姉、驚きが止まらない
ざわめきと落ち着きが無くなった店内で
それでも先ほどか変わらず落ち着いた接客を
している店員さんの声を耳に入れ中がら背中から
ディランの顔を見ると、頬をほんのりと染め
ボーイックと女子生徒が入っていった別室を
見つめたままのディランを見つめた。
ディランの溢した言葉は女子生徒へ向けて言っていた。
ディランの表情から察するに、一目惚れとは
いかないものの好印象だった事は分かる。
ディランの願いや思いを叶えであげたい。
とは思うものの、女子生徒はボーイックや
他の下位貴族を中心とした男子生徒に人気で、
慕う人が多くいる。
中には養女となった家の地位と爵位目当て
と声もあるが、本当に女子生徒を思い
恋している男子生徒もいるとも聞いた。
どうするべきかしら?
1人考えに耽っていると、
「ルーズヴェルト様」
店内を案内してくれていた声に意識を戻し
メイドとしての体裁を保ち控えめに視線を
向けると、ディランに向けての視線が何か
物言いたげで自分はどう動くべきか頭の中で
想像し様子を伺っていると
「失礼。大切な人に少し似ていたいたので」
ディランの返事に心の中で驚くと
「ああ。お話は」
納得した表情と言葉に更に驚き、フレディに
視線を向けると、従者として立っているものの
ディランの言葉にどこか困った様なそれでいて
納得している表情に
ディランに思い人がいるの!?
ディランの事ならばほぼ全て知っている
と思っていたが、知らない言葉と思いに
驚きと共に愕然としつつ、体裁だけは
崩さないようにお腹と表情筋に力を入れた
が
呆然とし、
姉ちゃんなのに知らなかった。
驚嘆している内にいつの間にか宝石店から
出て馬車に乗っており
「姉様、お疲れですか?」
隣に座っているディランに手を握られ、
こちらを伺う不安げな声と心配そうに眉を
下げた表情が視界に入り
「大丈夫。元気いっぱいよ!」
なんでもないと誤魔化したものの、
ディランの表情は更に曇り出したので
「本当に大丈夫よ。ただディランに大切な人が
いた事を知らなくて」
握ってくている手の上に自分の手を乗せ握り、
慌て、早口で大丈夫だと伝え
「その、姉ちゃんとして
立場が無いなぁなんて思っただけ」
喋らなくても良い心内を言葉に出してしまい
見苦しい程の言い訳を困った表情と共に
告げると
「思い人、ですか?」
不思議そうに少し首を傾げた後
「その様の人はおりません」
キッパリと言い切ったディランに驚き
「え?だってさっきお店で大切な人がって」
吃驚しつつ尋ねれば
「先程の女性がどこか姉様に似ていた様な
気がしたのです」
返ってきた言葉に腑におちず頷く言葉
難しくてディランの表情を見つめると、
握る手に力を入れて
「勿論、姉様は場を弁えその時に必要な所作や
言葉使いに表情で対応できますので、その点は
似ておりません」
視線を合わせ説得する様な力強い声と言葉に
戸惑いつつも頷き返すと
「ただ、天真爛漫だった昔の姉様を思い出して
懐かしくなりました」
優しげに目尻を下げたディランに、どう返事を
返して良いのかわからず
「そうなんだ。昔の私かぁ」
曖昧に返事と微笑みで返すしかできず、
なんとも気まずい気持ちになり誤魔化す様に
「次はどこへ行くの?」
尋ねると、
「姉様のドレスを作りに行きます」
返ってきたきた言葉に声を失った。




