姉、メイドに徹する
ディランの可愛さも相まって上機嫌に
なりつつも、
買い物へ出ているのだから買う行為は
正しいけれど、お金の使い過ぎは控えたい。
緩くなってしまった決意を今一度気を
引き締め
「次はどのお店に行くの?」
アフタヌーンの時間も近づいており、
長居しないように心掛けなければと
思い尋ねると、
「宝石を扱う店です」
ディランからの返答に数上瞬きをし、
「アクセサリーでも作るの?」
首を傾げ尋ね返すと、微笑みだけが返り
答えが分からず店まで馬車が進んでゆく。
流れる景色は初めて見る街並で、ドレスを身に
まとい日傘を持ち、男性の腕に手を添え歩く
夫人や、メイドを連れた淑女達を多くの
爵位持ちの人々が見え、
居心地の悪さを感じつつ、行き交う人々を
眺め着いた場所は、重厚な扉に何処どなく
向かいれる側を選んでいそうな雰囲気に
二の足を踏むが
「お待ちしておりました」
出迎えてくれたボーイの言葉に、ディランが
手配をしてくれた事を理解し、メイドとして
後ろをついて行く。
今まで感じなかった沢山の視線を感じ、
メイドとして所作が間違っていないか
心配に思いつつもディランとボーイの後を
ついて行き入った部屋で店主さんに出迎えられ
挨拶を交わすディランとその近くで控える
フレディと距離を取り壁側で待機をする。
挨拶を交わした後はソファに座り、雑談を
交わしつつ
「お尋ねいただいた魔法石の売上ですが」
耳に届いた言葉に思わず身を乗り出しそうに
なったものの立場を思い出し、興味のない表情と
体裁を整えつつも耳を傾ける。
魔術を入れていない魔法石の売上とアクセサリー
への加工依頼は順調の様で右肩上がりだと、
嬉しそうに伝える店主さんの言葉に心の中で
安堵の息を溢す。
生活魔法道具も紙刺繍も魔法石も
全て順調だと書面で教えて貰っていたが
こうして販売元の場所で聞くと安心できた。
細かな生産地や加工をする職人で売上の違いは
あれど、大きくみると売上は向上している様で
好みとこだわりね。
分かるわ。
心の中で大きく頷き店主さんの話を聞き、
時に自分の気持ちと考えを代弁してくれる
ディランの返事に大きく頷いた。
どれだけ話していたのか、
「では、店内をご案内いたします」
店主さんの言葉にディランがソファから
立ち上がり案内されるまま部屋から出るので
フレディと共にその後をついて店内へと足を
進めると、煌びやかにシャンデリアが七色に
猫足のテーブルセット
紳士淑女が楽しそうに顔を見合わせて
魔法石を見ている。
何処を見ても調度品の落ち着いた雰囲気に
一瞬飲まれそうになりかけ、深呼吸をする
事で気持ちを落ち着け、
「こちらが当店1番人気の職人が手がけた
魔法石です」
五指で刺された場所に置かれた魔法石は
研磨が細かく施され光に当たらなくても
自ら光を集め輝くその石に魅入ってしまう。
店主さん自ら魔法石の加工した職人と
アクセサリーにするなら首元に置くのが
良いだろうと提案も入る。
購入者の魔術が込められ誰かの首元で
輝く魔法石はさぞ綺麗で目を引くだろう。
1回だけではなく度々身に付けたくなるし
子供だできたなら譲ってもいい。
時代が移り変わり流行りの形や大きさでは
無くなっても資産として代々受け継がれても
良い大きさの魔法石。
前の人生で宝石展を開催するという告知映像や
女優さんが広告として身につけるしか見た事
ない大きさの魔法石は誰もが魅了する様で、
自分達から少し離れた場所でもこの魔法石の
話をしており、値段で購入できないが良い物が
見れたと嬉しそうに話している姿に
同意し、次の魔法石を案内してくれる店主さんの
話に耳を傾ける。
どの魔法石の加工も領にいる職人が人気の様で
みんなの頑張りが認められて自分の事の様に
嬉しい思っていると、入り口付近が賑やかになり
視線を向けたが、見えたのでフレディの背中で、
不思議に思い耳に神経を集中させると甘い匂い
と共に
「いいじゃない。それにボーイックは買って
くれると言ってくれたわ」
耳馴染みのある名前が聞こえ、フレディの背中
から顔を覗かせようとしたが、動いたディランに
遮られてしまい、
「そうだけど、何もこの店でなくてもいいだろう?」
困惑したボーイックの声に
「確かにボーイックのお店の商品も素敵よ。
でも、評判のいいお店の宝石も欲しいの」
評判の良い商品を身に付けれはボーイックの
評価も上がるもの。
嬉しそうに弾んだ声と言葉に、
ボーイックのお姫様?
毎日廊下で目が合う女子生徒を思い出し
会話に耳を傾ける、
「ねぇ。これなんて、どうかしら?」
ざわめきと反対の感情の嬉しそうな声に
なんとなく周りのお客さんが困っている
のを察し、助けるべきか思案するが
「あ! これも素敵」
思った感情をそのままに出している女子生徒
に何処かの淑女が小さな声で苦言を溢し
メイドの同意と共に退店を促す言葉が聞こえ
流石にこのままではいけないと、ディランと
フレディの背中から出ようとすると
「お客様」
男性店員さんが声をかけて様で、別室へと
移動を促されており、
「素敵。特別待遇ね。行きましょうボーイック」
足取り軽く移動をする足音と話し声が聞こえる
中
「可愛い人だ」
ディランの小さく無意識にこぼれ落ちた言葉に
驚きディランを見るとフレディにも聞こえた様で
様子を探るようにディランを見た後、自分と視線
を合わせ
今の言葉を聞きましたか?
視線で尋ねてきたので
勿論。一言一句聞き漏らす事なく聞いたわ。
同じく視線で返すと、
屋敷に戻り問いただそう。
互いの提案に異論なしと小さく頷き
合いった。




