姉、ワルツを踊る
黙々と魔法石と向き合い魔力を込めて続けると
あっという間にお昼の時間となったが、
「ディラン様とのお茶会もございますので」
一緒に魔力を込めた魔法石を仕分けし保管箱に
片付けてくれいたマルチダの言葉に頷き返し
「そうね。軽い物をお願いするわ」
返事を返した数分後、運ばれてきた野菜たっぷりの
スープと焼きたての白パンを1人自室で食べている。
夜会続きで就寝が遅くなっている両親を心配して
クックがこの時期になると毎日作るのだと、
マルチダから聞き、
休みの間、キッチンのお手伝いさせて貰えないか
お母様に聞いてみようかな。
野菜の甘さを引き出し塩味の塩梅がとても良く、
白パンと共に食べ終え、
「クックに美味しかったと伝えて」
使用した皿を片付けてくれているマルチダに
お願いをすると、短な返事と共に頷いてくれた
のを見届け、
「お昼からは何をしようかな」
無意識に溢した言葉に、
「奥様から最新のファッションプレートが届いて
おりますが、お持ちいたしましょうか?」
拾い提案してくれたメイドさんへ顔を向け
「ありがとう。お願いします」
お礼と共に部屋に運んで欲しいと伝えると
快く頷いてくれ、数分後にはソファの前にある
ローテーブルの机に数冊のファションプレートが
紅茶と共に置かれ、
1冊手に取り、眺めてゆく。
今年の夜会で着用する最新のドレス型から始まり
王妃様が考案したドレスの型があると噂が出ている
記事もあり、
自分が動きやすい為にだけにディランとお母様の
親友であるデザイナーさんと意見を出し合った
ドレスの型に沢山の人が注目をしている事を知り
嬉しく思いつつ、ドレスを着た王妃様もその場に
居る人々の反応も見れないのは残念だけれども、
これだけ注目をされていれば次回のプレートに
記事が載るはず。
それを楽しみに待つしかないわね。
1つ1つ書かれている記事を丁寧に読み、
紙刺繍工房で出している商品の記載されている
ページをじっくりと読み、記事を書いた人の
紹介文を読めば、
新作の期待と共に少し入手しやすくして欲しい。
とも書かれており、
働く人は増えたものの、まだまだ欲しい人には
手に届かないのが現状なのね。
雇用の問題と制作量は比例する事は無く、
ミランダはこれ以上作れば、働く皆が
疲弊してしまう。
そういつかの手紙の書かれていたのを思い出し、
記事から視線を外し、ページを捲れば新作の刺繍の
図案が掲載されており、
お祖母様の手紙に図案を売る事を書かれていた
けれど、
こういう事なのね。
手紙の内容に納得し、じっくりと見ていくと
最終候補まで残った図案の1つの様で、
紙刺繍が手に入らなかった人がこの図案の使い
ハンカチーフに刺繍を刺すという事かぁ
流石、お祖母様とミランダね。
紙刺繍工房の安泰を感じ、ページを捲れば
次に紙刺繍で販売される予定の花と花言葉が
掲載されており、
紙刺繍の事が数ページに渡り書かれており
改めて人気を実感し、働いてくれている
従業員全員とそれをまとめているミランダ
とお祖母様に感謝しページを捲り読み込んでゆく。
「エスメ様」
夢中になって読んでいた様で、マルチダが隣に
立った事にも気づかず、名前を呼ばれ慌て顔を
上げればディランとフレディもおり、
「お茶会へのお誘いに参りました」
ディランの言葉に、
「ごめんなさい。もう時間なのね」
プレートを机に置き慌て立ち上がり、差し出して
くれたディランの手に自分の手を乗せると、
エスコートされ庭へと出て、用意されたイスへ
案内してくれた。
庭の中でもバラが多く咲き、お母様も友人知人を
招いてお茶会を良くする場所であり、お父様も
お気に入りの場所でのお茶会に
心弾ませ、ディランと共に紅茶と焼きたての
スコーンにサンドイッチなどを食べながら、
「昨日、ルイとワルツを踊っとお話しされてましたが」
ディランの言葉に
「気がつくとそういう話の流れになっていて、
マリーのお手本で踊ったのよ」
突然の事ではあったものの、アメリアにお褒めの
言葉を貰ったのでそこそこの出来だったと思っている
事も告げると
「もし、よろしければ僕とも踊ってくれませんか?」
急なディランのお誘いに、
「喜んでお受けするわ」
笑顔で頷き返すとディランは椅子から立ち上がり、
自分の元までやってくると手を差し伸べてくれたので、
席を立ち自分の手を乗せ誘われるままに、
少し広くなった場所へ移動し、互いに手を離す。
スカートを少し摘み上げ礼をした後、ディランの
手が背中に回るのと同時に半歩近ずき、
ディランの肩に手を添えた。
音楽の無いワルツは2人だけが世界にいる様な感覚も
あり、1曲だけではなく2曲目も踊りようやく足を
止めディランの肩から手を離すと、同時に背中に
添えられていたディランの手も離れ、
互いに礼をのた後エスコートと共にお茶会の椅子
へと戻り、マルチダから適温の紅茶差し出され、
ゆっくりと飲み干し、
「すっごく楽しかったわ」
ダンスの感想を伝えると、
「はい。とても楽しかったです」
ディランも同じ様に感想を返してくれ、
2人で一息ついた後
「ディランも今日の夜会でダンスを踊るの?」
なんと無く思いついた事を尋ねると、ゆるりと
首を振り
「いえ、その予定はないです」
返ってきた言葉に
「そうなのね。また私と踊りましょうね」
せっかく上手なのに残念な気持ちと共に
どこか気重にしているディランに励ます様に
声をかければ、少しだけ微笑み頷いてくれた。
寒の戻り中ですね。皆さまご自愛ください。
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ネタバレを含みますが短編に本編終盤の弟ディランの心境と日々を書いております。
お時間ありましたらお読みください。
https://ncode.syosetu.com/n4082hc/
フッと思い付き新しい話も書きました。お手隙の時間ありましたらお読みいただけると嬉しいです。
お兄様、隣に居る令嬢は誰です?婚約者のお義姉様はどうなさったの?大変!廃嫡とざまぁを回避しなければ!
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