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姉、再び忍び込む


暖かな空気に包まれ春の陽気に青い空には時折白い雲が流れるのを見上げた。


左手には箒


周りを見渡し誰もいないのを確認し箒に跨る。


意識を集中させ箒を握る両手に力が籠る。


大きく息を吸い込みゆっくり吐き出していく。


さわさわと風が足元から舞い上がり体を撫ぜ空へと向かって行く。


風の動きを読みタイミングを図りながら体支える為の風を発生させる。


ゆっくりと地面から足が離れ間も無くつま先も離れようとしたその時、


「姉様」


いきなり聞こえたディランの声に意識が向き魔法の発動が全て止まった。


「ディラン?」


振り向きディランを探すも姿が見えず、箒から降り数歩歩き


「ディラン?どこに居るの?」


左右を見渡し呼びかけてみるが姿は無く


「ディラン、どこに居るの」


先程より大きな声で呼びかけてみるも風が吹くだけで返事は返ってこなかった。


「ディラン」


自分の呼ぶ声は確かに聞こえたはずなのに名前を呼んでも姿を現さない事に不安が広がり悪い予想ばかりが思い浮かび出す。


何か出てこれない事情があるの?


怪我をして動けないの?


どこか痛くなって動けなくなってしまったの?


見た事もないディランが苦しくてそうに表情を歪める姿が思い浮かび居ても立っても居られず走り出す。


「ディランどこに居るの」


走っても変わらない風景の中時折男性の笑い声が耳を掠める。


「ディラン!」


息が切れて体が思うように動かせず足がもつれ転け地面に体が当たる痛みに目を閉じ全身に力を入れ衝撃に身構える。


が、一向に痛みも地面に当たる衝撃も無く恐る恐る目を開けると見慣れない天井とふんわり香るラベンダーにホッと息を吐き出す。


ゆめ?


良かった。


心臓の大きな音と早い鼓動を落ち告げるために左手を胸の上に置き深呼吸をする。


耳の奥に夢で聞いたディランの声が残っている。


「ディラン」


小さな声でつぶやいてみるも自分しかいな部屋には相手に届かず消えていく。


右腕に気を付けながら起き上がり部屋を見渡すと暗い中でも目が慣れてきて家具や扉が見え始めベットから足を下ろしゆっくり歩き出す。


確か隣の部屋だったはず。


足音に気を付け扉を開け部屋を出てすぐ横の扉を開ける。


ゆっくり慎重に近づき寝顔を見つめる。


良かった。

眉間にも皺がない


あ、いつもより幼いかも


普段見慣れた表情より穏やかな表情に微笑み慎重にベットに上がり掛け布団を捲り入り込む。


暖かい。


少し冷えた体をディランに引っ付けると熱が移り眠気がやってくる。


「おやすみなさい」


小さな声で溢し瞼を閉じた。


「姉様」


ゆらゆらと揺れる意識の中、聴き慣れた声が耳に届きゆっくり瞼を開け


「おはようディラン」


スッキリとした意識で挨拶をするもどこか怒っている雰囲気のディランに首を傾げると


「いつ、僕の部屋に入ってきたのかご説明願えますか」


お互いナイトウエァとナイトドレスで向かい合い、


「何時だろう?夜中だと思うわ」


聞かれた事に返事を返すと、とても渋い顔をしながら


「姉様。僕は弟ではありますが異性で男でもあります」


絞り出したような低い声に


「分かっているわ」


頷き返事を返したものの


「いいえ、分かっていません。分かっていたらベットに入り込んでくる事はしません」


何か違和感を感じるも


「姉弟だし何より家族なんだもの。誰も気にしないわ」


それに私達まだ子供なのよ


そう言いたかったがディランの雰囲気に口を閉じる。


「姉様。お忘れかもしれませんがここは王都の屋敷ではありません。自領ではありますが初めての屋敷でもあるのです。昨日顔を合わせたばかりの屋敷で働く者達の理解が足らない事もあります」


苛立ちを表に出しているディランを初めて見るが顔が赤く普段より目が潤んでいる事に気付き、ディランの額に手を当てる。


「姉様、話を聴いてください」


戸惑いと驚きの言葉を無視し


「フレディ」


ベット端で待機をしている従者を呼び寄せ


「ディラン、熱が出ているわ」


一言告げれば、頷き手袋を取った左手を額あて


「そのようで」


フレディの見立てと答えに頷き返し


「急いでお祖母様に報告と医者を呼んでもらえるようにお願いしてきて」


指示を出す。


「メイドの皆さんは申し訳ないのですがクックに朝食の変更をお願いしてください。それと盥に水と布を持って来て欲しいです」


壁に控えていた数人のメイドにも指示を出し部屋から居なくなり


「ディラン、先生が来てくれるまで少し寝よう」


頭を撫ぜ、物言いたげな表情のディランを寝かせ掛け布団をかける。


「暑くない?」


髪を顔にかからないように撫ぜながら動かし問い掛ければ


「暑くはないのですが寒くはあります」


先程の苛立ちが無くなりどこかぼんやりとした覇気のない声に


「そっか。何かもう一枚かけれるものがあると良いわね」


誰か来てくれたらお願いするね。


お腹辺りを一定のリズムで優しく触れるように叩きあやしていると眠気がやってきた瞼が閉じかけている姿に遥か昔の前世で子供達にしてあげた様に手を握りながら


「起きるまで一緒に居るから寝て大丈夫だよ」


伝えると安心したのか瞼を閉じ眠りについた。


第48話


忍び込むだけには文字数がお多いような気もしなくもないですが後に必要な事でして


秋の陽気は中々ありませんが秋台風は通常通り来るみたいで被害が出ないと良いのですが。


ブックマークに評価や星ありがとうございます。

とても嬉しいです。


ネタバレを含みますが短編に本編終盤の弟ディランの心境と日々を書いております。

よろしけれお読みください。

https://ncode.syosetu.com/n4082hc/

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