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姉、記憶の無い時間を過ごす


品よく香り高い紅茶をゆっくりと一口飲むと

自分でも気づかなかった様で、身体中の筋肉が

解れ冷えていた体に紅茶の暖かさがじんわりと

染み込んでいく。


カップを置きアメリアにお礼をと顔を向ければ

視線でもう1口飲む様に促され、そのまま一口飲み

カップを置いても良いかアメリアの様子を伺うと

もう1口飲む様に微笑まれたので、それに従い

一口飲んだ。


美味しい紅茶


暖かい紅茶


香り高い紅茶


淹れてくれたアメリアにお礼とマナーに添い

感想を告げたいのに、なぜかアメリアの視線から

告げられる事に体が優先し動いてしまう。


どうして?


なぜ?


自分の体なのに自分の意思ではなく、

アメリアの言葉を優先し動いてしまう。


不思議に思いつつも戸惑い困惑しつつアメリアの

視線の指示のもと紅茶を飲み干し、スコーンに手を

伸ばし、


何故か、クロッテッドクリームもジャムも乗せずに

食べてしまい、


「小麦の甘さとバターの塩味が相まってとても美味しいわ」


全部食べたのち、ようやく喋りたかった事が口から出て

安堵したが、困惑は一層強くなり自分の両手をまじまじと

眺め


「もしかして気が付かなかったけど酷く喉が渇いて、

お腹もすっごく空いていた?」


自分なりの先程の行動の答えを出してみたが、

納得できる様でどこか違和感があり、内心首を

傾げていると


「お褒めいただけ光栄ですわ」


ころころと笑うアメリアの可愛さに心が和むも

自分の中での違和感は消えず、様子を伺うように

ルイを見れば、こちらを真剣な表情の中で様子を

伺い観察するかの様にジッと見つめていたので


「私、今日1日、変だったよね?」


自分の中の違和感を言葉に出し尋ねると


「自分の意思が無い様に動いていた」


どう言う事だと詳しく聞こうとするが、


「今ので分かった。エスメ今日の授業内容と昼食に

何を食べたか覚えているか?」


1人で納得し確信える様に問われた言葉に、教室に

入ってから今までの時間を思い出すも


「覚えていない、かも」


どんな授業をしたのかも、昼食に何を食べたのかも

覚えておらず愕然としていると


「目も虚で、いつも休憩時間になれば色々な事を

話すのに今日は自分から話す事はせず、

問われた事だけに返事を返していて、その返事も

エスメの考えた答えでは無い返事だった」


ルイの言葉に理解が追いつかずにいると


「まぁ、それは」


アメリアの声に視線を向けると、微笑んでる様で

目が笑っておらず何がアメリアの臨戦触れたのか

戸惑っていれば


「原因の目星はついていて?」


鋭く冷たい言葉はルイへと向けられ、


「確信も証拠もない。だが、エスメの様子を見て」


それに応える様に真剣表情で答えたルイに


「報告を待っているわ」


上に立つ立場での言葉と態度にルイは従い頷いた。


2人の不思議なやり取りに声を挟む事ができず、

ただ成り行きを見守るだけになってしまったが


仲が良くても地位の線引きができている2人に

少し思うことはあるが、


それが2人が選んだ距離なのだと納得し、

ポットから空になっている紅茶を淹れ一口飲み


「2人共、紅茶のおかわりはどう?」


いつまでも普段とは違うルイとアメリアに

少しでも和めばと場の空気をあえて読まずに話しかけると


「ありがとう。いただくわ」


柔らかく微笑んだアメリアから返事が返り、カップに

紅茶を淹れ、ルイを伺うと


「もらう」


ボソリと小さな声での返事に頷きカップに紅茶を淹れ

その後はマリーの不在ではあったものののお茶の時間を

楽しみ、フレディの待つ馬車へと戻り車内でディランを待ち

屋敷に戻った。


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