姉、出発する
連日続いた雨は今日も降り、空には
濃い厚い灰色の雲が空を覆っており
日中という時間なのに薄暗く、
部屋の中ではランプと共に火の魔法石で
灯りを作っており、
自室を出て隣の部屋にいるディランへと
会う為にノックをした後、出迎えくれた
フレディにお礼を伝えた後、
「ディラン。灯り足りてる?」
椅子から立ち上がり出迎えくれたディランへ
部屋に来た目的を尋ねると、
「お心使いありがとうございます。
姉様のお陰で十二分に足りております」
部屋全体を照らすほどの灯りは無いが、
机の上やその周辺を照らすだけの灯りはある様で
「良かったわ。暗くなったら遠慮せずに言ってね」
魔法石の効力も無限では無いので尽きて終えば
灯りが消えてしまう。
できれば新しい魔法石に変えるか、空になった
魔法石に火の魔術を入れるかしなければならず、
確認したほうが良いかしら?
屋敷の至る所に置かれている魔法石にの確認を
するべきか考えていると、
「姉様」
ディランからの呼びかけに意識を戻し顔を上げると
「宿泊の準備はできておりますか?」
突然の質問に、
「ええ。いつでも行ける様にしてあるわ」
頷き笑顔で返すと、
「そろそろ、出発のお時間かと思います」
続いて返ってきた言葉に
「そうね。楽しみすぎて落ち着かないわ」
初めて親友であるアメリアのお泊まりでの遊びの
誘いに、嬉さと楽しみで心が落ち着かない事を
伝えると、
「楽しんできてくださいね」
微笑ましそうに小さく笑いながらくれた言葉に
頷き返事をすれば、3回のノック音が聞こえ、
フレディが対応すると
「エスメ様、馬車の準備が整った様です」
伝言で伝えてくれた言葉に、
「ありがとう。このまま行きます」
返事をし、
「ディラン。行ってくるわ」
出かけることを伝えると、手を差し伸べてく
れたので、その手をとり馬車までエスコートを
してた。
初めて見る馬車に緊張しつつ、マルチダが
泊まりの荷物を馬車に乗せてくれているのを
視界の端に入れながら
「ディラン、フレディ行ってくるね」
それよりも楽しみが強く、少し早口で伝え
初めて会う御者さん挨拶をお礼を伝え足取り
軽く馬車に乗り込み、窓を開け
「行ってきます」
見送りに来てくれたディランとフレディと
マルチダに挨拶をすると
「行ってらっしゃいませ」
ディランが代表で挨拶を返してくれた。
ゆっくり動き出した馬車の中、見えなくなるまで
ディラン達を見つめた後、窓を閉め、
1人馬車に揺られる。
自分以外居ない馬車は初めての体験で、
流れる街並みを眺めながら楽しんでいたものの
同じ箇所をぐるぐる回ってる?
よく似た風景と捉えるには難しい程に良く似た
建物と風景に首を傾げつつ
御者さんに声をかけるべきかしら?
浮かんだ案を実行するべきか悩む中
もしかすると急遽予定が入って、時間を調整して
いるのかもしれないわね。
もう一つの考えが浮かび、声をかけることを止め
流れる風景を楽しむ事に決めた。




