弟は眠れない
一組の来客が残るという事で
姉様の部屋で一夜を過ごす事になり、
中々決心がつかず身動きができなかった
ものの
「お帰りになったら謝らなければ」
深夜も深まったという事でフレディに促され
就寝の身支度の為に入浴の準備の途中で
ポツリと呟いた言葉に、
「気にないと笑顔で許していただけそうですが、
気持ちは大切ですからね」
入浴の手伝いをしてくれるディランと共に
バスルームに入り手早く済ませ、就寝をする
準備を整えベットに入る気になれず悪足掻きの
様に本棚へ足を進め、目に入った本を1冊抜き取り
ソファへと腰を下ろした。
先ほどまで読んでいた冒険記はとても面白く
引き込まれてしまい、あっという間に読み終えて
余韻まで楽しんだ。
話には聞いていたたが、人と関わる事が苦手そうな
あの本屋の店主が、見知らぬ国へ行き、そこで
生活する人々と話、交流を持ち仲を深めるという
のは想像しにくいかったが、自ら進んで行う姿が
とても魅力的で、知らない知識や考え方を知る彼の
中立な考えと文章の作りは、感銘を受けたし
書類作りの参考にもなりそうで、
新たに手に取った本を期待し捲っていると、
フレディの雰囲気が警戒の色を濃くし、扉を見つめる
姿に、本を読むフリをし同じ様に警戒し耳を済ませると
自室の扉が開く音がし、驚き身を固める。
両親と共に使用人達はフレディと共に自室ではない
部屋にいる事は知っている。
では、一体誰が？
工房の書類に魔法石の書類。
姉様に関係する物は全て別室に隠してある。
漁られても心配は無いが良い気分とは言えず
顔を顰めつつ気配を窺う様にするが、床に引かれた
絨毯で足音は聞きづらく、気配を読む事も難しいく
扉を見つめ身構えるだけになっていると、
急に見つめていた扉が開き
「こちらに、いらしたのですね」
女性の声が聞こえたものの、
「失礼ですが、どちら様でしょうか？」
ディランが身を挺し視界に入らない様に動いてくれ
顔は見えなかったものの、視線を下に向けると
寝巻きから出ているフレディより細い脚が見え、
深夜にノックもせずいきなり現れた女性に
心の中で不信感と警戒をすると、
「ディラン様がお見えになるとお聞きし、来ました」
聞こえてきた言葉に心の中で唖然とするも、
「お引き取りを」
フレディの固い声と警戒した言葉で要望を告げると
「初めてでなれず、寝られないのです」
お相手をしたいただけませんか？
控えめにと捉える事ができる声を言葉に、
日中ならば紳士として手助けをするが、
誰もが寝静まった時間に名乗りもしない女性。
自分の声で断りたかったが、声を出すと
フレディ通り過ぎ自分に向かってきそうなので
グッと堪え、
「お引き取りください」
自分の存在に気づかれない様に心掛け、
フレディに全てを任せる。
「貴方、従者ですよね？
話にならないわ。ディラン様を呼んで頂戴」
同じ言葉と動かないフレディに怒りを覚えた
様で言葉使いが荒くなるが
「侯爵令嬢様、お引き取りを」
身分を振り上げるならは、身分で返すのみ
と、言わんばかりのフレディの言葉に
「従者の存在で何よ！」
手の届かない距離と慎重に取っている
フレディに彼女の両親が何かあった言ってきた
時は、全てを持って助ける事を心に決め、
見守っていると、
「何よ。覚えておきなさい」
怒りをフレディにぶつけた後、勢い良く振り
返った為に隙間から見えたピンク色の髪に
一瞬、マリー嬢かと思ったが、
彼女は夜会にでるマナーをまだ身に付けて
いないと、淑女教育をしているアメリア嬢の言葉で
今回の夜会と王家主催の舞踏会には不参加だ。
ならば、あの女性は
平民との間でできた侯爵様の忘形見と噂されている
女性か。
扉を閉める大きな音に眉を顰め、重々しい息を
吐き出したのち
「フレディ、助かった。ありがとう」
自分を身を挺し助けてくれたフレディに礼を
伝えると、
「勿体無いお言葉。ですが先程の方は些か」
語尾を濁したフレディに言いたい事は分かると
頷き返し、
「何か訴えて来たら、こちらで対処する」
部屋にいた事を表にし証人として発言する事を
伝え
「気にする必要は無い」
改めて伝えると、
「ありがとうございます」
言葉と共に胸に手を当て一礼をくれ、このまま
警戒の強い雰囲気を保ちつつも
「フレディも疲れただろう」
座る様にソファに視線を向けると、
「お心使い、ありがとうございます」
吊り上がっていた目尻が緩み、普段のフレディの
表情に戻ったものの
長い夜になりそうだな。
先程の事で諦めて寝てくれていれば良いが、
再びを警戒し、フレディと共に眠れない一夜を
過ごす事となった。
間も無く梅雨入りでしょうか？
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ネタバレを含みますが短編に本編終盤の弟ディランの心境と日々を書いております。
お時間ありましたらお読みください。
https://ncode.syosetu.com/n4082hc/
フッと思い付き新しい話も書きました。お手隙の時間ありましたらお読みいただけると嬉しいです。
お兄様、隣に居る令嬢は誰です？婚約者のお義姉様はどうなさったの？大変！廃嫡とざまぁを回避しなければ！
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