い?」


お伺いを立てると


「ええ。構いませんよ」


頷きと共に許可を出してくれたので壁に控えているメイドへと顔を動かし目を合わせると


「畏まりました。こちらへご案内させていただきます」


微笑みと一礼をし部屋を出て行く姿を見送り再びディランへ向き直り


「今日は何をして過ごすの?」


今日も昨日と同じ言葉で問いかけると


「ルイから自領の勉強を昼まで行い、昼食後は素振りを行う予定です」


ディランからも昨日と同じ返答返ってきた。


「昨日は特産物の生産と過去の売り上げだったけど今日は何を教えてくれるんだろうね」


「辺境伯が治める領地との関係性と聞いております」


今日も自領の勉強だと思っていた所に聞き慣れない単語に首を傾げると


「古くから辺境伯とは領の隣同士であり自国を守る為の主従関係である事は覚えてますか?」


ディランからの問いかけに頷き


「道中の馬車の中でディランが教えてくれたから覚えているわ。確か王家の血筋の方が代々国境の領へ入り領を納めている方が辺境伯様」


視線を少し斜め上にし教えて貰った事を思い出しながら言葉に出していく。


「我が家とはその昔に近隣の国とのいざこざになった際に当時の辺境伯と共にこの地に来て共に納めそれからの主従の絆でしょう」


少し不安い思いながらも言い切れば、


「さすが姉様ですね」


微笑み嬉しそうに褒めてくれるので安堵の息を吐き


「合っていて良かったわ」


力なく微笑み返すとノックの音が聞こえディランの入室の許可の声とフレディの対応に出ると


「エスメ様、医者の方が見えました」


フレディの言葉と共に姿が見えた人物にディランと共に立ち上がり


「おはようございます。診察の時間となりましたので参りました」


一礼と共に挨拶を告げられたので


「お忙しい中、足をお運びいただきありがとうございます。本日もお願いします」


ディランの挨拶の後に


「来ていただきありがとうございます。本日もよろしくお願いします」


挨拶を返せば、メイドからカーディガンを脱ぐ様に促された後、1人様のソファへ座り診察を受ける。


器具を取り、腕を差し出すと問診と共に触診が始まり、押された箇所などに痛みを感じないかなど数回聞かれ答えていく。


ディランとフレディの視線を少し緊張した表情を複雑に思いながら先生を眺めていると腕ばかり見ていた先生と目が合い


「もう大丈夫かと思います」


微笑みながら告げられた言葉に思わず


「治ったという事ですか?」


聞き返してしまうと頷かれ


「もう固定器具をつけずに過ごして貰って良いですよ」


告げられた言葉に思わずディランへと顔を向けると安堵の息を吐き出しており


「ディラン、治ったって」


声をかけると


「はい。聞こえております」


苦笑しながらも何処か嬉しそうに返信くれるので


「フレディ、固定器具も外して良いって」


ディランの1歩後ろ控えていたフレディにも話を振ると


「おめでとうございます」


微笑みながら言葉をくれるので、嬉しさがさらに膨らみ笑っていると


「リハビリは必要ですので無理はなさいませんようお願います」


喜びのあまり先生の注意を促す言葉に


「はい。気を付けます!」


大きく声を大きな頷きで返事を返す。


ようやく独り立ちの練習に入れる。


魔法も使える様になる。


空も飛ぶ事ができる。


やりたい事ができる様になると思うと心が弾むのが抑えきれず部屋から飛び出して行きたくなるも


「先生。リハビリはどの様な事を行えばよろしいのでしょうか?」


ディランの落ち着いた声と


「そうですね。普段の生活を少しづつ行っていけばよろしいかと」


微笑ましそうに自分とディランを交互に見ている先生の言葉に淑女とし対面を保たなければと必死に心を浅る。


「今まで固定しておりましたので少し動かしただけでも疲れてしますかと思いますので無理はさせず時には注意も必要かと」


先生の言葉に頷きながら聞いていと


「分かりました。匙加減を見極めて進めて行きたいと思います」


ディランの決心した言葉にしっかり者だなぁなんて微笑ましく思いつつ今後の事を想像しているといつの間にか診察が終わり


「ありがとうございました」


ディランの言葉に我に返り礼をすると


「リハビリの経過診察を引き続き行いますので後日また参ります」


笑顔のまま退出するのを見送り扉が閉まった瞬間にソファから立ち上がるも


「姉様。先程の先生の言葉もありますの今日はこのまま部屋でお過ごしください」


ディランの言葉に膨らんでいた気持ちが一気に萎み恨みがましく見つめていると


「お気持ちは解りますが医者の言葉をフレディがお二人に伝えに行きますので今暫くお待ちください」


固定器具が無くなった右手をディランの少し小さい手が包み込む様に触れるながらの言葉に


「そうね。まずはお祖父様とお祖母様に報告が先ね」


気落ちした心を持ち直し、右手に力を入れディランの手を握り返すと思っていた以上に力が入らず驚いてしまう。


リハビリ頑張らなきゃ。


気持ちを切り替えソファに腰を下ろしディランと共にイルが来るのを待った。


第60話


ようやく固定器具からの解放です。部屋から外へ話が進みます。


昨日の月食は空を見上げながら時折動画配信で確認しつつ眺めておりました。


ブックマークに評価を押していただきありがとうございます。とても嬉しいです。


ネタバレを含みますが短編に本編終盤の弟ディランの心境と日々を書いております。

よろしけれお読みください。

https://ncode.syosetu.com/n4082hc/

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