姉、ドレスとお披露目する
ディランとフレディに言葉をかけて入った
衝立の内側は椅子が置かれ、姿見も準備され
着々と準備が進められる中、
「エスメ様」
1人のメイドさんに声をかけられ、視線を
向けると手にはコルセットがあり、無言で
頷くと別のメイドさんに生成りのワンピースを
脱がされ、肌着の上からコルセットをつける
準備を進める。
ドレスを綺麗に着て魅せるには必要不可欠な
コルセットだが、お腹を限界にまで締め付ける
ので息苦しいし、動きが制限されるので
好きでは無い。
けれどそうも言えず、コルセットの紐を引っ張る
メイドさんと息を合わせコルセットで締め
ウエストを細くしてゆく。
アメリアのメイドさんは少し緩めでつけてくれたが
どうやら容赦無しの様で、息苦しく感じるものの
ディランが喜んでくれるのならばと、
我慢し、青い生地に純銀糸の刺繍が刺されたドレス
を着て、
「化粧ですが、もう少し濃くて欲しいです」
アメリアの言葉を思い出し、お願いをすると
少し驚いた表情をしたものの、嬉しそうに頷き
返してくれた。
椅子に腰掛け、一息つくと自分の為に沢山の
メイドさんが動いてくれているのが見え、
感謝の気持ちで見ていると、
なんだか皆、嬉しそう?
普段とは違う仕事が急に出き、皆それぞれの
仕事の手を止めて手伝ってくれているのに
どこか嬉しそうに、楽しそうにしている姿に
内心首を傾げつついると
「この様な感じで、いかがでしょうか?」
化粧をしてくれたメイドさんの声に意識を
戻し姿見を眺めると、アメリアの所でして貰った
化粧とは違うものの、綺麗に施されており
「ありがとうございます。とても素敵です」
どちらも新しい自分を見れた事への驚きと
嬉しさにお礼を伝えると、
嬉しそうに笑い頷いてくれた。
マルチダの手でヒールのある靴を履かせて貰い
手を借り椅子から立ち上がり、衝立を出て
ディランとフレディの前に出ると、
2人とも同じ様に目を見開き驚きの表情を
表にだしており、
可笑しくなり笑い出しそうになるも、
「綺麗です」
驚きが抜けきれない中、溢されたディランの
言葉に
「ありがとう」
お礼を伝えると、
「良く似合っております」
ディランとは違い芯のある声での褒め言葉に
「ありがとう」
お礼を伝えるも、まじまじとみるディランと
フレディの視線が気恥ずかしくもいつつ、
誤魔化す様にゆっくりと一回転すれば、スカート
の部分がふんわりを揺れ動き、
ダンスの時も綺麗に見える様に計算されて
作られているのが分かり、
ドレスって緻密な計算の下で作られているのね。
発見と関心に頷いていると、聞こえてきた
ノック音に返事を返せば、近くにいたメイドさん
が対応にでてくれ、
「お母様」
姿を見せたお母様に驚き言葉を溢すと
「これから楽しい事をするのだと聞いて
来たのだけど、旦那様にも来ていただきましょう」
すぐさまお母様専属のメイドが部屋から出て行き
お母様は、じっくりとドレス姿の自分を見た後、
「さすがクロエ様がお考えになったドレスね。
生地も良いし純銀糸も良いものを使われているわ」
ドレスの細かな部分をゆっくりと観察した後、
「良く似合っているわ」
視線を合わせ目尻を下げ微笑みながらの言葉に
「ありがとうございます」
お礼を伝えると、廊下から少し慌てた複数人の
足音が聞こえた事に気づき、扉に視線を向けると、
「あらあら」
お母様が楽しそうに笑うので、足音の人物が
誰なのかが分かり、聞こえてきたノックに返事をし
姿を見せた人物に
「お父様」
呼びかけると、
「エスメ。綺麗だね。本当に綺麗だ。
こんな綺麗なエスメが見られるだなんて夢の様だよ」
嬉しそに目尻を下げ、弾む様に告げられた褒め言葉に
「ありがとうございます」
普段とは違う姿に可笑しくて笑いそうになったものの、
微笑みだけに止めお礼を告げると、
「リリー、うちの娘は本当に綺麗で可愛いね」
あまり聞かない夫婦の会話にひっそりとディランと
視線を合わすと、ゆるりと首を振られたので
なるほど。
子供達は見ざる聞かざる言わざるをするのね。
ディランと意図を読み取り、できるだけ存在を消し
お母様とお父様の会話を微笑ましく聞くだけの
止め、次のドレスへの着替えの機会を伺った。
その後、お母様に視線で着替えに行く様に言われ
マルチダとメイドさん達の手を借り、全てのドレスを
見せ終え、
「せっかくだ、このまま皆でお茶を飲もう」
お父様の発案に
「素敵ね」
お母様が同意した事で、場所を変えてのお茶会へ
と移る事となり、
「エスメ、最初のドレスに着替えてちょうだい」
お母様の指示で再びドレスの着替えとなり、
マルチダからディランの手に渡り、
家族全員でテラスに移動しお茶会が始まった。




