姉、夜会の準備を手伝う
ディランから夜会の話が出たその日、
生姜の辛味の強いパウンドケーキを嬉しそうに
持って帰るフレディと共に自室に帰るディラン
を見送り早々に机に戻り羽ペンを手に持ちお母様へ
キッチンへの使用許可と共に作りたい料理と理由を
書いた手紙をマルチダに託した。
その数分後、
「エスメ様、ご希望通りキッチンの使用許可を
いただけました」
お母様からの回答と共に自室へ戻って来てくれた
マルチダの言葉に喜んでいると、
「クック長と共に夜会に出すメニューを考えて欲しい
との要請も受けております」
聞こえて来た言葉に喜んでいた感情を1度押さえ
真剣な表情で頷き、
「詳細はクック長に聞いて欲しいとの事でした」
続け様に伝えてくれたマルチダに頷き返す。
ディランの話では、ディランをはじめお父様や
お母様と仲の良い人達を招待しての和気藹々と
食事をする夜会だと聞いている。
お母様の仲の良い方々もいるんだもの、
それは料理に力を入れたいよね。
お母様の期待に応えられる様に頑張ろう。
心の中で気合を入れ、まずはクック長へ明日から
キッチンへ邪魔をしていいかを書きマルチダに
手紙を託せば待つ時間もなく返事を持って
マルチダが帰り
「ぜひお願いしたい。との事とでした」
歓迎を受ける言葉に安堵の息を溢し、
明日の予定を立て始めた。
何を作れば皆が喜んで食べてくれるだろう。
新しい料理は抵抗があるかな?
だったら、今まで作ったジャガイモの料理を
味と形を変えて出した方が喜ばれるかな?
でも、元の味が好きという人もいるだろうし。
料理について考えると無数の悩みが出てきて
答えは見つからないので
明日クック長に相談しながら決めればいいか。
区切りをつけて、就寝し次の朝は手早く工房の
仕事を終え、ミランダとミラへの手紙を書き終え
いつもの様にマルチダと共に身なりを整え、
「ディラン、おはよう」
「おはようございます。姉様」
ディランの部屋で朝食を食べ、食後の紅茶を飲み
一息ついた後、
「頑張ってくるから楽しみにしててね」
キッチンへ向かう事をディランとフレディに告げ
ソファから立ち上がれば、
「はい、ですがご無理はなさいませんように」
同じ様にソファから立ち上がり、見送りをしてくれ
笑顔で手を振り自室へと戻れば、
ゆっくりと息を吸い体に空気を送り込んだ後、
手早く生成色のワンピースから紺色のメイド服に
着替え髪を結い上げ室内帽を被り、マルチダが
開けてくれた自室の扉を出てキッチンに向かう。
途中、普段通りに掃除をしているメイドさん達は
気合の入った表情で掃除をしており、通りすがりで
耳に入った会話は花瓶やテーブルクロスなどの確認を
早口で行う会話で、
1週間もある。ではなく、1週間しか無いと考えた
方が良いのかしら?
皆、普段には見られない忙しさに首を傾げつつ
キッチンへ入れば、皆が手を動かし時に指示が
飛んでいる中、邪魔にならない様に端を歩き
「クック長」
目的の人物に声をかけると、真剣な表情から一変
笑顔で迎えてくれ
「お待ちしておりました。早速ですが申し訳ないのですが
ご相談したい事がございまして」
案内された場所はクック長の部屋で、キッチンとの
境目にある扉は開けたままにしてマルチダと視線を
合わせた後、どうぞと座るように促してくれたソファに
腰を下ろすと、クック長から数枚の紙が差し出され、
「拝見します」
見る事を伝えた後、受け取り目を通せば、
夜会に出す料理名が書かれていた。
普段食べている料理に私が考案したジャガイモの料理
とプリンも書かれており、
「招待客の皆様が食べたいと仰っているそうなんです」
困り顔で告げるクック長にどう返事か返して良いのか
迷うものの
「クック長の腕の評判が良いからでは?」
ありきたりの言葉だったが思ったままを伝えれば
「身に余る光栄ではあるのですが、本当に良いのかと
思いまして」
それだけ親しき人達を招待していると判断したが、
クック長のだからこそ腕によりをかけて美しく
美味しい料理を振る舞いたい。
その気持ちも分かるので、どう返そうか考えていると
「そういえばディランから夜会は2種類あると
聞きました」
フッとディランの言葉を思い出し、
「親しき人達が集まる夜会と仕事関係やこれから
関係を作りたいと思う人々を招く夜会があると」
表情を固くしながら教えてくれた言葉をそのまま
声に出した後、
「今回の夜会は親しき人なら肩に力を入れて
身構えなくても良い人達のはず。だからお母様も
クック長の得意な料理でおもてなしをしたいと
考えたのではないかと思います」
自分の考えを伝えれば、納得した様に頷いてくれたので
「なので、次の夜会がクック長の考えた料理を出す
機会になると私は思います」
無意識に歓喜の声を溢し、料理の美しさに見惚れ
美味しさで頬を緩ませ笑顔になる。
それは今回の夜会ではなく次の夜会。
そう伝えると、大きな体が揺れる程に深く頷いてくれ
「ありがとうございます。やはりエスメ様にご相談して
良かったです」
優しげな笑顔と共にくれた言葉に、憂が晴れて
良かったと安堵の息を体の中に落とした後、
クック長と共に手渡され料理名が書かれた紙を見て
作る料理かそうでないか。
味つけを増やした方が良いのではないか。
料理を出す順番や皿にどう盛り付けるかなどを
話しているとあっという間に日が暮れており
初日を終えた。
一気に桜が咲き始めましたね。お花見ができるか? まだ咲き誇って欲しいなぁ
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ネタバレを含みますが短編に本編終盤の弟ディランの心境と日々を書いております。
お時間ありましたらお読みください。
https://ncode.syosetu.com/n4082hc/
フッと思い付き新しい話も書きました。お手隙の時間ありましたらお読みいただけると嬉しいです。
お兄様、隣に居る令嬢は誰です?婚約者のお義姉様はどうなさったの?大変!廃嫡とざまぁを回避しなければ!
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