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姉、緊張する


当主である伯爵様のお言葉の後、

始まった晩餐。


家族や屋敷で働いてくれている皆

以外と一緒に食事をするのは緊張をする。


姿勢しかり

食事を口に入れる際の開け方。


ナイフとフォークが皿に当たらない様に

気を配り食事を勧めつつ、


公爵様にクロエ様やアメリアとの会話も

耳を傾け、理解し時折返事を返す。


自分が作ったとは言え、味などは分からず

ただただ、3人が美味しいと喜んでくれ、

この味や食感が好みだと褒めてくれる事を

嬉くて幸せな気持ちを言葉で伝えるのみに

なってしまった。


マッシュポテトにフライドポテトに

じゃが芋のパンは上位爵位を持つ3人が

晩餐に出しても良いと思うが


青豆のスープは平民が毎日の様に作るスープ


中には忌み嫌う貴族の方々も居ると

聞くけれど、3人はそんな事は気にせず

興味深げに食べてくれ、


「塩のみの味付けではあるものの、

具材の味を引きてて美味しいな」


伯爵様の言葉に、どこからか生まれ心を

縛っていた緊張と怖さが解れ、


「ええ。同じ味でも材料を変えれば

毎日楽しめますわね」


クロエ様が何やら思案しながら返事を返し


「お腹持ちも良さそに感じるのは、

豆が入っているかかしら?」


アメリアが興味深げに食べている姿に

体が強張るような緊張は解けたものの

デザートのプリンまでは緊張と集中を

切らす事ができず、


ナイフとフォークからスプーンに持ち

替えてようやく緊張がとれ、


甘くて美味しい。


プリンの甘さに癒され食事が終了し、

その後、部屋を変え食休めの紅茶を

いただきつつも、


私、いつ、お暇をするんだろう?


太陽も沈み、夜も深くなろうとする時間に

なり心の中で首を傾げる。


客人として招待されもてなしてもらっている

以上、自分から帰宅を匂わすのは、

もてなしに不満があると取られる。


どうしよう?


来た時同様に、身一つで言える程の状態で

来ているのでこのまま馬車に乗る事もできる。


楽しそうに談笑をするアメリア達を見つつ

少し不安に思うが、そんな考えは表に

出さない様にし、会話を聞き楽しんでいると


「もう、夜も遅いわ。

明日の早朝にお送りするのが良いかしら」


クロエ様のさりげない気遣いの言葉に

公爵様が頷き、壁側に控えていた従者さんに

視線を送ると、小さく頷く姿を見て


今夜もお世話になる事を理解し、

了承の意味もこめ頷き返すと


「寂しくなるわ」


アメリアの言葉に


「最初は1泊の予定だったのを、

ご厚意でもう1泊増え、更にこちらの都合で

今夜も宿泊してもらのよ。我儘はいけないわ」


クロエ様が慈愛の色を声にのせアメリアへ

伝えると


「そうですけれども、とても楽しくて」


顔を下に向け、不満の色を強く告げる

アメリアに伯爵様とクロエ様が顔を

見合わせた、微笑ましそうに

でも、困ったように笑い合った後、


「アメリア」


伯爵様がアメリアの名前を呼ぶのと同時に

1人がけのソファから立ち上がり、長ソファに

腰掛けていたアメリアの隣に座った後、


「その気持ちよく分かるよ。

だけど、彼女のご両親や弟が心配をしている

事は理解しているのだろう」


優しく柔らかい声でアメリアの気持ちに

寄り添う伯爵様に言葉にアメリアは頷き返すと

伯爵様は愛しむ様に抱きしめ


「また、来てもらおう。

それで良いかい?」


続けて告げた伯爵様の言葉に頷く姿が見え、

クロエ様がホッと安堵の息をこぼしたのを

耳が拾った。


仲の良い姿を微笑ましく見守りつつ、

ディランを心の片隅で恋しく思い


私も帰ったらディランを心ゆくまで

抱きしめよう。


心の中で決めていると、アメリアから

名前を呼ばれ返事を返し


「また、来てくださる?」


普段の自信に溢れ力強い雰囲気とは違い

どこか断られるのではないと不安の伝わる

声と表情に


「はい」


力強く頷き返すと、幼子の様に笑い

クロエ様と伯爵へと視線を向けると

微笑ましそうに微笑み返す姿を眺め、

仲の良い家族の話に耳を傾けた。


時折、愛おしそうに目を細め聞かせてくれる

幼くておませなアメリアの話を、微笑ましく

聞き、アメリアは恥ずかしさを誤魔化すために

ご機嫌を損こねた様に見せ、公爵様が慌て

謝罪とアメリアが可愛いく愛おしいがゆえだと

言い募る姿に


微笑ましく幸せを分けて貰い、

気が付けば日付が変わっており、

皆がそれぞれの部屋に戻り就寝をした。


その数時間後。


その日は霧が濃く、少し先でも見えない程の中

音を立てない様に馬車が用意され、


早朝にもかかわらず見送りに来てくれたアメリアに


「ありがとう。とても楽しかったわ」


お礼を伝えると


「こらこそ我儘を叶えてくださり、ありがとう」


アメリアからもお礼を貰え、互いに見つめ合った

後、名残惜しい気持ちはあるものの、馬丁に

屋敷の裏口に止めてもらう様にお願いし、

馬車に乗り込んだ。


別れの言葉はお互い言わず、ただ手を振り合い

ゆっくりと動き出した馬車の窓から、アメリアの

姿が見えなくなるまで眺め続けた。


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