姉、心配を貰う
いつもの様にディランの部屋で朝食を食べ
食後の紅茶を楽しみ、馬車へ乗り学園へ向かう。
街に出かける際に来たメイド服とは似ている
様で襟の形が違えば色も違う。
メイドの制服は基本の型同じなれど見れば
どこの貴族が分かる程にそれぞれの家が襟や
色に個性を出している。
この学園の制服だって同じ。
夜の様な深い紺色と白の丸襟。
制服って奥深いなぁ。
まじまじと自分の制服を見つめていると、
「姉様、いかがしましたか?」
正面に座るディランの声に顔を上げ
思っていた事を声に出して伝えると、
「そうですね。使用人皆大切な仲間ですから」
誇らしげに微笑むディランに少し大人の様な
雰囲気を感じつつも、横目でフレディを見ると
嬉しそうに微笑んでおり、
お互い仲が良い様で良かったわ。
ディランが物心つく前からフレディとは一緒に
いる。
顔合わせからディランには自分の主として接して
おり、幼い頃は嗜める姿を見てきたが今では、
お父様とフレディのお父さんとよく似た雰囲気を
感じる事も多くて、
いい関係に育っているのね。
嬉しくもなり満足感も感じ無言で頷いていると
馬車の速度がゆっくりとなり、
そろそろルイとの待ち合わせ場所ね。
降りる準備をしていると馬車が止まり、まずは
フレディが降り、次にディランが降りて差し
伸べてた手を借り馬車から降りれば
「ディラン、エスメ、フレディさん、おはよう」
ルイからの朝の挨拶に3人揃って朝の挨拶を返し
ルイが何やらディランと話したい事があるらしく
少し離れた場所へ行くのを見送り、
「さっきのディランの微笑み最高に可愛くて、
ちょっと大人な感じもあって最高な微笑みだったわ」
隣にいるフレディに伝えると
「ええ。わたくしも誇らしく思います」
従者としての返事を返して来たので、
「その心は?」
本心は?と問えば
「さすがディラン様。皆の心を掴むのがお上手で
らっしゃる。最高の微笑みでした」
ディランが生まれた年と同じだけ一緒に過ごして
いる自分にもディランの事では従者を外さないが
「エスメ様」
久しく聞いた事の無い固い声に身体ごと向き合えば
「噂は聞いております。十分にご注意ください」
真剣な表情で告げられた言葉に、頷きつつも
学園に入れないフレディの元に届いていると
言う事はディランのお友達の従者は勿論、
その家族にも噂は届いていると言う事になる。
「そうね。悪い子では無い事は1年一緒に居て
知っているわ。そして恋が人を変えると言う事も
見たから分かる。でもね」
「その優しさは俺は大好きで尊敬をしているけれど
ディラン様へ害が及ばないとも限らない」
被せる様に告げられた言葉に息を呑み、
言葉を紡げないでいると
「警戒をして欲しい」
言い聞かせる様に目の奥に優しさと表情と
態度の厳しさに、フレディの気持ちが強く
分かり
「分かったわ」
真剣に頷き返せば、さらりと頭を撫ぜられ
「俺は助けに行けないが、何かあればルイを
頼るように」
兄の様に優しく暖かな声で紡がれた言葉に
嬉しく思うも気恥ずかしくて無言で頷くと
「今日はキャロットケーキを焼くとクック長が
言っていたから、お茶会のお菓子は控えるんだよ」
大人しくしている自分に小さく笑うフレディに
物申したくなったが、告げられた言葉に
「キャロットケーキ!? 気をつけるわ」
思わず幼子の様な反応をしてしまい、
爆笑をしたいが必死に耐えているフレディの
姿に、
「笑いたかったら笑えばいいでしょ」
怒って見せたものの、フレディは声を出して
笑う事はせず少し時間ががてば冷静な従者の
顔に戻り
「話が終わった様ですよ」
話し方まで戻り、
「もう。行って来ます」
言いたい文句を言葉短く出し、挨拶をすれば
「行ってらしゃいませ」
微笑みと共に見送られ、ディランとルイが居る
場所まで小走りに向かった。




