姉、弟の準備を見守る
後、1時間で程でお客様を迎える時間になり
ディランがお父様、お母様との打ち合わせを
終え2回のノック音が聞こえソファから立って出迎え
「姉様、ただいま戻りました」
少し疲れた様に見たものの、これ以上言葉に出すと
ディランを気にさせて、隠してしまう気がし
「お帰りなさい」
見て見ぬふりをし、いつも通りに出迎えると
「エスメ様、ディラン様はこのまま夜会の準備に
入らせていただきます」
フレディの言葉に頷き
「いってらっしゃい」
そのまま見送るとその足で入浴へと足を向けた。
再びソファに座り、先ほどまで読んでいた
本を改めて手に取り読み始めると、足音が
聞こえたので顔を上げると
お風呂上がりのディランとその手伝いをしていた
フレディが部屋に戻り、
部屋の広い場所でフレディの手を借り礼服へと
着替えるのを眺める。
出掛ける以外は楽な洋服で過ごす事が多いが
礼服へと着替えるディランを眺めると、
様々な記憶を思い出すとそれに釣られ様々な
感情が心の中に生まれ、
ディラン、大きくなって。
ようやく声には出さないが、混じり合う感情を言葉に
表す事ができた。
それは前の人生で子供達が、自分から離れた時や初めて
制服に袖を通した時の感情とよく似ており、
嬉しさと寂しさが混じった感傷に入り少し目を潤ませ
たが、瞬間たりとも見逃せないと思い直しディランを
穴が開かんばかりに見つめていると、
「姉様、どうかしましたか？」
不思議そうに尋ねてくるディランに微笑み返しつつ
「格好良くなったなぁ。て、思ってね」
沢山ある感情の1つを声に出して伝えると、数度瞬きを
した後、
「ありがとうございます」
はにかんだ様に微笑んでくれ、
「今日もディランが可愛い」
少し重めの息の中に感情を混じらせ言葉と共にこぼすと
フレディからは暖かな目で微笑み返され、
互いに目を合わせ無言のまま深く頷きあった。
ディランはいつ何時も可愛いし格好良い。
家族の欲目と言われ様と、なんと言われても
自分の中にある思いは変わらない。
領と王都で離れて暮らしていた1年。
たかが1年と言う人もいるかも知れない。
けれど、子供の成長の1年は測りくれない程に成長し
表情や感情、性格を成長させてゆく。
お父様のお考えに寂しさはあったが反対はなかった。
そろそろ弟離れをするべきだとも思っていた。
1年ぶりに会ったディランは全てが急成長していた。
立ち会えない寂しさがあったが、自分が居なかったから
からこその成長なので、飛び上がらんばかりに嬉しかった。
勿論、会えない1年間の事は手紙で知っていたが改めて
詳しく聞いたけど。
1年前があって、今がある。
だから今の格好良いディランが見れる事に感謝をすれば
後悔は生まれてこない。
「ディランもこうして大人になっていくのね」
着替えが終わったディランを頭の先から足の先まで
じっくりと満足いくまで眺めた後の言葉に、
言葉の意味が理解できないと不思議そうに首を傾げた
ディアンに微笑み返し、
隣に座る様にソファをか歩く数回叩き促せば、
従うように座ってくれ、互いに無言のままで居ると
瞬きより早く時間はすぎ、
「では、行ってまいります」
「行ってらっしゃい」
何かあったら読んでね。
続けて言いたかった言葉をぐっと飲み込み
フレディと共に部屋を出ていくディランを見送った。
ここから先は貴族としての生活。
ディランに何かあっても助けに行くには手が届かない
場所。
頑張っているディランを見る事は叶わない。
この日の為に準備してきたディランとフレディを
信じて見送る。
心配はあるものの、これも経験できる良い機会と
考えを改め、部屋の主が居なくなったソファに座り
軽く息を吐き
ベストも幼い感じと大人な感じが出て良かったけど
カーマベストも来て欲しい。
シャツのみの背中、
とても素敵だと思う。
何なら作れば良い。
深々と力強く頷き自室に戻る事をマルチダに伝え
ディランの部屋を出た。
燕が飛ぶ姿を見ました。初夏へと移る時期なのですね。
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ネタバレを含みますが短編に本編終盤の弟ディランの心境と日々を書いております。
お時間ありましたらお読みください。
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フッと思い付き新しい話も書きました。お手隙の時間ありましたらお読みいただけると嬉しいです。
お兄様、隣に居る令嬢は誰です？婚約者のお義姉様はどうなさったの？大変！廃嫡とざまぁを回避しなければ！
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