姉、弟を恋しく思う
「次はこれを着せて頂戴」
「本格的でなくても良いわ。
髪を上げて欲しいの」
クロエ様の指示で着替え、アメリアの言葉で
下ろしていた髪を纏め上げられると首の後ろに
風が当たり涼しさを感じたものの、
数時間前から始まった着せ替え人形の様な
時間は大変ではあるものの、さまざまな刺繍が
見れ、様々な生地に触れる事ができ
勉強になる事も多くて感謝の気持ちもあるものの
普段着慣れないドレスに気後れするデザインに
宝石、コルセットの苦しさに重さもあり、
ディランに会いたい。
会って抱きしめたい。
少し硬いけれどサラサラな髪を撫ぜ回したい。
疲弊してゆくと共にディランへの会いたい
気持ちが増えてゆき
数時間前に別れたばかりなのに、もう
会いたい。
心と頭の中で恋しく思いつつ、楽しそうに
ドレスと身に纏っている自分を見ている2人に
気持ちを悟られない様に笑顔を浮かべる。
片手の数を超え、まもなく両手も折り返しに
差し掛かる頃、
「少し休憩をしましょう」
クロエ様の言葉に、アメリアも頷き
「エスメも疲れたでしよう?
お菓子を用意させるわ」
ソファへ座る様にと促されたものの、
身に纏っているドレスを脱ぐ事は無いようで、
スカート部分を軽く蹴り歩きやすいように空間を
作り慎重に歩き、
膝の力を使い、重さでお尻を落とさない様に慎重に
腰を下ろしソファへ座った。
失敗無く座れた事へ安堵の息を溢すと、すぐさま紅茶と
エッグタルトが置かれ
「ありがとうございます」
顔を向け、紅茶を置いてくれたメイドさんへお礼を
伝えると少し驚かれたもののすぐに表情を戻し、
目礼をし足音なく壁際へ控える姿を目で追っていると
「エスメ、温かいうちにいただきましょう」
アメリアの言葉に顔を戻し、クロエ様とアメリアに
習う様にカップを手に取り紅茶を飲んだ。
暖かく、口から鼻へと通る香り違い茶葉の香りは
花香と口に広がる爽やかな渋み
「グロウンティーですね。とても美味しいです」
先程のお茶会同様に紅茶の感想を伝えると
「ええ、高地で生産されている茶葉よ。
気に入って貰えて良かったわ」
アメリアの言葉に、頷きかけたもののここ最近
ディランとのお茶会で茶葉の生産と味の当て合いを
するお遊びの中で出てきた茶葉の名前ではあったが
「ハイグロンティー」
ポッリとこぼした名前に
「ええ、そうよ。エスメは物知りね」
正解だったようでアメリアの言葉と先程の気遣いに
どう返事を返せば良いのか分からずにいると、
「親友同士の気心知れた場、気にしなくても良いわ」
クロエ様の優しい気遣いの言葉に、
「はい。ありがとうございます」
お礼を伝えると、
「エスメは紅茶はどうやって覚えたの?」
雰囲気を変えるように質問をくれたアメリアに
「ディランとお茶会をしている時に、名前と生産地を
当てる遊びを最近始め覚え出したの」
隠す事なくそのまま伝えると、
「まぁ、楽しそうな事をしているのね」
アメリアは少し驚いたもののすぐに笑顔に戻り
「マリーさんにも、エスメみたいに覚えて
いただこうかしら」
次に出てきた言葉に淑女教育の1つだと知り、
心の中でマリーに声援を送りアメリアに言葉に
頷き返すと
「良いかも知れないわ。硬いお茶会では緊張もあり
記憶に残りにくいでしょうし」
クロエ様も賛同の言葉を告げた時点で、マリーの
教育方針が決まり
「良い案を貰えて助かったわ。ありがとうエスメ」
アメリアの中で1つでも心が軽くなった事を
嬉しく思い
「お役にてて嬉しいわ」
アメリアと微笑み合い、クロエ様を交え
学園生活の話で花を咲かせていた。




