姉、もどかしさに耐える
苦しそうな息をしながら色をに鈍らせた瞳で医者と話をしているディランの姿を見ているともどかしく、こんな時ぐらい貴族としての態度を崩しても良いのでは無いかと苛立ちも出てくる。
「疲労ですね」
お父様より少し上に見える医者の言葉に
「ひろう?」
無意識の言葉を溢すと
「体が疲れ過ぎているので休んでくださいと訴えているのです」
子供の自分にも分かりやすく説明をくれ理解ができると疑問が浮かび
「体を休めれば熱は下がりますか?」
不躾に質問をするも嫌な顔をせず、
「はい、ゆっくり体を休めば元気になります」
穏やかにゆっくり一言一言丁寧に告げられる言葉に頷き、
「私が弟の為にできることはありますか?」
立て続けに質問をすると
「そうですね」
少し首を傾げる姿に釣られ首を傾げてしまうと微笑ましそうに目尻を下げ
「目を覚ました弟さんのお世話をしてあげるのが良いかと」
教えてくれた事に
「はい!頑張ります」
元気良く返事を返すと
「頑張ってください」
応援と後押しの言葉を貰い差し出された袋を受け取ると、
「薬が入っています。熱を冷ます薬と体を元気にする薬です」
弟さんに飲ませてあげてくださいね。
付け加えられた言葉に頷き抱き込んだ。
「明日経過観察も含めた検診に参りますが体調が急変などありましたお声がけください」
自分を通り越し後ろに居るお祖母様へと言葉告げた後、退出する医者に慌て
「先生、ありがとうございます」
お礼を告げると振り向いてくれ
「お大事にしてくださいね」
柔らかな微笑みと気遣いの言葉を貰い先程感じた苛立ちと言葉にできないもどかしさが消え去り、数歩の距離を普段より大きな歩幅で歩けば、
「あねさま」
喉を痛めているのか掠れた声に、ベットサイドに置かれているピッチャーへ手を伸ばすもすかさずフレディが動きディランに果実水が入ったコップを手渡していた。
「大丈夫?」
こんな聞き方をすればディランの事だから大丈夫ですと返事を返してくる事は分かっていたけれど他に聞き方が思い浮かばずもどかしさを感じるも
「ご心配をおかけし申し訳ありません」
先程の掠れ声が少し良くなったものの元気のない声に気付かない振りをし
「気にして無いわ。だからディランも気にしないで」
微笑み、労るように頬を撫ぜるも答えが気に入らなかったのか眉間に皺を寄せ何か言いかけるが
「道中に腕も折って熱も出してディランには心配かけたんだもの。おあいこよ」
それより先に告げれば、
「そうですか」
息を吐きながらの言葉に額に手を当てると今まで体感したことの無い暑さに光魔法を発動させると、
「いけません」
言葉と同時に左手首を握られ
「先生も休めば治ると仰っていました。ですので魔法は必要ありません」
額から離され苦しい表情にも関わらず気遣い微笑む姿に
「でも、魔法を発動させたらあっという間に治るんだよ」
胸が苦しくなり、理解をして貰おうと告げるも
「薬もいただきましたから大丈夫です」
ディランも譲る気は無いらしく魔法を使わないように言うが、苦しそうにしている姿が見ていられず
「ディラン」
手首を掴んでいた手を解き、握りしめると異常な熱さに涙が溢れ出す。
「姉様。大丈夫です。治してみせますので僕を信じてください」
握った手が握り返され告げられた言葉に何度も頷き
「信じるから元気になって」
震えた声で返事を返してしまったが、ディランが微笑んでくれたのを見て持てる力でディランの手を握りかえす。
「痛いですよ」
揶揄う言葉に
「私の愛情よ」
同じ様に揶揄いの言葉で返し少し会話をするも眠たそうにするディランの頭を撫ぜると瞼が下りた。
ディランはああ言っていたけど2日目の夜までに熱が下がらなかったら魔法を使おう。
心の中で決め苦しそにすぐ後ろに控えているフレディに振り返れば、頷きの後に冷やしたタオルがディランの額に置かれると苦しそうにしている寝顔がほんの少しだけ取れたのを見守った。
第49話
言葉が出てこないと集中力が続かず短くなりました。
ブックマークに評価や星ありがとうございます。
とても嬉しいです。
ネタバレを含みますが短編に本編終盤の弟ディランの心境と日々を書いております。
よろしけれお読みください。
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