姉、悩み寝れなくなる
ディラン提案と助言はいつも的確で
マリーの立場をすっかり忘れていたわ。
希少な光の魔術を使えるマリーは王家の
庇護の元過ごしている。
放課後のアメリアの淑女教育も社交界に
入るための勉強をしている。
警備の問題かぁ。
ディランの言葉を思い出し重めの息を吐き出した。
行きたいな。
そう思い何も考えずに提案した事が、
こんな大きな事になるとは思ってもみなかった。
ゴロリと布団の中で寝返りを打つ。
もしかするとマリーに迷惑をかけてしまったの
のかもしれない。
そう思うと眠れずに暗い感情と想像ばかりが
浮かび、再び重い息を吐き出した。
夜。
時に寝る前に考え事をしては駄目ね。
考え事で頭が冴えてしまい眠れなくなった
体をベットからお越し、布団から出て本棚へ
と歩く。
入る余地のない程に詰められた本棚から数冊
本を取り出し手に取るとソファに向かう。
寝れないのならば無理をして寝る事は無い。
考え続ける頭を切り替える為に楽しい本を
読めば思考も切り替わる。
持ってきた本を表紙を開き物語の中へ入っていく。
何度読んでも本屋さんの冒険記は驚きと緊張感に
喜びに楽しさが溢れており、心を弾ませてくれる。
周辺国の街の様子に生活習慣に祭。
授業で教授が説明してくれた言葉よりも頭に
入りやすく、
好きという感情はこんなに頭と心を柔らかくする
のだと改めて思い知り、夢中で読んでゆく。
ある一文を黙読し、
この国はミランダの国の話ね。
領に居る親友の国の事だと気づき、興味を持って
読んで進めると、聖女と呼ばれる女性が存在している
と書かれており、
傷を癒やし、病気を治し人々に優しさを与え存在だと
書かれた一文に読む事を止めた。
光の魔術を持つ人のことかしら?
国が違えば魔術を魔法と呼ばれる事もある。
現に、この国でも魔術と呼んだり魔法と呼んだりと
皆が自由に表現をしている。
興味を持ち文字を読んでいくと、元は平民で
あったが聖女の力に目覚め、貴族となり王家の指示の元
学を得る為に学園へ通い出す。
いきなりの貴族生活で、マナーもルールも知らない
聖女さまは中々同級生や貴族社会に受け入れて貰えず
辛い生活を送る中、殿下や側近の手助けを借り
ゆっくりとではあるものの馴染む事ができ始める。
書かれた文章に、苦言を言いそうになるもぐっと
飲み込み続きを読んでゆく。
殿下と仲を深めると、婚約者からの苦言が入り出し
日に日に激しくなっていく文章に、
首か傾げる。
婚約者が苦言を言うのは殿下と聖女の距離が適切な距離
では無く親密に見える距離と言うことかな?
殿下の婚約者ならばアメリアと一緒の立場。
そんな方が注意ではなく目見にえた虐めと表現される
様な事をするのかしら?
どうも理解ができない文章に首を傾げつつ読み続けると
卒業式に婚約破棄宣言をし、殿下の婚約者国外追放に
なったと書かれた文章に驚き本から顔を上げた。
国王では無い立場にそんな権利はないはず。
「嘘でしょ」
ポッリと溢れた言葉と信じられない文章に改めて
読み直しても婚約破棄と国外追放は書かれており、
殿下はその後、聖女と婚約し結婚をしている。
これが許されるの?
王家の事情があったにしろ、こんな形で王家に
仕えている家の令嬢を蔑ろにする事が許され、
今も繁栄しているだなんて。
裏に事情がありどうしても殿下と聖女が結婚
しなければならなかったのなら、
もっと良い方法があったはず。
モヤモヤする気持ちを抱えたまま読み進めると、
殿下と聖女は誰もが羨む程の仲の様で
なんだかやるせないなぁ。
殿下と聖女だけを見ていれば、苦難を乗り越え
結ばれたお2人になるのだろうけれど、
婚約者として支えていたはずの令嬢の事を
思おうとなんとも喜べない結婚に
国外追放となった令嬢の幸せと楽しい事が
いっぱい降り注ぎますように。
心の中でそっと祈りページを捲り、続きを
読み始めた。




