姉、意地をはる
ガタゴトと馬車が揺れる音と共に
馬の足音も聞こえ、確実に屋敷に
向かっているのだと思うと急に体が
重く感じ出した。
姿勢を崩して背もたれに身を任せたいけど
そうするとディランとフレディに心配を
かける事になる。
部屋まで我慢しないと。
屋敷へ近づくごとに体が重さを増し
動くことさせ億劫に思い出すが、
姉の意地を発揮しなんとか耐え
「お帰りなさいませ」
馬車からおり出迎えにきてくれたマルチダ
の顔を見たらさらに体が重くなったが、
意地で何でもないフリをし、ディランの
エスコートを受けつつ自室に戻り、
少し手荒かったが手早く制服から着慣れた
ワンピースへと着替え、ソファに身を預けた。
自分が思っていたよりボーイックの事が
重かった様で、言葉に出しにくい感情と共に
重々しい息を吐き出す。
皆の手前、見守ると言ったが急に感情を
表にだしたボーイックの事が気になり、
それと共に違和感を感じて、
どうも自分の知っているボーイックと
噛み合わない。
彼女もでき、そちらに夢中になり周りが
疎かになると言う事はままある。
現に自分がその性格でディランやフレディに
マルチダに助けられている。
まだお付き合いをして3ヶ月程。
今が楽しくて恋しくて愛おしくて1秒でも
長く一緒にいたいと共うのは当然の事だわ。
でも、ボーイックの話を思い出すと、
お付き合いをしている訳ではなさそうで、
言い方は悪いが、
良い様に貢がされている。
そう思える言葉もあった。
アメリアも言っていた通り、
品が欠けている行動。
だと思う。
勿論、ボーイックのご両親も気が付いて
注意をしているのはボーイックの発言で
手に取るように分かった。
出なければあんなに感情をむき出しにする
事はない。
今のボーイックにとってご両親の心配は
口煩くて、邪魔で、認めて貰えず悲しくて
でもご両親の気持ちが嬉しくもあり恥ずかしく
もあり煩わしいのでしょう。
精神の成長期。
そう言えば全てが収まるけれど
違う気がして心が騒めく。
「どうしたら良いのかしら」
無意識に心の声を溢してしまったようで、
慌て口を塞ぐも、自室でマルチダ意外居ない
事を思い出し、様子を窺うようにマルチダに
視線を向けると、
普段と変わらない表情で壁側に待機してくれて
おり、
程良い距離を保ち見守る体制を取ってくれている。
安堵の息を溢し、のっそりを体を動かし態勢を整え
ソファに座り直すと、先程まで堂々巡りをしそう
だった考えが一旦止まった。
これ以上時間をかけても今日は答えを見つけられない
しディランが心配するわね。
体から重い息と吐き出し、ソファから立ち上がり
サッと身なりを整え、自室を出て隣のディランの
部屋の扉をノックし、聞こえてきた了承の声に返事
を返す様に扉を開ければ、
どこか心配げにでも、微笑み迎え入れてくれた
ディランの表情に無意識に早足で向かい、目一杯
抱きしめた。
自分とは違う暖かい体温と呼吸音
背中に回された自分より太い腕と背中を摩ってくれる
大きな手
どれもこの数ヶ月で自分を追い抜いた。
あんなに小さく可愛かったのにと惜しむ気持ちも
あるけれど、大きくなる成長を嬉しく思う気持ちも
あり、
目一杯深呼吸をし心の中にあった違和感や考えを
押し出し、今の幸せを噛み締める。
「姉様、久しぶりの登校でお疲れでしょうから
ソファに座りませんか?」
どれぐらい時間が経ったのかわからないけれど
ディランの言葉に頷き返し、惜しむ気持ちが
あるものの回していた腕を外し、手を引かれるまま
ソファに腰掛けると、すぐさまフレディから
甘い香りのすミルクティーとティーフードが出され
一口飲むと、蜂蜜の香りと味が心身にじんわりと
沁み渡り、行儀が悪いと思いつつ半分程飲んだ頃
ようやくカップを置く事ができ、
「今日は色々な事があったのよ」
ようやく今日の出来事を話す事ができるようになり
話だすと、ディランもフレディも微笑みながら
耳を傾けてくれた。




