姉、助けを求める
柔和に微笑み、店内にある商品を
1つ1つ丁寧に分かりやすく説明して
くれる店員さんに相槌を打ちつつ
視界の端に居るディランの様子を伺うと
紳士としての表情をして入るものの
どこか表情が固く
緊張しているのかな?
何かを警戒している様な雰囲気に内心
首を傾げつつ、
「こちら、誰もが欲し誰もが憧れる紙刺繍
のメッセージカードです」
今までとは違い、興奮気味に話す店員さんに
慌て意識を向け直すと、
明日ぐらいに発売予定となる最新の刺繍が
刺されたカードを持っており、驚きと共に
「あの、それは」
発売日前の、と、言いかけ慌て口を紡ぐと
良い方向へ取ってくたらしい店員さんは
「明日、店頭に出す予定をしております
最新の商品ですよ。いかがですか?」
発売日は明日。
と、決めているわけでは無い。
なんせぐらいと曖昧にしている。
どんなに調整しても輸送関係で地域に届く
日にちに差が出てしまうのと、貴族社会の
関係もあり、良い客ばかりとは限らないので
曖昧にし店や店員を守ると言う意味もあり
まぁ、少しぐらいなら。
それも工房を持ち販売している領を纏めている
家の者ならば。
と、篩に掛けた結果なのだろう。
そうなると買うの言葉以外出しにくくなる訳で
どうしよう。
私が買ってしまうと、発売日を心待ちにして
いたお客さんの1人が購入できなくなる。
欲しいと願い
指折り発売を待ち望んでいた人がいる
「素敵ですね」
どうしよう。
どうやって断ろう。
断る方向へと話を進めたいが、
「ええ。とても綺麗な刺繍ですよね。
我が紹介は会長が領主様と良好な関係の
お陰で、王都の中では1番に入荷される
店なのですよ」
誇らしく胸を張りながらの言葉に
お店への愛情を感じ
「そうなのですね。良い会長さんなのですね」
メイトの表情の中で1番微笑んでいつ表情を
作り返事を返すと
「そうなんです。生活魔法道具のどこよりも早く
目を付け、販売する為に自ら足を運び交渉と
契約を行なった方なのですよ」
尊敬をしているのであろう事が言葉と表情に
態度からも出ており微笑ましく見つめていると
「その、会長が数ある中で絶賛した
刺繍カードです」
笑顔と言葉の圧に押され断ると言う方向へ
舵を切りにくくなり、助けを求めフレディへと
視線を向けると
「いかがいたしましたか?」
すぐに気づいてくれディランへ一言入れてから
自分の元へ来てくれ、店員さんの話を聞き
「ああ。本当に良い刺繍ですね。
これを進めたくなる気持ちは分かります。
ですが、同じ領民が買うとなると少し憚れますね」
困って表情を作り援護してくれ代弁もしてくれた
フレディに頷き
「良いと褒めて貰えた商品です。私ではなく
その刺繍を持つに相応しい方に購入をして貰いたい
です」
ようやく自分の気持ちがを伝える事ができ、
心の中で息を溢す。
このお店を誇りに思い楽しげに接客をしている
店員さんのお眼鏡に叶った人の手に渡って欲しい。
その事を伝えると、
「かしこまりました」
腰を折り一礼をくれた事へ驚き
「あ、あの、私は一介のメイドにその様な」
上位への対応は。
幸いに店内には自分たち以外いないのがガラス窓
から誰かの視界に入れば店の評価に関わると慌て
止めさせると
小さな笑い声と共に
「失礼いたしました。お気遣いいただき
ありがとうございます」
先程の接客のための笑顔とは違い、どこか親しみを
感じる笑みに不思議に思いつつ、
「そろそろ、時間が」
フレディの言葉に長居をしている事に気づき、
退店をする事へ了承した事を頷きで返すと
「ディラン様」
会長と商品を見ながら話をしていたディランも
フレディの声は届いていた様で、
「そうか。ありがとう」
退店の了承をし
「長居をして申し訳なかった」
「いいえ。いつでもいらしてください」
ディランと会長の挨拶が終わり店から外へ出て
待機していた馬車に乗り見送りに出てくれた
会長と先ほどの店員さんに小さく頭を下げ
礼を伝えると馬車は動き出した。




