姉、弟の成長にはしゃぐ
いつもならゆっくりと流れる街並みを視界
の端に入れながらのんびりとお喋りを
楽しむが、今日は窓の外など気にもならず
黒のウエストコートの中には白のシャツを
着込み、ボトムも同じく黒色。
普段見ないディランの姿に嬉しくもなり
大人の装いが似合う事への誇らしさもあり
まだ、もう少しだけ子供でいて欲しかった
寂しさもあり、
とても複雑。
あっという間に身長は追い抜かれ、
今度は顔を上げディランと話す事になると
思うと嬉しいけれど寂しく、
さらに複雑な気持ちになるものの、
それ以上にディランの大人の装いが似合う
のが誇らしく、
ディランは私の知る世界で1番
可愛くて格好いい。
しっかりもしているし優しく気遣いも
してくれる。
小さい時の舌足らずで嬉しそうに短い腕を
めいいっぱい伸ばして転びそうになりながらも
駆け寄ってくれたディランも言葉にできない程
に可愛かった。
すくすく育ち、貴族としての自分の振る舞いや
立場を学ぶ様になり、自覚が芽生えたのか
顔も凛々しくなりつつも、まだ子供の体型で
おしゃまな感じが可愛くて愛おしかった。
1年、1ヶ月、1日、1時間、1分、1秒
どれを思い出しても可愛いと愛おしが積りに
積もるだけで、
毎日、ディランの可愛い、格好いい、優しい、
素敵そんな気持ちが溢れて出ているのに枯れる
事は無い。
不思議に思ったが、ディランが可愛いのは
当たり前だし、格好いいのはディランの努力の
現れ出し、優しいのはお父様とお母様を見て
いれば納得できる。
毎日が幸せで当たり前になって気持ちが薄れて
いたけれど、
思い出せて良かった。
心の中で何度も大きく頷き、
今日もディランか可愛くて格好よくて幸せ。
自分の思考を締めくくると、馬車は街の中を
走っている様で、視線を窓の外へ向けると、
「間も無く到着ですよ」
聞こえてきたフレディの言葉に視線を向けると
「生活魔法道具を取り扱う商会へ向かって
おります」
続き伝えてくれた言葉に頷き返すと
「お邪魔する紹介は初めて生活魔法道具の
販売を行い、今でも関係が続いている商会です」
ディランの言葉に
「ご贔屓の商会さんなのね」
関係を大切にしているのだと教えてもらい、
「はい。視察という旨を伝えてありますので
ゆっくり見て回れるかと思います」
自分が周りを気にせず店内を見れる様に手配して
くれたディランの心使いが嬉しく、
「お心遣いありがとう。楽しみだわ」
間も無く自分の目で見れると思うと心が高揚し
落ち着かなくなるも、
今日はメイド。
ディランの専属メイド。
自分の行動がディランの評価につながるのだから
気持ちを引き締めないと。
呪文を唱える様に何度も言い自分に言い聞かせ、
「楽しみね」
心配そうに見てくるディランとフレディに
大丈夫の意味を込め伝えると
「はい。僕も姉様との買い物は楽しみです」
小さく微笑んで返事を返してくれ、
「エスメ様。本日は無礼講とは行きませんが、
旦那様と奥様より気になった物があれば購入
しても良い。と、お言葉をいただいております」
ご遠慮なく仰ってくださいね。
フレディからの言葉に、
「そうなのね。お父様とお母様にお礼を
言わないとね」
自分やディランの予定は知らされているとの
知っていたがまさかそんな事付けまで貰えるとは
思ってもおらず、
帰ったら街の感想と共にお礼の手紙を書こうと
決めれば目的の紹介に到着した様で、馬車が
ゆっくりと止まりフレディが腰を上げ扉を
開けたので、続けて馬車を下りディランが馬車を
降りるのを見届けたのち、
「お待ちしておりました」
商会の店主であろう人物が出迎えと共に向かい
入れてくれた。
メイドとしての位置を間違えない様に気をつけ
ディランとフレディの間を歩き、店主の話に耳を
傾けつつ店内に入ると
所狭しと商品が並びながらも綺麗に整えられ、
掃除もこまめにされている様で、清潔感と
入店やすさがあり、
「本日はお忙しい中、足を運んでいいただき
ありがとうございます」
細身の店主さんからの挨拶に
「こちらこそ。忙しい時にお願いをしたにも
関わらず感謝します」
ディランがスムーズに受け答えをしており
さすがディラン。格好いい!
心の中でこれでもかと称賛していると、背中に
何か軽く当たった感触に意識を取り戻し、
なんでも無いようにすまし顔で店主さんと
ディランの後を着いて歩いた。




