姉、前世の知恵を活用する
「エスメ様」
心身疲労困憊で熱を出し寝込んだディランの枕元に椅子を置きサイドテーブルに置いてあった本をんでいたが名前を呼ばれ本から顔を上げた。
「フレディ、どうしたの?」
音も気配も無く現れたフレディ顔を向けると
「そろそろお休みになる時間かと」
微笑みながらの言葉に部屋の周りを見渡すと窓にはカーテンが引かれランプのには明かりが付いていた。
「もうそんな時間なのね」
ため息混じりに溢した言葉に
「集中してましたからね。どんな内容の本ですか」
少し腰を曲げサイドテーブルの上に広げていた本を覗き込むフレディを見ながら
「医学者が書いた本よ。ディランの枕元にあったんだけど読んでいると勉強になって」
人体の絵と共に書かれている説明に病気や怪我の特徴や対処法が書かれているがディランが特によく見ていたページなのか栞が時折挟まれている。
骨にかするページに骨折時の対処法と経過観察
発熱時の対処法に発熱を起こすメカニズム
どれも身に覚えがありディランにどれだけ心配をかけてしまったのか申し訳なさも感じつつも無知だということがどこれ程怖い事なのだと知る事ができた。
夕方に目を覚まし数口のポタージュと薬を飲むと再び眠りにつくも日が落ちるに従いディランの熱は上り額に乗せている布を何度も水に浸し冷やしてから額に乗せる事を繰り返す。
一向に引く気配を見せない熱にフッと前世の記憶が蘇る。
頸動脈や脇と股下を冷やすと熱が取れやすい。
確か本か資料で読んだ記憶がある。
小さく頷きディランの額にある布を取り、盥の入った水に魔法を発動させ表面に薄く張った氷を手で割り布を浸し軽く絞り、ディランの首に布を当ててしばらく様子を見ると少しだけ呼吸が楽そうになった様に見えた。
「エスメ様一体何をなさっているのですか?」
口を挟む事なく見守っていたフレディが不思議そうに訪ねてくるので
「首に大きな血管があると本に書いてあったから冷やしたら楽になるかと思って」
へにゃりと笑いフレディに答えると
「血管ですか?」
さらに不思議そうに聞いてくるので
「本によると血管は血の道らしくて身体中を通っていると書いてあるから熱が取れるかと思って」
本を開き血管に書かれているページをフレディに見せなから告げると
「成る程。ではこの後は私が引き受けますのでエスメ様は就寝の準備をしてください」
頷きと共に就寝を促されるも
「もう少しディランと一緒に居たいのだけど」
目尻を下げ告げるも
「お気持ちは分かりますがエスメ様が同じ様に熱で寝込まれた時はディラン様に寝て欲しいと告げていた記憶があります。ディラン様もエスメ様が起きていたら同じ様に思われるかと思います」
従者の表情と言葉で諌められ
「分かった。後はお願いね」
仕方なく頷き椅子から立ち上がり部屋に居たメイドを連れディランの部屋から出て自分の部屋で就寝の準備をしベットに横になった。
明日起きたらすぐにディランの所へ行ってフレディと交代しないと今度はフレディが倒れてしまう。
後、起きたらすぐに朝食をディランの部屋で食べることをメイドに伝えないと。
ふんわりと匂うラベンダーの香りを深呼吸し体の中を満たし瞼を閉じる。
どこからか聞こえてきた笑い声を寝返りをし振り払い眠りについた。
寝ていたはずなのに体がビクリと動き驚きで目を覚ます。
ゆめかぁ
まさかの階段から落ちる夢を見るなんて。
大きく息を吐き出し、瞼を閉じ暗闇に身を任せるも再び目を覚ましてしまい溜息と共に眠る事を諦め火魔法を発動させ部屋を明るくしベットから起き上がりソファに腰掛ける。
ぼんやりと何も考えずに過ごすもすぐに飽きてしまい、ソファから立ち上がり本棚から王都の屋敷から持ってきた本を手に取り再びソファへ腰を下ろした。
文字を目で追いかけ理解をしていく。
火、水、風、土、木、そして光と闇
まだ使ったことの無い闇魔法はどういった魔法なのか分からず1人の時間に調べてはいるものの、発動できる人が少なかったのか記載が数行しか無く、どのような魔法なのか全く思い浮かばなかった。
前世で小説やゲームで闇魔法はあったけど光魔法の事が多くてあまり記憶に残ってないのよね。
日中に部屋を暗くできるとかかな?
心を惑わしたり、洗脳したりとか怖い魔法じゃなければ良いけど。
光魔法の記載の多さとの差に嫌の予感を感じ
未知でどのような魔法なのかが、分からない内は発動しない様に気をつけよう。
ひっそりと決心し新たにページを捲れば、再び光魔法の記載があり
すごい魔法なのだと作者の熱量と興奮を感じ取れ呆れながらも読み進める。
病気に怪我は治せるが、個人の魔力の領と精密差で治療できる事が変わってくる。
医者要らずではあるが数十年に1人生まれてくるかの割合である。
光魔法を発動できる者は天からの使者、もしくは女神である。
「どれだけ光魔法が好きなの」
呆れの言葉がつい音とな溢れるも、
確かに病気も怪我も治るなら奇跡か。
考え直し、読み進めてくと気が付けば外から鳥達の声が聞こえ、慌て火魔法を消し本を起きベットへ入り横になった。
暖かくなったベットで微睡みの中、聞こえてきたノックとメイドの挨拶の声に返事を返すと新しい1日が始まる。
朝の準備が終わり寝る前に考えていた事を伝え、ディランの部屋の扉をノックすれば騎士団長が姿を見せ
「おはようございます」
互いに挨拶をすまし部屋に入れて貰い寝ているはずのディランに近づくと
「おはようございます」
起き上がり、ベットに腰をかけているが顔を赤くし息も苦しそうにするも挨拶をくれるディランに
「おはよう。体調はどう?」
お伺いをすると
「昨日よりは楽になりました」
微笑みと共に返された言葉に頷き
「薬が効いてるのかもね。少しでも楽になって良かったわ」
先程までフレディが座っていたであろう椅子に腰掛けながら返すと
「姉様が一日中看病をしてくれたと聞きました。ありがとうございます」
お礼を言ってくれるので
「看病だなんて大袈裟よ。ただ座って本を読んでいただけだもん。お礼ならずっと看病してくれているフレディに伝えるべきだわ」
自分は何もしていないのだと伝えるのと同時にフレディの行動を伝えると
「そうですね。その通りですね」
頷いた後に視線をフレディに向け
「昨日はありがとう。寝ていないのだろう?今日はゆっくり休んで欲しい」
ディランの口から出た言葉にフレディの微笑みの後の驚き何かを言う為に口を上げるが
「ディランは私が見ているからフレディは休んできて」
ディランの言葉に便乗し告げると
「では、診断と結果を聞きましたら休ませて貰います」
戸惑いながらも主人であるディランの言葉に従う言葉にホッと息を吐き、朝食後と医者が来るのを待った。
第50話
秋を感じたくて栗おこわを食べました。とても美味しかったです。
ブックマークに評価や星を押していただきありがとうございます。
また誤字脱字を教えていただきありがとうございます。
ネタバレを含みますが短編に本編終盤の弟ディランの心境と日々を書いております。
よろしけれお読みください。
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