姉、発案する
見たいと思い続けていた実店舗での販売。
我儘を言えば、お客さんが手に取り店員
さんから説明を受けてからの購入の流れが
見たかったけれど、
「楽しかったわ」
店の雰囲気、店員さんとの会話。
数分前の出来事を思い出しても興奮が収まらず
「ディラン、フレディ。ありがとう」
感謝の気持ちを言葉の隅々に入れ伝えると
「お連れできて良かったです」
ほんの少し口角を上げて微笑んでくれたディランと
同じ意見だと微笑むフレディに
「本当に楽しかった。工房の商品が並んでいるのも
見ていて嬉しかったし、店員さんから直に商品案内
をして貰えて、こんな感じで接客しているんだと
分かったのも嬉しかったの」
興奮が収まらず、
「生活魔法道具をお客さんに好評だと言って
貰えて嬉しかった。作って良かったと思ったし
お父様やディランには迷惑をかけているけれど
販売して良かったと思ったわ」
淑女として非礼も良い程に早口と隠す事の無い
感情が表に出ている言葉
「店員さんの話を聞いて思ったの。
正解に1つだけのティーカップがあっても
いいのかもしれないわ」
貴族の中では多様な趣味がある。
馬術に狩り、カードゲーム。
バラの繁殖に新種を作る事。
「カップの絵付けがあっても良いと
思うのだけど、どうかしら?」
思いついたまま提案をすると
「難しいかと。絵付けの職がある以上
労働と捉える方もいると思います」
ディランからの返事に
「そっかぁ。職人さんもいる以上
難しいかぁ」
少し残念に思っていると
「では、パトロンになっていただくのは
どうでしょうか?」
フレディからの提案に首を傾げると
「無地のティーセットを販売し、領に居る
数名の絵付け職人の名からが選んでいただき、
好みの絵柄を入れる事ができると言う販売です」
勿論、特別な事ですので別途いただくのが条件
です。
説明を受け、ディランと顔を見合わせ頷き合い
「ダーラナホースの様に祝いの気持ちを込めて
その人の事を考え絵柄を決め送る。素敵な事ね」
「ええ。送られた方も1つしかない絵柄だと気づけば
尚の事喜んで貰えますね」
お互いにフレディの案を受け入れ、
「帰ったら企画書を作成しお父様へ提出します」
「ありがとう。私もお父様とお母様に手紙で
提案してみるわ」
ディランの言葉でフレディの案を採用になった。
その後も販売案内の方法や価格の話などを
しているとあっという間にレストランに到着
して様で、
「話の続きは食事をしながらにいたしましょう」
フレディの静止の言葉にディランと共に頷き
馬車から折り、ボーイの案内で別室へと入り
「エスメ様。こちらへどうぞ」
ディランの後に着いて別室に入ったが、壁側に
控えているものだと思い、そのまま控えていたが
フレディに呼ばれ、困惑しながら近より引かれた
椅子に腰を下ろした。
良いのかな?
メイドとして店内に入っているのに主人である
ディランと同じテーブルに座るのはマナー違反
と言われない噂がディランに付くのでは無いかと
ディランを見つめると
「大丈夫です。このレストランは信頼を置け、
お祖父様の代から懇意にしている場所です」
自分の心情を汲み取ってくれたディランの言葉に
頷き、ならばと背筋を伸ばし淑女らしく座り
空いていた席にフレディが座ると、
「失礼いたします」
見計らっていた様にノックの後、扉が開き
入ってきた男性から
「当店へようこそお越しいただきました」
腰を折った礼と支配人であるとの自己紹介を受け
「今日はよろしく頼む」
ディランが返事を返すと食事が始まった。




