姉、自分の中にある考え
昼を過ぎると扉の向こう側から
指示を出す声とそれに返事を返す声に
沢山の人の足音が聞こえる様になると
ディランが少し緊張し出したの分かったものの
招待客が気心知れている親友達と言えど、
初めての事に気負い、身構えてしまうのは仕方が
無い事。
前の人生で赤子から高齢者まで生きてきた経験が
あって、
全て完璧だと思い行った後の身内や上司からの
反省やアドバイスは、受け入れるのに時間がかかる。
全部やり直しと言われると気力が失われ否定的に
受け取ってしまい心が疲れ折れる原因にもなりやすい。
その点8割の出来だと、注意を受けても
完璧では無いので心に受け入れる隙間もあれば、
全部やり直しになっても8割なので時間に余裕も
あり、身内や上司からの注意点を改めて見直せる
やる気も出やすい。
勿論この事が知り理解できて実行できる様になったのは
子育ても終わり、中年から高齢者に差し掛かる年に
なってからだった。
社会人の時や子育ての時。
全てに全力を注ぎ、完璧でなければならないと
思い込んでいたからもあるし、その背中を身近で見ていた
事もあった。
要領の良い人、なぜあの人は、あの人ばかり
と思う人は8割の考えと行動を実行していたのだと
理解できた。
頼る事は悪いことでは無い。
助けを求める事も悪い事では無いし
弱虫でも無い。
寧ろ、友達の立場なら、親の立場なら
頼って欲しいし、助けを求められたいし、
相談にも乗りたい。
苦しんでいる姿より笑っている顔が好きだもの。
友達の立場でも親の立場でも気が付いていても
聞いても良いのか分からない。
だって他人であり私ではないから。
親でも子供の全てが分かる事無い。
尋ねても答えが返るとは限らないから
その匙加減が1番難しい。
前の人生は色々あったなぁ。
体の中に重々しい息を吐いた後、横目で
ディランを見ると、緊張からか顔色が悪く見え、
「ディラン。お父様もお母様も近くにいるから
大丈夫よ」
夜会中1番近くに居て助けてくれる人の名を
伝えるとゆるゆると顔を動かし私の顔を見て
くれたので、
「お父様は難しいかも知れないけどお母様が居るわ。
いざとなったら絶対助けてくれる」
どの時代も母や父は強い。
だから。そう言おうとしたもののふっと思い出した
事があり、
「少し待っていて」
すぐに戻るわ。
そう言い残しソファから立ち上がりマルチダが扉を
合わせた様に部屋の扉を開けてくれディランの部屋を
飛び出し、自室の扉を開け思い出した物を手に取り
再びディランの部屋に飛び込み勢いのまま先程座っていた
場所に腰を下ろし、
「ディランにコレをプレゼントするわ」
親方さんにお願いをし、ディランの為に作って
貰ってブレスレット木箱から取り出したし、
利き腕では無い右手首につけると、魔法石が
それぞれの光を発し、
「私ができる全部の魔術を魔法石に入れて、
親方さんに作ってもらった世界に1つだけの物よ」
記憶にある手首より少し太くなっていたが、
親方さんの配慮もあり無事ディランの手首に
つける事ができ、
「大役を務めるディランへのご褒美よ」
ほんの少し大袈裟に伝えると、ブレスレットを
数秒見つめた後、顔を上げ
「お心使い、ありがとうございます。
大切に使わせていただきます」
ふんわりと笑いお礼をくれたディランに
「どういたしまして」
そう返事を返し改めてディランの顔を見えると
先程の緊張は薄れた様で、安堵の息をそっと
出し、嬉しそうにブレスレットを眺める
ディランを見ていると
「ディラン様、そろそろ夜会のご準備を」
壁側で控えていたフレディがディランの元へ
やってきて告げた言葉に、ディランが真剣な
表情で頷き、
「姉様」
この後どうするかを尋ねるための呼びかけに
「この部屋に居るわ」
返事をか返すと頷きで許可をくれ、
「いってらっしゃい」
まずは、お父様とお母様に会い夜会の打ち合わせ
をするとの事でソファから立ち上がり、
ディランとフレディを見送り、再びソファに
腰を下ろし、大きな息を吐いた。
散りゆく桜も綺麗でいつまでも眺めていられますね。
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誤字脱字を教えていただきありがとうございます。
修正が遅れており申し訳ございません。
ネタバレを含みますが短編に本編終盤の弟ディランの心境と日々を書いております。
お時間ありましたらお読みください。
https://ncode.syosetu.com/n4082hc/
フッと思い付き新しい話も書きました。お手隙の時間ありましたらお読みいただけると嬉しいです。
お兄様、隣に居る令嬢は誰です?婚約者のお義姉様はどうなさったの?大変!廃嫡とざまぁを回避しなければ!
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